4: KAWASAKI AR50

「大丈夫だからっ!!」


 度会わたらい瑞穂みずほは、イラつきながらそう叫んだ。


「でもね、みーちゃん……」


 瑞穂の横には、心配そうに表情を曇らせた妙齢の美女が立っている。


「みーちゃんって呼ばないでって、何度も言ってるでしょ!」


 美女の言葉に、更にイラつく瑞穂。


「とにかく、学校行って来るから! 余計な事しないでよ!」


 そう言い捨てると、瑞穂は手に持っていたヘルメットをかぶり革グローブを着けると、颯爽とバイク――ライム・グリーンのカワサキ・AR50に跨ろうとした。が……


「あうっ」


 ヒラリと、シートを越えるはずだった足が細いグラブバーにヒットし、その痛みに情けない声が零れてしまう。


「みーちゃん!?」


 ハラハラとしながらそれを見ていた妙齢の美女――

 瑞穂の母親である、瑞希みずきが悲鳴を上げた。


「だ、大丈夫だってば!!」


 瑞穂は涙目になりつつも、母親に向かって吠える。


 そして、キック・ペダルを引きだすと、思いっきり蹴り付けた。


 ベスス……


 だがしかし、エンジンはかからず。


「あれ?」


 瑞穂は焦りつつ、何度もキックを繰り返す。


 ベスス……ベスス……ベスス……


 しかし、何度蹴ってもエンジンはかからない。

 ハラハラしつつ見守っていた瑞希だったが、ふと有る事に気付いてしまった。


「みーちゃ……瑞穂、あのね」

「ママ……じゃなくて、母さんは! ハァハァ……黙ってて!! ヒイヒイ……」


 そして、気付いた事を瑞穂に伝えようとするも、くわっ! と言わんばかりの勢いで拒否される。


「で、でも……」


 それでも必死に食い下がる母親に向かい、瑞穂は癇癪を起すかのように叫んだ。


「何!? 今更バイクに乗るなって言ったって無駄なんだからね!!」


「違うの。もうバイクに乗らないでなんて言わないわ。免許も取って、バイクも買ったんだし……でもね、これだけは言わせて」


 真剣な母親の顔と声に、ヒートアップしていた瑞穂の頭が冷めて来る。


「……じゃあ、何なの? 事故や転倒には、充分気を付けるよ」


 恐らくは、心配しての言葉だろうと予測した瑞穂が機先を制す。と。


「ええ、それはもちろんだけど……あのね、キーがオフじゃあエンジン掛からないんじゃないかと思うの」


 おずおずと瑞希が言い放った言葉に、瑞穂がピシ、と凍り付いた。


「……」

「……」


 二人とも押し黙ったまま、数分ほど経過しただろうか。


「……瑞穂?」


 瑞希が再び声を上げた瞬間。


 カチっ!(キーを回す音)

 ポッ!(ニュートラルランプが点灯する擬音)

 ベスス……ビイイン!! (エンジンが掛かる音)

 カコンっ! (1速にシフトする音)


