ルークVSアカ
「はあぁぁ!!」
足に風を、手に火を纏ったルークは真っすぐにアカに突撃していった。
風魔法を足に付与した事で通常では考えられない速度での移動を可能にしたルーク、アカとの距離は一瞬にして縮まった。
「火魔法:
凄まじい速度の乗った火の拳がアカへと向かう。
「ほぉん」
後コンマ数秒で拳はアカへ直撃する、だがそんな状況にも関わらず彼は暢気な声を漏らした。
そして、突如として壁が現れた。無機質で模様も何も無いそれにルークの拳は飲み込まれる。
「くっ!!何だ…!!」
ルークの拳が壁に沈み込む。トリモチに腕を突っ込んだかのような感覚が彼を襲った。
これは、まずい…!!
すぐに自分の危機を感じ取ったルークは壁から腕を引き抜こうとする。だがそれが余計に事態を悪化させた。
「っ!!うあああぁぁぁ!!!」
壁からルークは勢いよく後方に弾き飛ばされた。
何とか空中で体勢を立て直し両足で着地する。
今のは何だ…?俺の力がそれ以上の力で跳ね返された、これは…。
腕に纏わりついた感覚、そして跳ね返された事実。それらがルークに一つの結論を導き出された。
「ゴム…か?」
「へへっ、正解。まぁ分かっちまうよなぁ。その通りだぜ。俺の魔法は弾性力と張力を司る。お前の攻撃は全部跳ね返す」
弾性力と張力?そんな種類の魔法、存在するのか?一体何なんだこいつは?
疑問の目を向けるルークだったが無属性魔法と有属性魔法、そのどれにも該当しない魔法を目の当たりにしたルークはアカの言葉を信じるしかなかった。
落ち着け、まずは冷静に奴の魔法を解析しろ…!!
ルークは周囲を見渡した。
アカが放った空間魔法は彼とルークの二人をドーム状のような空間に包み込んでおり壁のような障害物は無い。
だが、さっきの壁のように恐らく任意でゴム製の障害物を発生させられる。
限られた情報から推測と推論を重ねるルーク、未だ分からない部分は多いがアカの魔法について少しずつ解析を進める事を可能にした。
近距離での攻撃は俺にとって圧倒的に不利、なら…。
迅速に判断したルークは遠距離攻撃魔法へと手段を移行する事にした。
「火魔法:
ルークの手から巨大な火の球が発射される。
「近距離戦は不利って判断したかぁ?悪いがどのレンジだろうとてめぇが俺に勝てる未来はねぇぜ」
そう言ってアカは手を合わせる。
「
先程と同じような壁が現れ、それがルークの放った魔法に直撃した。
「即発生が売りの一式と違って二式はちゃんと魔力を練って発動するからなぁ。その分すげぇぜ」
アカはニヤリと笑う。
「魔法を、そのままの威力で、返す!!」
ルークが撃ち込んだ火球がそのままの威力と速度を以てルーク本人へと戻っていく。
「っ!!土魔法:
叫び、ルークの前に土の壁が現れる。
今度は火球と土壁がぶつかり合い爆発する。どちらもルークの魔法だというのが違和感を彷彿とさせる。
「くそ…自分の魔法で…」
爆発の余波や爆発そのものによってルークは少なからずダメージを負う結果となった。
「さぁてと、じゃあ今度は俺から行くかぁ!!」
声高らかにアカはそう言うと体を少し屈めた。すると彼の足元の地面が少し沈む。まるで足元だけがトランポリンになったようである。
「よっとぉ!!」
そしてアカはその弾性力を利用して加速、アカに向かっていく。
「
ルークとの距離を詰める数秒間の間にアカは火魔法を放つ。だがその魔法は通常の火魔法とは異なっていた。
一見、大量の火球を飛ばすルークの火魔法である
だが変化が起きたのはその火球の数々が壁や地面へと直撃した時だった。結論から言えば跳ねたのだ。
ルークへと狙って放たれたとは思えない火球はルーク以外の、地面に、空間の端の壁に当たる。しかし火球はそこで消滅する事無く跳ね返り更に無軌道な軌道を描き続けた。
まるでゴムボールのように大量の火球が空間内を動き続けるのだ。
「弾性魔法と火魔法の掛け合わせだぜぇ!!てめぇに捌き切れるかぁ!?」
「くっ…!!」
複数の火球、しかも無軌道に動き続けている。それに加え正面からは奴が向かってくる…!!
