ファンサ

ゆっくりと上がっていく幕に、流れだした音楽に。自然と涙が頬を伝った。

あぁこんな、こんな日が来るなんて。

会場中に黄色い歓声が、響く。

ステージ上で振りまかれる笑顔、大きく動かされるその身体。

すぐ隣から聞こえてきた凄いねえ、なんて声に私はこくこくと2度頷いた。

曲が鳴り止み各々が思い思いに名前を叫ぶ。あ、今目が合った。

満面の笑みで振られるその手に、思わず私は声を漏らす。

「生まれてきてくれてありがとう…」

隣であははと声が上がったがその横顔にはうっすらと涙が浮かんでいる。

そんな私たちにもう一度ステージ上の彼女は大きく手を振ると、すぅっと深く息を吸い込んでこう口にする。

「おとうさーん、おかあさーん!わたし、じょうずにおどれたよー!」

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