「じゃあ、行って来るから!!」


 この間、数秒。


 あまりの恥ずかしさに、瑞穂は一連の動作をあっという間に行い、母親に向かって怒鳴るとクラッチを繋いだ。


「み、瑞穂!?」


 瑞希が何か言おうとした瞬間。


「ひああああああああ!?」


 まだ初心者もいいところの瑞穂によるラフなクラッチ・ミートにより、ARのフロント・タイヤは荒ぶる天馬ぺガススの前足の如く、天高くそそり返った。


「ふわわわわわわわ!?」


 ビビった瑞穂は即クラッチを切り。

 ドン! という衝撃と共にフロント・タイヤは落下し、フロント・フォークをフル・ボトムさせる。


「のおおおおおおお!?」


 その衝撃でクラッチ・レバーから手を放した結果、再びARのフロントは宙に浮きかかり。


「いやあああああああああ!!」


 中途半端にアクセルを開け、瑞穂はシートからズレ落ちかかったまま、まるでARに引き摺られるかのように走り出す。

 そう、それはまるで巨大な犬に引き摺られて散歩に連れて行かれる子供の如く。


「……大丈夫かしら」


 途中、なんとか態勢を立て直してシートに跨り直した瑞穂が走り去るのを見送った瑞希は、頬に手を当ててため息を吐いたのだった。




「もうっ!! ママが余計な事言うから!!」


 クラッチ・ミスを母親の所為にして、瑞穂は何とか心を落ち着かせた。

 しばらくはイライラが続いたが、オプションのビキニ・カウルのスクリーン越しに流れる景色を見ていると、自分がバイクに乗り、走っているのだという実感が湧いてきて、ついついニヤけだしてしまう。


「ボクだって、これで一人前のライダーなんだから!」


 瑞穂は、原付免許の取得代もバイクの購入代金も、全て親掛かりな事を忘れたかのように叫ぶのだった。





                  〇





 度会瑞穂は、北関東の私立高校にこの春から通い出したばかりの16歳である。

 ショートカットの黒髪に卵形の輪郭、パッチリとした黒目がちな瞳に、スラッとした鼻梁。

 その下には桃色に色づく小さな唇。細くしなやかな体は、肉付きがちと足りないものの、それが返って華奢で儚げな雰囲気を醸し出して堪らない、というヘンタイも多い。


 そんな瑞穂だから、入学早々下駄箱にはラヴ・レターが山のように放り込まれた。

 その内訳はと言うと、同学年である1年や年3年は当然の如く、大学部の者や、不埒にも先生や教授からと思わしき物すら存在した。


 しかし、瑞穂はそれらをすべてまとめて焼却炉に放り込み、手紙を出したものを集めた上で憮然と言い放ったのだ。


「ボクは誰とも付き合う気なんてないですから!!」


 その後は、一見鎮静化したようにも思えたのだが。


 ある日の放課後、帰ろうとしていた瑞穂はプロレスラー風の覆面を被った三人の男に拉致され、体育用具室に連れ込まれてしまった。


「くくく……大人しくしな、仔猫みずほちゃん」

「そうだぜ、大人しくしてりゃあ気持ちよくしてやるからよお……」

「ふひっ! 瑞穂タンの怯える姿、吾輩もう萌え萌えで辛抱たまらんでござるよ!!」


 怪しげな三人の男に拘束され、下着姿に剥かれてしまった瑞穂は泣き叫んで助けを呼んだ。


「やだよぉ! こんなのヤダ!! 離してよぉ!!」


 しかし、甘いソプラノの叫びはむくつけき男たちの嗜虐心を逆にあおる結果にすらなってしまい。


「ふひっ!! もうたまりませぬ!! 吾輩が一番槍とイカせてもらうでござるうううっ!!」

「あ! 小多田おただてめえふざけんな!!」

「くっそ、じゃあ俺は唇を頂くぜ!!」


 三人の暴漢は、辛抱溜まらんとばかりに瑞穂に襲いかかった。だが、次の瞬間。


「ぶべら!?」


 豚が鳴くような悲鳴を上げ、小多田がもんどりうってひっくり返り。


「な、なんだ!? たわばっ!?」

「ど、どうした!? あべし!?」


 続けて、その他の二人も顔面に何かを喰らってブッ倒れ。


「……え?」


 下着姿の瑞穂は、暴漢三人の顔面を襲ったが足元に転がって来るのを見詰めた。


「バスケット、ボール……?」


 そう、暴漢三人の顔面を陥没させ、鼻血ブーにさせたのは三つのバスケットボールだったのだ。


「……ったく、うるせえったらありゃしねえ」


 と、用具室の隅からのそり、と現れる男が独り。


「あ……巳桜みさくらくん……」


 それは、瑞穂のクラスメイトの巳桜みさくら直毅なおきであった。


 直毅は不良生徒ではないが、どこのグループにも属さない一匹狼であり、誰にも飄々とした態度で接するが決して媚びる事は無く、また腕っぷしも強くこの学校では一目置かれている。

