第二章 第二十四話 反省

 亮夜が俺に近づき、俺の肩に手を置く。


「これで一件落着だな……







 って思うなよ宏」


「えっ?」


「歯、食いしばれ」


 拳が頬に触れ、そのまま俺は倒れた。


 頬が痛……くない。どちらかというと、石畳に倒れた方が痛い。


 突然のことでなぜ亮夜に殴られたのか分からなかった。俺は彼に何か不快な思いさせたのか?


「なぁ宏。なんでさっき戦った時よ、手ぇ抜いた。いや、ちげぇな。なんで戦闘を放棄した?」


 脳裏に浮かんだのは須輪山すわやま公園こうえんでの戦闘。


 あの交戦の中、見ていたのか?


「俺と岩城はあんたのおもりをしてるわけじゃねぇんだよ。命がけだ。そんなかであんたは何してた? あの一瞬、俺らだけで戦わせてなかったか?」


 確かにあの時、亮夜と岩城の二人に任せておけば、俺は生き残れると思った。今思えばあの状況でなんてずるいことを考えていたのか。


「ごめん」


 この状況で俺が言えたのはありふれた言葉だった。


 正直、反省はしている。本当に申し訳ない。


 神代を仲間にした後に、こんなことになるのか。


 今後は彼らに頼らず、自分の力で対抗しよう。


 亮夜が「反省しているんだったらいい。俺も殴って悪かった」と手を差し伸べる。


「今度、手ぇ抜いてみろ。その時は俺ら消えてるからな」


 そうだ、ここはゲームの世界ではない。コンティニューなんてできない。自分の身は自分で守らなければ。


「あぁ、悪かった」


 俺は彼の手を握り、引っ張られるようにそのまま立ち上がった。


 絶対彼らに迷惑をかけないでいよう。


 そう心に刻んだ。


「あの〜終わりましたかぁ?」


 そうブギーマンが俺たちに聞くと、神代が「えぇ、終わった。で、なに?」と返す。


「いえ、ここにいるよりもぉ、洋館に戻った方がいいんじゃないですか?」


「それはなんでなんだい?」


 そう岩城が聞くとブギーマンの口から衝撃かつとんでもないことが出てきた。


「今、洋館襲われていますよォ」






「「「「えっ?」」」」







「ですからァ現在進行形で洋館がぁ……」


「それはわかってるの! 道化師、今どういう状況?」


「リボンをつけた女の子が交戦してますねっ!」


 リボンの女の子。その一言でベルの姿が目に浮かんだ。


「ベルちゃんかい!?」


「……早く行かないと」


 神代は隣でジャグリングをし始めるブギーマンを尻目に、しかめっ面で関帝廟を出ようとする。


「待て神代! 俺らも行く。今からトゥクトゥク出すから待ってろ」


 ん? 瓢箪はどこだ?


「亮夜、瓢箪はどこにあるんだ?」


 亮夜は「えっ?」と言い、慌てて自分の帯、長袍チョウパオの中、裾の中を見る。そして、真顔で俺たちを見てこう言った。


「すまねぇ、トゥクトゥク。須輪山公園に置きっぱだ」


 そう亮夜が言った瞬間、岩城がオーバーな動きでこう叫んだ。


「はぁぁぁ!? 置きっぱだってぇぇぇ? 水島どうすんだよ! マイラブリーエンジェル☆ベルちゃんが危険が危ない状況なんだよ!」


「わかってる! 俺だって今考えてんだよぉ! 気持ち悪いこと言ってんじゃねぇぞ!!」


「き、きも……」


 そう言われ岩城は力を吸われたかのようにへなへなと倒れる。


 神代がため息を履いた後、「私は行く」と関帝廟を出ようとする。


「待って、神代さ……ブギーマンなんとかして……」


 離れていく彼女を止めようと、ブギーマンを見ると、彼はジャグリングをしている。


 まぁ、彼の行動が理解できないのはいつものことなのだが、俺が見ていたのは行動ではなく。彼が空中で飛ばしている物。


 先程は赤青黄色の三色の球でジャグリングをしていたが、今は赤青黄色の三色の球と瓢箪ひょうたんが空中を飛び交っている。


「亮夜、瓢箪あったよ」


「どこに?」


「ここに」


「よっよっよっ、あーらよっとぉ!  んんん?」


「返しやがれー!」


 亮夜は叫びながらブギーマンに向かって突進するが、ブギーマンはジャグリングしながら避け、彼をからかうのであった。

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