AM7:26

すぐ、隣から。

漏れてきたその音に俺はふと目線を上げた。

隣に立つのは1人の女子高生。

橙色のイヤホンがブレザーのポケットから少女の耳へと延びている。

手の中の英単語帳へと目を向けているその横顔に俺はあ、と思わず息を呑む。

『宇多田ヒカル』だ。

ガタンガタンと大きく響くその音に少女の黒髪とスカートが揺れる。5分遅れでホームへと滑り込んできたその電車に雪崩れ込む形で乗車を果たした。

溢れ返る人の中でその橙はもう、見えない。

広がるのはいつもと同じ風景。

あぁ、だけれど。不思議と今日1日は良い日になる、そんな予感がした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る