 両親は海外赴任しており独り暮らしで、自由気ままに生きていると言う評判の、まるで現代風ラノベの主人公を地で行くような男であった。


「何やってんだよお前らは。3人掛かりでバカじゃねーのか」


 直毅は、覆面の鼻貫き穴から鼻血垂らしたままひっくり返っている暴漢どもを睨めつけると、チッと舌打った。


「み、巳桜!」

「何でこんな所に?」

「ま、まさか巳桜うじも瑞穂タンを襲うために隠れていた可能性が微レ存……?」


 驚愕する二人と、時代を超越したかのような意味不明な事をのたまう小多田に直毅がイラッとした表情を向ける。


「ああ? ふざけた事抜かしてんなよ? 俺は六時限目の保健をサボって寝てただけだ」


 くああ、と大あくびをしつつウンザリしたように言う直毅。


「あー、だりぃ。そろそろバイト行かにゃ……」


 そして、ブツブツと呟きつつ、毛布代わりにしていたらしい黒いブルゾンを瑞穂に掛けてやり、


「おい、こいつの制服どこやった?」


 と暴漢3人に向かって凄む。


「へっ! カッコつけやがって!」

「こっちは3人いるんだ、やっちまおうぜ!」

「ふひひひ! そうでござるな! 戦いは数だよ兄貴でござる!!」


 だが、立ち上がった3人がそう叫んだ次の瞬間。


「ひでぶ!?」

「うわべら!!?」


 小多田以外の二人が、直毅の蹴りと裏拳で再び倒れ伏し、そのまま失神してしまった。


「くっ!? 通常の3倍は速いでござる!? だが、吾輩とて青き巨腹きょはらと呼ばれた男……! やられはせん、やられはせんぞぉっ!?」


 それを見た小多田が、荒ぶる鷲の構えを取りつつ叫ぶ。


「ほう。やる気か」


 だがしかし。直毅がニヤリ、と獰猛な笑みを浮かべてズイ、と一歩迫ったら。


「ははあっ! 参りましたでござる!!」


 小多田は凄まじい速さで跪き、直毅に向かってDOGEZAドゲザした。




「巳桜君!」


 制服を取り返して身に着けた瑞穂が、急いで直毅を追う。

 直毅は、


「今度こんな事やりやがったらタダじゃすまねえからな」


 と凄みつつ小多田を軽く〆ると、瑞穂が服を着終わるのを確認してから体育用具室から出て行ってしまったのだ。


「あれ……どこに行っちゃったの……?」


 瑞穂の手には、下着姿だった時に掛けてもらったブルゾンが握られている。

 ブルゾンからは、少しの汗の匂いが混ざった、何とも言えない良い匂いがしていた。


「巳桜くーん!」


 瑞穂が呼びながら体育館の裏にある、自転車置き場まで来た時。

 ビイイイイン! と言う元気な排気音が聞こえ、瑞穂の目の前を黒い影が通過する。


「あっ!」


 瑞穂の目がその黒い影を追う、と。

 それは、バイクに跨る直毅の姿だった。


「巳桜くん……バイク乗ってるんだ……」


 そのバイクは、ライム・グリーンに彩られ。

 スリムなタンクには誇らしげな『Kawasaki』の文字が躍り。

