第二章 第三十六話 枝のドーム
そこは木の枝でできたドーム。
中は明るい。
なんでだ?
上を見る。天井に大きく明るい果実みたいなのが、ぶら下がっている。
あれがあるからか。
そう思っているとエルファバが神代に発言する。
「アナタ卑怯じゃなくて? 自分の有利な条件で戦う?」
「あなただって、私がベイカーに攻撃しようとした時、不意打ちしてきたじゃない」
「隙があったからよっ!」
ビー! ビー!
光線が放たれる。
「無駄よ」
下から枝が生え、ビームを防ぐ。
少し火の粉が散る。
彼女は無表情で槍で火の粉を払う。
そこでふと気づく、さっきよりもビームの威力が弱い?
「もう諦めたら? 電池なくなってきてるでしょ? それ」
神代はアンティークなドラゴンを模した時計を指した。
「それはどうかしら? まさか勝った気でいるの?」
「あなたはもう詰んでる。降参してくれれば拘束だけで済むんだけど」
「するわけないでしょ? バカじゃないの?」
「そう……残念」
そう神代が言うと、彼女はエルファバへ向かって走りだした。
「血迷った?」
ビー!
一発の光線が放たれる。しかし、下から枝が生え防がれる。
なるほど、攻撃しても枝が彼女を守るのか。
神代はエルファバに近づき、そのまま槍を突く。
エルファバは箒を使い、彼女の攻撃を受けながした後、そのまま箒にぶら下がりながら宙に浮いた。
「ヒャハハハ〜! 危ない危ない。串刺しにされるのは真っ平ごめんよ」
そう言い彼女は空中で回転し、箒に
あれ? もう一体の時計はどこだ?
「それにしてもアナタのお仲間。すごく鈍臭いと思わない?」
「どういうこと?」
どういうことだ?
そう思った瞬間、俺の目と鼻の先に光を集めるアンティークなドラゴンを模した時計が上から現れた。
やってしまった。
「さぁ、でてらっしゃい。特別ゲストよ!」
俺は手を挙げ、ドームに入る。
時計は俺の後ろに回る。
後ろからキュュュと音がする。
「大神くん!? なんで?」
「ごめん、神代さん。巻き込まれて奥へ行ったら、ここについて、戦ってるところ見てた」
「はぁぁぁ、あなたって人は……」
彼女が俺の方へ近寄ろうとした瞬間、エルファバが「待ちなさい」と神代を止め、指と首を振る。
「チッチッチッ、ダメよ、ダメ。次勝手に動いたら、この子の頭は丸焦げよ?」
神代は立ち止まり、見下げるエルファバを睨む。
「その矛を置きなさい」
「矛? 何を言っているんだ? あれは槍だろ?」
そう言うとエルファバが俺を見る。
「アナタ、何言ってるの? あれは矛。槍じゃないわ。アナタ、それも黙っていたの? ヒャハハハ!」
エルファバに笑われてやっと気付いた。あの時、神代に槍と言ってなぜ笑われたのか。
それは武器が違うから。物が違うのだ。
「今はそんなの関係ないでしょ!」
神代が叫ぶ。持っていた矛を枝に突き刺し、ゆっくり手を挙げ、矛から少し離れる。
「これでいいんでしょ?」
「えぇ、最高よ!!」
ビー!
俺の後ろから発せられた光線は彼女の胸を貫通した。
「神代さん!!」
俺は急いで倒れる彼女に向かい、上体を上げる。
胸がぽっかり空いている。
「俺のせいだ。俺があの時引き返していればこんなことに……」
視界がぼやける。
「泣いたらダメよ。大丈夫……大丈夫だから……」
「なんで嘘つくんだい? 大丈夫じゃないだろ!!」
「大丈夫……だから……」
神代はそう言い、
「もういいかしら? まぁ、次はアナタなんですけど。ヒャハハハ〜!!」
「てめぇ!!」
俺は叫びエルファバを見ると、彼女は蔓によって拘束されていた。
「えっ?」
「な、何よこれ! まぁ、いいわ。ビーム出して焼き切って……」
バァン! バァン!
エルファバの隣にいた時計と俺の近くにいた時計は、蔓によって貫通されていた。
「だから言ったじゃない。大丈夫だって」
その声が聞こえた途端、俺の目の前にいる神代さんは火になって消えた。
「あつっ!」
「全く矛のこと、まさかここでバラされるとは思わなかった」
「ど、どこにいるの?」
上から神代さんの声が聞こえる。
見上げるとエルファバの後ろに、立っていた。
「だから言ったじゃない。あなたはもう詰んでるって……フンッ!」
ドコッ!!
彼女は矛の持ち手部分でエルファバの後頭部を殴る。
エルファバはそのまま気絶した。
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