第14話 出会い

 十分な休息を取った後、佑吾たちは赤巨人レッドエノルマスと遭遇した道の探索を再開した。ライルたちの班が探索していた道は行き止まりで、魔物もいなかったからだ。

 佑吾たちの方の道も、しばらく進んだところに少しだけ開けた場所があっただけで、途中にあった分かれ道も全て行き止まりだった。つまり、これで洞窟内の全ての道を探索したことになる。

 全ての道で生きている魔物が居ないことを確認した佑吾たちは、道中倒した魔物の解体と、洞窟内で見つけた薬効を持つキノコやコケの採取を行うことになった。そのため、班ごとに分かれて行動することとなった。


 佑吾たちは、最後に見つけた開けた場所で採取を行なっていた。

 コハルとサチが魔物の解体をしたことが無いことから、佑吾と一緒に採取の方を任されたのだ。

 佑吾たちが、ここを採取場所に選んだことにも理由があった。

 佑吾たちが今いるこの開けた場所は、日光がなく湿度も高い洞窟という悪環境でありながら、多くのキノコやコケが生えており、さらには本来ならば洞窟内で生えることのない植物や花までもが咲いていた。

 これに関しては、様々な知識を有するライルですら驚き、理由も分からないとのことだった。


「…………ん?」


 黙々とかがんでキノコの採取を行ないながら、佑吾はふと顔を上げた。何かが、自分を呼んだような気がしたのだ。

 サチかコハルが呼んだのかと思って振り返ったが、二人とも採取に集中しているようで違いそうだ。

 勘違いかと思い、佑吾は顔を戻すと、洞窟の壁が目に入った。

 普通の壁なのだが、一部がどことなく膨らんでいるように見えるのが気になった。

 繭のようだ、と佑吾は思った。

 何故かそれが気になってしまい、佑吾は惹きつけられるようにその壁へと近づき、手を当てた。

 その壁の中に何かが眠っていて、それを感じ取ろうとするかのように。

 少ししてから、佑吾は自分がやっている事が子どもの妄想のようなものな気がして恥ずかしくなり、壁から手を放そうとして──やめた。


「え?」


 壁からほのかな温かさ、魔法を使うときに感じる魔力と似たものを感じて、佑吾は壁へと視線を戻した。


 ピシリ。


 佑吾の手を当てている箇所からひび割れるような音が鳴り、壁に亀裂が入る。

 その亀裂は徐々に大きくなり、壁一面へと広がり始めた。


「な、何だ!?」


 狼狽する佑吾をよそに壁の亀裂はどんどん深くなり、やがて佑吾の目の前の壁が盛大に砕け散った。


「うわっ!?」


 佑吾が驚き、声を上げる。それは、壁が砕け散ったせいだけではない。

 壁の中から、一人の少女が現れたからだ。

 ストロベリーブロンドの柔らかな長髪、きめ細やかな白い肌に人形のように均整の取れたあどけない顔、薄っすらと開いた目からはルビーのように綺麗な赤い瞳が覗いていた。

 壁から突然現れた人形のように美しい少女は、佑吾の方へと倒れかかってきた。

 床にそのまま倒れそうになるところを、佑吾が慌てて抱き止めることで防いだ。抱き止められた少女は、少ししてから意識がはっきりし出したのか、徐々に目を開けていった。

 そして、顔を上げると佑吾とパチリと目が合い、たった一言呟いた。


「………………お父さん?」

「…………………………………………え?」

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