開幕!! 模擬戦!!!

第104話 戦場はここだ!!

「不運が立て続けに襲いかかるこの学年からしてみると、この状況は珍しいと讃えるべきかな。なんてたって、雲一つない晴天だ。模擬戦を祝福しているとしか思えない。もしかしたら、この中には今日の悪天候を祈っていた者もいるかもしれんがな」


 体力テストの時を思い起こさせるように、グラウンドに並ばされた新入生達。あの時と異なるのはいくつかあるが、一つ挙げるとすればシルの体力だろうか。確か、以前は睡眠不足で頭がはっきりと回っていなかった。そのせいで、マシュの奴にも辛口を言われたか。


しかし、現在はどうだろう。頭の冴え渡り具合は、大佐が触れた晴天の空のように、陰りすら感じ得ない。体調は万全、静かに闘志を燃やし心のモチベーションまで準備万端だ。これから行われる模擬戦に向けて、何一つ後悔を前日に残してこなかった。


「模擬戦はこのグラウンドで行われるのだが、安心しろ。戦場がこの何もなくただっ広い空間だったら、お前たちも虚しいだろうよ。だから、とっておきのを我々が用意してやった」


 パン!


 大佐が高らかな音をグラウンドに鳴り響かせる。突然発生したその音により、何人かの新入生は、咄嗟に各々耳を両手で塞ぐような行動に移っていた。それが何かに対して向けられた合図だと気づくには、少々時間がかかった。


ガチッ、と歯車が噛み合うような音が響いた。目の前に自然しか広がっていない、この場所でだ。シルとアンは一度空中で目線を交錯させる。そして、何が起こっているのか確認しようかと、口を開いたその瞬間。


 地面が割れた。


「地震か!?」


 シルの口から発された言葉が響く前に轟々と鳴り響いた地響きが、シルの声を掻き消す。唸るように迫り来る振動は、心の奥底から恐怖心を揺さぶり起こしてくるようであった。女子生徒が立っていた場所から、悲鳴声にも似た奇声が上がる。グラウンドに再び、あの時のような混沌が覆い尽くすのかと思われた。


「と・止まった・・・?」


 地響きが長く続くことはなかった。辺りを見渡しながら、周りの状況を確認するが、何一つ変化は起きていないようだ。新入生の頭だけがシルの視界を埋め尽くしている。


「前列にいるものはすでに見えているだろうが、後ろにいるものは見えていないだろう。このグラウンドに何が起きたのか。そして、何が現れたのかを」


「シル・・・。これは・・・やばいかもよ・・?」


 アンのか細い声がシルに放たれる。どうやら、彼女は生徒の隙間から、グラウンドに起きた変化に気づいたようだ。それで、何かに怯え始めたのだと、シルは瞬時に悟った。


「アン——一体何が起きたんだ??」


「答えよう、皆の疑問に。何もなかったグラウンドに舞い降りたこれは、君たちがこれから一戦を交わす戦場。アーミーナイトに蓄積された先進的な技術と、財力を持ってして設計された『ホログラム型戦場』」


「こんなことまで、できるのかよ・・・!?」


「自然も、天候も、闇の一族も思うがまま。全てをコントロールできる仮想の世界のフィールドだ!!」


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