 ゴールド・ホイールの意匠も鮮やかに、瑞穂の前を駆け抜けて行く。


「……カッコ、いい」


 オイルの燃える匂いを残して校門から出て行くのを見て、ブルゾンを握りしめたまま、ぼうっと呟いた。



「よ、瑞穂ちゃん」

「また明日な~」


 瑞穂はしばらく呆けていたが、クラスメイトにそう挨拶されてハッと我に返る。


「あ、ねえ、ちょっと教えてほしいんだけど……」


 そして、瑞穂はあの緑色のバイクの名前と、巳桜直毅と言う男について少しの事を知ったのだった。



「カワサキ・AR50かあ……」


 学校からの帰り道、瑞穂は本屋に寄り、AR50が確かに載っている事を確認した上で『セロハンスポーツ大全』と言うムックを買い求めた。

 そして、急いで家に帰ると、ちゃんと手を洗いうがいをして服を着替え。

 母親から供されたおやつのイチゴショートケーキ(手作り)と紅茶を平らげ。


「今日のおかずはみーちゃんの好きな唐揚げよ」


 と言う言葉に喜びつつ自室に戻ってから、妙にドキドキしながら買って来た本を開いた。

 表紙には、国産の最新ゼロハンスポーツの写真が飾られている。

 一番大きく載っているのは、最新メカで武装した一番の注目株であるスズキ・RG50Γガンマ。

 クラス最強の7.2馬力と0.72kg-mのトルクを誇る水冷エンジンに、スチールとは言え角パイプのフレームに、ANDFアンチノーズと言った車体廻りの装備も充実し、更に上級車と同じくエンジンを掛けずともキーONのみでヘッドライトを含む各種灯火類が点くという12ボルト電装も持ち、ゼロハンボーイズの心を擽る仕様である。

 もちろん、本文でも最も扱いが大きく、Γだけで巻頭カラー7ページも取られており、まるでΓ特集号の様相を呈している。


 続いて、これまた7.2馬力を誇る水冷エンジンを心臓に納め、キーONでヘッドライトは点かないものの12ボルトの電装を持ち、50㏄とは思えないデカさを誇るホンダ・MBX50が4ページほど載っており。


 更にその後は水冷ゼロハンスポーツの元祖、ヤマハ・RZ50も4ページと続く。


「あった……」


 そして、国内4メーカーの最後に、見開き2ページで載っていたそれこそが、瑞穂の目的であるカワサキ・AR50であった。



 カワサキ・AR50――


 1980年代初頭。


 それまで基本的に中・大型の専門メーカーに近く、輸出向けの極僅かな車種と台数のみの50㏄しか造っていなかった川崎重工が、折からのゼロハン・ブームに応えて進めていたC.M.Cコンパクトモーターサイクル計画プロジェクト

 その計画から生まれ、満を持して投下された三種の50㏄モデルの、まさに中核にして筆頭を担うのが50㏄ゼロハンスーパー・スポーツであるARなのだ。

 『AR』とは、この当時活躍していたワークス・レーサー『KR500』のイメージを持たせつつも市販小排気量車として設定された名前であり、レーサーそのものの名を着けられて生まれたRG50Γとはまた違った矜持を持たされていた。

