第66話 光の・・矢・・・
敵の出現により、突如として立ち籠めた高濃度の瘴気を呼吸に併せて、より強大な力に変換させていく。すでに剣先が放つ眩い光は、この場にいるもの全員の目を細めるほどの光源と化していた。悪魔も例外ではない。赤く充血させて瞳を隠すように、膨張した右手を顔の前まで移動させ、光を遮っている。
そして、煩わしさから、怒りが芽生えより一層繰り出される無数の攻撃を強く振り下ろし始めた。先ほどまでとは比にならない威力の攻撃。一撃を食うだけでも、身体のどこかしらの骨が折れる音がハンナの耳を震わせていた。だが、何度もその身に攻撃を食いながらも、それでも瘴気の集約を中断させることはなかった。
逆に、攻撃を食らえば食らうほど光の強さが増していった。それはさながら、地上に落ちた太陽。熱は高熱ではないが、光度だけ見ればそれと同義なのではないかと疑ってしまうほどにまで膨大していた。
「これで止まりなさい・・・。光の
瘴気剣の剣先に集められた光が突如球体として、上空に打ち上げられる。そして、ある程度の高度まで上昇すると不自然なほどその動きを空中で停止させた。咄嗟に身構える悪魔であったが、身を引き裂くような攻撃が繰り出されることはない。ただ、太陽が元いた場所に戻るかのように、打ち出されるだけで、時間がすぎていく。
「はぁー。期待して損しちゃった。ただのコケ脅しじゃない。あんなの眩しいだけで私たち闇の一族の命を脅かす対象にするなり得ないわ」
余裕を見せる悪魔に対し、ハンナはボロボロの身体に無理を強いてどうにか指一本分だけ地面を這ってみせる。だが、それだけでも身体中を巡る激痛に、悲痛の声が口から漏れてしまう。そして、ハンナは動くことを諦めた。今までなんとかして悪魔を睨んでいた頭も地面に接触させ、唇を通じて地面の感触が伝わる、音も段々と遠くなってくる。
「これは・・・、私が今まで練りに練った最強の術式。瘴気剣に光源として力を集約、それを開放することで術式過程で空気より軽くなった光球は上空へと浮遊する。でも、それで終わりじゃない。私は、光を集めながら同時にもう一つのものも光の中に巡らせていた。それは——声という空気を振動させるもの。
今、光球の中では閉じめられた空気の振動が・・・衝突と振動を繰り返している。そして、それが解き放たれる時、地面に降り注ぐのは移動を封じつつ、身体を高速で貫き、地面に突き刺さる光の矢・・・!!」
死になさい・・・!!
笑みと共に、高笑いを浮かべる悪魔の頭上で、音もなく光球から一斉に一線の矢が注がれ始めるのであった。
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