第二章 第十一話 かわいい少女

 少女を拘束し、岩城が彼女を抱っこして、ほっぺをすりすりしている。


「あ〜このプニプニほっぺがいいんじゃ〜」


 幼女が低い声で「あああああ」と無気力に叫んでいる。


 彼女の目に光はなかった。


「それよりも。なぁ、ちんちくりん」


「ちんちくりん!?」


 あっ、よみがえった。


「誰がちんちくりんですか! 私は立派なレディーですよ!」


「それはもっと大きくなってから言おうな。で、神代 零はどこにいるんだ?」


「だ、だ、誰ですか? そ、そ、その人? 」


 彼女はすごく目を泳がせ、吹けない口笛吹きながら答える。


 正直、バレバレだ。


「よし、わかった。岩城」


「うん、いいよ」


「ふっ、拷問ですか? そう簡単には言いませんよ。あなた、女の子が好きなようですね。……いつから私が女の子だと思っていました?」


「なっ……」


「ふふふー、どうです、こうすれば男の人は……」


 岩城は今まで見たことのない真顔でこう言った。


「僕、ショタでもロリでもいけるタチだよ」


 そのことを聞いた少女(?)は血の気が引くように、顔が真っ青になり、早口で「ごめんなさい。嘘、つきました。私、女です。だから唇をこっちに近づけないでください!」と叫ぶ。


 しかし、岩城の唇はゆっくりとメイド少女の顔に近づける。


「うーむっむっむっむっ」


「いやぁぁぁぁ、来ないでぇぇぇぇ!!」


 岩城の唇が彼女の頬につきそうな所で、聞いたことのある女性の声が岩城を止める。


「ねぇ、私の知人をいじめるのやめてくれる?」


 風見鳩の館から現れたのは神代 零だった。


「れぇぇぇいさぁぁぁん」


 泣いてる少女を哀れに思ったのか、亮夜は帯の拘束を外す。


 岩城はそれに気づき、彼女をそのまま下ろした。


 解放された途端、急いで泣きながら神代の方に行き、彼女の脚に抱きつく少女。


「あなたもあなたよ。なんで霊体化れいたいかしないの?」


「ヒッグ……ヒッグ。能力使っている時はできないんです」


「そうだったの。まったく」


 優しい声で少女の頭をなでなでする神代。その光景を見ながら亮夜の口が開く。


「やっと見つけたぞ、神代。なんか言うことあるんじゃねぇのか?」


 神代の目が鋭くなる。


「入って、話すから」


 そう言い、神代は洋館に入っていく。


 俺たちは目を合わし頷いた後、神代を追うように洋館に入るのであった。


 洋館に入ると、神代 零が「応接室で座ってて」と部屋をさし、俺たちはそこにあるソファーに座る。


 しばらく待っていると、メイドの少女がティーポットやカップなどを乗せた銀のトレイを持ってきた。それを机に置き、俺たちに舌を出して、ベーっとしこの部屋から離れた。


 岩城は「可愛い可愛い」と呟いているが、無視しよう。


 少女と入れ違えるように神代が入ってくる。彼女はカップにお茶を注いでいく。


「紅茶でよかった? 紅茶しかないんだけど」


 俺たちは各々大丈夫だと言い、カップが配られる。


 神代が「あなたはどうするの?」と俺に聞いてきた。


「俺は大丈夫だって」


「あなたじゃない。あなたよ」


 そう言い指を指す方向を見ると、ソファーの肘掛ひじかけにミニブギーマンが座っていた。


 俺はズボンのポケットを確認するが、ポケットにはいなかった。


 いつの間に座ったんだ?


 ミニブギーマンは大きな声で「イラッナイ!!」と答える。


 彼女は「そう、わかった」と言い、そのまま俺たちの向かいのソファーに腰掛ける。


 すこし沈黙したのち、先に声をかけたのは岩城だった。


「神代さん。これここに置いていいかな?」


 そうトゥクトゥクで見つけたリュックサックを彼女に見せる。


 彼女は一瞬目を開き「えぇ、置いてて」と答える。


「わかった。あと……猿が範囲を広げているよ。何か知ってるよね?」


「……知ってる。それを話さなくちゃいけない。でもその前にこの世界のことを教えてあげる」


 神代は俺と亮夜を見て、この世界のことを話し出した。

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