第二章 第十話 戦争ごっこ
「……ハッ!」
思考が動いたのか、彼女は片目を瞑りながら、慌てて仁王立ちする。
「ふ、ふ、ふー。来てしまったのですね。やられる覚悟は出来ているんですよね!」
そう言い、彼女はこっちに指を指す。岩城が後ろを向いたので、俺も向いてみる。
「あなたたちですよ! ってあの仮面の人また兵士達を吹っ飛ばしているじゃないですか! なんなんですか!」
そう言い、また地団駄を踏む。
「ねぇ、大神くん。慌ててる幼女はいいもんだね。可愛いもん。ロリってサイコーだよね!!」
「ごめん。それはわからない」
岩城が大声で叫んだためか、少女がピクッと反応し、こちらを険しい顔で見てくる。
「今、なんていいました? 幼女? ロリ?」
ザッ……ザッ…ザッ、ザッザッザッ
「私はまだ発展途上なんですよ!」
ザッザッザッザッザッザッ
「我が
彼女の後ろから、長銃を持った軍服を着た数十体のおもちゃの兵士たちが現れ、彼女を守るように一列に並び銃口を俺たちに向ける。
一瞬にして俺たちはピンチになった。
「うわお、これだけおもちゃがあると、戦争ごっこはさぞ楽しいだろうねぇ」
岩城は余裕そうに言う。
「えぇ、楽しいですよ。随分と余裕ですね。私が号令を掛けると、あなたたちは蜂の巣になりますよ」
なんでそんなに余裕があるんだ?
「確かに全身穴だらけになるのは嫌だよ。お気に入りのこの服が着れなくなっちゃうから」
岩城はそう言い、俺を見る。俺も岩城を見るがなぜ俺の顔を見たのか理解できなかった。
「大神くん。この状況から脱する方法はあるかい?」
この状況? あっ!
「あるみたいだね」
「何か企んでいるみたいですね。でも関係ありません! この状況を脱する事など不可能です! 撃てぇぇぇぇぇ!」
彼女の掛け声と共に銃口から弾丸が一斉に飛んでくる。弾丸が遅く感じる。いつものゾーン状態だ。俺は岩城の前に立つと、右手に何か握っている感覚があった。
俺は願った。俺の体を守れるものが欲しいと。
ダダダダダダーン
銃声がこだます。火薬の臭いがする。俺は痛くもなければ熱くもない。
「なんですか、それ?」
少女の困惑する声が聞こえた。
成功だ。
俺は……
「ナイスだよ。大神くん!!」
後ろにいた岩城が三又の槍を握りながら飛び出る。
いつの間にそんな物を持っていたんだ?
そう思いながら彼は少女に向かっていく。
「こっちに向かってくるとはバカですね! もう一発! 撃てぇぇぇ!」
弾丸が岩城に向かってくる。岩城は槍を器用に回し、弾丸を受け流し、受け流しきれなかった弾はこれもまた器用に避ける。
「動けるデブってかっこいいよね」
そう言い、彼女の前列にいたおもちゃの兵隊をバッタバッタと倒していく。
その奥に亮夜の姿が見えてきた。亮夜が人差し指を口元に持っていき、しーっとジェスチャーしながら、帯を外していく。
「ひぃぃぃ。私の兵隊が! 大丈夫です。あの仮面の所から何人か呼び寄せれば」
「仮面って俺のことか?」
「えっ?」
少女が振り向いた瞬間、帯が彼女の手脚を拘束し、そのまま倒れる。
拘束された瞬間、彼女が出したであろうおもちゃの兵隊は霧のように消えていった。
俺たちは少女を囲いながら集まる。彼女は目が点になっている。
岩城はそんな彼女を尻目に高く持ち上げこう叫ぶ。
「幼女ゲットだぜ!!」
「ええええええ!?」
少女の驚愕の叫びがここ一帯をこだました。
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