それらを総じて
若い頃に比べて好きだと感じる頻度が減った。
嫌いなものが増えた訳ではない、無関心なものが増えたのだ。
食べ物、音楽、映画、スポーツ。
昔は確かに私の胸を踊らしていたそれらに興味を抱かなくなったのはいつからだろう。
失ったのは熱か視野の広さか。
それとも溢れんばかりの感受性か。
無くしたものそれらを総じて老いと呼ぶのなら
「歳は、取るものじゃないなぁ」
取りたくなかったと零したそんな私のすぐ横で君は優しく微笑んで
「それ、数年前も言ってましたよ」
確かあの時は最近涙脆くなったと仰っていました、そう言葉を続ける。
昔から変わらないその顔に口調にそうだったかなと私は返しながら釣られたように小さく笑みを浮かべた。
歳を取り失ったものは確かにあるけれど、それでも変わらず好きだと思えるものがある。好きであり続けると信じて疑わないものがある。
人はそれらを総じてきっと
「なぁ」
「はい、なんですか」
愛と呼ぶのだろう。
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