今日はバレンタインだったらしいよ、俺の隣を歩く君がそうぽつりと呟いた。

「さっきコンビニに立ち寄るまですっかり忘れちゃってたよ」

僕たち縁がないもんね、そう言って小さく眉を下げる君にそうだなと俺は言葉を返す。

「だから、これ」

折角だからあげるねと向けられた君の手には一口サイズのチロルチョコ。

「…お情けか？」「お情けさ」

さっきのコンビニで買ったんだと言う君にそりゃどうもと呟いて俺はそのチョコを受け取る。君が嬉しそうに笑うから口に含んだそのチョコが少し溶けかけていたことは気付かなかったふりをした。

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。（ログインが必要です）

新規登録で充実の読書を

マイページ: 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる; 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める; フォローしたユーザーの活動を追える
通知: 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴: 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい