2-2 海戦

戦闘機の大群が巨人達に向かって突っ込んでいった。

 Cの脳内ではキーンと、耳鳴りが鳴り続けた。

Cは音の無い世界で、見た。船団と、戦闘機から放たれるミサイルの弾幕。巨人達は腕で身体をかばった。爆風が彼らの身体を包んでいく。幾重にも折り重なる爆風。Cの下に、生暖かい風が届いた。

 しかし、巨人達の歩みは止まらなかった。

 ミサイルを撃ち尽くしたのか、船団からは砲弾が放たれ始めた。魚雷も放っているのだろう。巨人の足元で水飛沫が上がっている。巨人の頭上からは、戦闘機が次々と機銃を放っていた。

 巨人達が歩みを止めた。

 Cはビリビリと大気が振動するのを肌で感じた。巨人達が雄叫びを上げたのだ。

 巨人達が一斉に大きく腕を振り上げ、そして水面に向かって素早く振り下ろした。とてつもなく巨大な水飛沫が上がる。巨人達を中心として、巨大な波が起こった。

 波が来る。Cは慌てて車椅子を固定し、手摺にしがみついた。

 彼らが起こした波に、船団が飲み込まれていった。やがて、Cはいる灯台の下にも、波はやって来た。その巨大な波は、灯台をすら大きく飲み込んだ。

 Cは目を瞑り、そのか細い腕に力を込め、歯を食いしばり、必死で体を支えた。一瞬でも気を抜けば体がはじき飛ばされそうになる。大波はCが頼りとする灯台を激しく揺らした。

 やがて波が止まった。灯台は無事であった。Cの車椅子は何処かへと流されてしまったようだが、Cの肉体は灯台の上に留まっていた。

 Cが目を開くと、海軍の総力を結集した船団は見るも無残な姿をさらしていた。その殆どは波に飲み込まれて姿を消したか、破片となった船体を海上に浮かべている様子。僅かに残った一部の軍艦にも、巨人達の拳が振り下ろされ、爆発とともに海底へと沈んでいった。空中にいた戦闘機の大群もその数を減らし、残った戦闘機に向かって巨人が鉄屑の散弾を投げつけている。その散弾の材料は沈んだ軍艦であろう。余りにも巨大な散弾によって、戦闘機達は次々と落とされていった。

 我が国の海軍と空軍は敗北した。

 戦闘機の一部は巨人の狩場と化したこの戦場から逃げ出し始めた。また、一部の戦闘機は巨人向かってその体ごと突っ込んでいった。しかしその特攻の効果は虚しく、巨人の腕によって叩き落とされるか、またたとえぶつける事に成功しても巨人の様子は一切変わらなかった。

 Cは自らの義足と、波によってひん曲がった手摺を使い立ち上がった。

 やがて海上から全ての兵器が一掃された。再び巨人達は行進を始めた。

 Cがじっと目を凝らすと、海上には僅かに動いている物体があった。命辛々海上に逃れた兵士達であった。しかし彼らの殆どもまた、巨人達の行進が起こす荒波によって、海中へと逆戻りしていった。

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