 エンジンは空冷であり、この直後に揃いぶむ水冷のライバルたちと比して若干の古さを感じさせはするが、むしろをとこ・硬派のカワサキらしいと好意を持たれる程であった。

 その足廻りには、カワサキ市販ロードスポーツ初のユニ・トラックサスペンションを装備し、軽やかなフットワークを実現している。

 また、動力性能的にも水冷ライバル群に全く引けを取らないもので、軽量な車体と相まってタイトな峠では無類の速さを発揮したものだ。


「はぁ……」


 イメージ・カラーのライムグリーンに塗られたスリムなバイクの写真を眺めつつ、瑞穂はため息を吐く。


「ボクも、乗ってみたいなぁ……」


 目の前を駆け抜けて行った直毅とAR。

 フルフェイス・ヘルメットに隠れた直毅の表情は伺えなかったが、なんとなくとても楽しげに走り去っていったように感じられる。


「バイク、かぁ……ボクも、乗れるようになれば変えられるカモ……」


 そしてその夜。

 瑞穂の放つ


「ボク、バイクに乗りたい!」


 という爆弾発言により、渡会家に激震が走ったのだった。




                  〇




「はぁはぁ……何とか着いた……」


 家を出てから30分ほど。

 瑞穂とARの姿は、学校の自転車置き場にあった。


「お、おいマジで瑞穂ちゃんじゃん」

「免許取ったってマジだったんだな……」

「しかも、スクーターとかじゃなくてARかよ!」

「新車っぽいな」

「フヒヒヒヒ! 瑞穂たんミニマムサイズですから、AR50が250㏄クォーター並みに見えるでござるな!」

「げえっ! 小多田!!」

「生きとったんかワレェ!?」

「巳桜に3バカ揃ってられたって聞いたはずだが……」


 瑞穂がバイクで登校して来た、という話はあっという間に校内に広がり、野次馬共が自転車置き場に詰め掛けていた。


「しかし、ライムグリーンのARとは……」

「巳桜とお揃いかよ」

「もしかして、2人が付き合ってるって噂はマジなのか?」

「そんな馬鹿な! 俺の瑞穂が……!!」

「誰がテメェんだゴラァ!!」

「あ? 俺なんて瑞穂ちゃんと一緒に下校したトキあるし?」

「俺は瑞穂ちゃんと一緒に学食で飯食ったことあるぞ!!」

「フヒヒヒ! 吾輩など瑞穂タンの捨てたコーラの空き缶を拾って間接チッスをしたでござるよ!」

「おどりゃクソ小多田!?」

「てめえ何してけつかんねん!?」

「ダメだコイツ、早くなんとかしないと……」


 ざわざわとざわめく野次馬などには目もくれず、瑞穂は白いフルフェイス・ヘルメットを脱いだ。

 キラキラと光る黒髪と、あどけなく可愛らしいその顔に、むくつけき野郎どもから歓声が上がる。


 と、校門の方から元気な2スト・サウンドが響いて来て。


「あっ! 巳桜くん!」


 瑞穂の顔がパアっと輝いた。

 瑞穂のARの隣に、直毅のARがキッと停まる。


「巳桜くん、おはよう!」


 瑞穂は、ドキドキとトキメく胸の鼓動を持て余しながら、元気に挨拶をした。


「ああ、おはよう」


 直毅はそれに応えつつ、黒いフルフェイスを脱ぎ、まじまじと瑞穂とARを見詰める。


「……買ったのか?」

「うん! 巳桜くんのAR見て、一目惚れしちゃったの!」


 輝く笑顔を直毅に向け、嬉しそうに告白する瑞穂。


「お、おい聞いたか!?」

「瑞穂ちゃんが巳桜に一目惚れした……だと……?」

「ああ……もうダメだ……俺の初恋が今終わった……」

「鬱だ氏脳」

「小多田!? 小多田がいきなりぶっ倒れたぞ!?」

「これはもうダメかもわからんね」


 阿鼻叫喚の野次馬共を完全に無視し、瑞穂は言葉を続ける。


「それで、あのね……もし良かったら、今度一緒に走りたいなって……」


 頬を桃色に染め、上目遣いでそんな事を言う瑞穂は、まさに恋する乙女の様である。


「ああ、別に構わんぜ。バイトが無い時ならな」

「巳桜くんって、なんのバイトしてるの?」

「ん? 喫茶店のウェイターだよ」

「そうなんだ! 今度お店に行っても良い?」

「まあ客なら大歓迎だから、来ればいいさ」

「あとね、ARの事色々教えてほしいな!」

「俺に解る事ならな」


 ARに跨ったまま、楽しげに2人だけの世界を構築する瑞穂と直毅。

 その様子に、野次馬共は死屍累々となって行く。


「おい、お前ら! あと五分でホームルームの時間だぞ!!」


 遅刻生徒を取り締まるため、校門に向かう生活指導担当の教師が叫ぶと。


「おっと、とりあえず教室行かんとな」

「うん!」


 瑞穂と直毅はヘルメットを設置された棚に置き、校舎に向かって歩き出す。


「ったく、アイツら何をそんなに盛り上がってるんだ?」


 ダッシュで校門を通過する生徒たちに怒鳴りつつ、生活指導担当教師は首を傾げる。


「おら! あと一分で校門閉めるぞ!!」


 未だ校門外にいる生徒たちに声を掛ける教師。


 その、校門に書かれた学校名はこう読めた。



『私立渡良瀬高等学校』と――










Fin.







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