2-3 上陸

巨人達が陸に向かって来る。Cは覚悟を決めた。

武は一度敗れた。対話を試みなければならぬ。

「巨大なる征服者達よ、我が声を聞け。我は知性と愛の使者。人の世を代表して汝らに問う。汝らの目的は何ぞや。」

 Cの声は海の上に響き渡った。

 巨人達の先頭を歩く、一際大きい巨人が、低くはっきりとした声でもって応えた。

「小さき者よ。我らの目的は人の世の破壊也。我らは人間達が幾代にも渡って深めてきた業を振り払う為、神より仰せ使い、あの暗き牢獄から解き放たれて、今一度この地上に帰って来たのだ。」

「おお、何という冒瀆の言葉を。我らが神が説いたは、即ち愛の言葉。お前達の如き破壊者を、神が寄越す故が何処にあろうか。」

「心ある者よ。ならば今の人の行いを何と見る。これぞまさしく人の性。人の歴史が英々と繰り返してきた暴力の歴史ではないか。神によって滅ぼされた我らとお前達は何一つとして変わらぬ。そして何よりも、お前がそこに一人で立つる事こそその証左。愛によって繋がり、愛によって進むなら、お前が一人である筈はないではないか。」

「まさしくその通り。しかし、我が人類の歴史は暴力によってのみ成り立つに非ず。我は一人となりても愛を信じよう。お前達にも心があるならば歩みを止めて、我が言葉を聞くがよい。」

「我らに与えれらし責は余りにも大きく、与えられた時間は余りにも少ない。お前一人の為に、我らの歩みを止める訳にはいかぬ。しかし、我らはお前の言葉に興味を覚えた。我が肩に乗り、我らの行いを見届けながらであらば、語らう暇もあろう。来るがよい。」

 そう言って、巨人はCが立つ灯台の前に立った。巨人は灯台からCを摘まみ上げて肩に乗せると、その足でもって灯台を踏み潰した。

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