雹が襲う

ぱらぱらと音を立てながら空から降るのはその小粒。

「雹だ」

思わず俺はそう呟いて足元に転がっている大小様々な粒へと手を伸ばした。触れたその粒からは不思議と冷たさを感じない。あれっと声に出しながら小さく上げた視線の先には橙、黄、緑、と色とりどりの雹。何かが、おかしい。その事実に気付いた直後、一際大きなその粒が俺を目掛けて降り注いで来た。

「あ、ぱぱ、おきた!」

目を開けるとそんな言葉と共に娘の笑顔が飛び込んで来る。そして感じる、その確かな甘み。にっと娘はその不揃いな歯を見せつけるかのように俺に笑うと、カラコロと手の中の瓶を揺らしてみせながら

「あまくって、おいしいでしょ!」

そう誇らしげに俺へと言った。

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