状況を分析するルーク、陥った状況を悲観している場合は今の彼には無い。とにかく最適解を常にたたき出す。それが今しなければならない事だ。
「なら…!!」
土魔法:
火球がルークの発生させた壁に当たる。当然壁を起点にしてそれは再び跳ね返った。跳ね返る箇所が増え更に無軌道な軌道を描くに至った。
へっ…そう来たか。
アカはルークの思惑を察する。
無軌道を描く攻撃魔法、当然無軌道なのだからその危険な矛先はアカに向かっていく可能性もある。だがアカは訓練を重ね跳躍個所からどう跳ね返り次にどこへ行くのかそれを瞬時に計算し把握する事が出来る。
それが彼がこの合成魔法を使用するために鍛え上げた空間認識能力だ。
対してルークもそのことに気が付いた。敵が並々ならぬ空間認識能力を持っている事を。
そこで魔法の跳弾個所を増やしアカを翻弄する。それが彼の策だった。
「悪いけどなぁ、その程度の増加要因で俺の空間計算は揺らがねぇんだよ!!」
更に複雑になった球の軌道だが、どうやらアカはものともしない様子だった。もっと脳を稼働させ、脳のリソースを計算に当てるだけである。
「分かってるさ。そんな事は…!!」
俺の狙いは…そこじゃない!!
「土魔法:
地中から伸びた土製の鎖がアカの足に絡みつく。
「おっ…!?」
ルークの策を見破ったアカであったが、ルークの狙いはそこではない。策を見破られ対処策を取る。そこからが真の彼の狙いである。
奴の空間認識による頭の処理を数秒だけでいい。増やす、そうする事で他の事から一瞬だけ意識が逸れるはずだ。俺が地中に放ったこの魔法からもな・・・!!
そしてルークの目論見通り、数秒間本来の必要以上の処理を脳で行っていたアカはルークの魔法に気が付かなかった。
「やるじゃねぇか…!!」
「これからだ!!」
土の鎖は更にアカの身体を締め付け、それは彼の足から胴体まで伸び身体全体を拘束した。
そして鎖の先端を手に収めていたルークはそれを自分の方へと引き寄せ、強制的にアカを自身の元へ来させる。
「お、おぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
「これなら、効くだろ…!!」
鎖を引っ張られた事で凄まじい勢いでルークに接近する事を余儀なくされるアカ。
「くっそぉぉぉ!!
「無駄だ!!」
出現した壁はアカをルークの元へ行かせまいと二人の間に乱立する。
しかしルークは咄嗟の判断により鎖を上へと上げアカを空中へと追いやった。それにより地面に乱立した壁は全て無意味と化す。
引っ張る力のみならず空中から落下する際に生じる重力も加わった事でアカは更に速度を上げてルークの元へ行かざるを得なくなった。
ルークは鎖を持っていないもう片方の腕に先程同様火属性魔法を付与する。
「
「ちくしょおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
拳を避けられないと悟るアカはそう叫びながらルークの元へ落下し続ける。
「はああああぁ!!!!!」
「ぐほおおあぁぁぁ!!!!」
ルークの火拳がアカの頬に打ち込まれる。
「これで…!!」
ルークは自身の勝ちを確信した。
「あぁ、これで…俺の勝ちだなぁ!!」
「なっ…」
そして、勝ちを確信したのはアカも同様であった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます