第7話 決意

 見知らぬ男に顔面を殴られ、昏倒してから数時間後の夕方。病院で目を覚ました俺が真っ先に気にかけたのはソロモンの安否だった。

 俺を心配して駆けつけてくれた家族からの声を押しのけて、前述のことを聞いた俺に、家族は一瞬目を瞠り言いづらそうに顔を逸らす。

 その行為で、俺はソロモンがどうなったかほぼ理解してしまったのだが、俺は気づいていないふりをして家族に問う。

 そしてそのあとやってきた医師により、俺は改めてソロモンの死を知った。正確な死因は聞いていない。それを聞き入れる前に、俺の頭は真っ白になっていったから。

 俺はどうやら、床に座り込んで、泣き叫んでいたらしい。頭を抱えて、何回も『嘘だ』とか『なんでだ』とか呟きながら、ボロボロと涙を流していたようだ。

 本来は俺の診察とか警察の事情聴取とか、他にも新聞記者からの取材とか予定していたらしいけど、俺があまりにも泣き叫んでいるものだから、診察や事情聴取は一旦後回しになったらしい。記者は変わらず俺に色々聞こうとしていたのだけど、それはなんとか親が追い返してくれたので本当によかった。

 自分と身内しかいない病室。かっこ悪いと理解しながらも、今までにないくらい泣き叫んで涙を流して、ようやく落ち着いたときにはすっかり夜になっていた。


「……少し落ち着いた?」

「……わかんない」

「ソロモンくんは、あんたの一番の友達だったものね。そりゃ、ショックよね」

「……うん」


 俺の様子を見に来てくれた母さんが、悲しげに言う。本当は、友達じゃなくて、一番大好きな恋人なんだとは、言えない。だから適当に返事をする。

 どうやら俺は、明日検査をして何事もなければ退院できるらしい。まあ、事情聴取とかもあるだろうからすんなりと家に帰れるかはわからないけど。


「それじゃあ、また明日来るからね、おやすみなさい、ギリェルモ」

「……うん、お休み」


 沈んだ声で母さんにそう返して、俺は一人考える。

――ソロモンは、死んでしまったのか。

 数時間前まで一緒に街中にいたのに、死んでしまった。なんて、なんて悲しく、あっけないものだ。そんなことを考えるとまた涙が出てくる。もうすっかり泣きはらしたと思ったのに、心が痛くて、頭が重くて仕方ない。

――なんで、ソロモンは死んでしまったんだろう。

 適当に相手を選んだ通り魔か、ソロモンを狙ったのか、そのどちらかなら後者だと俺は思うのだが、その理由たる当時のことを、今はあまり思い出したくなくて、俺は目を閉じた。


 翌日はとても忙しい日だった。病院での検査に警察からの事情聴取、他にも記者がやって来てあれこれ聞かれたり。家族と落ち着いて話す時間も、一人になる時間も殆どなかった。俺は、ソロモンの家に送るメッセージカードや花を母さんに頼み、『友達』として警察の人や新聞社の人と何とか話をした。覚えている限りの犯人の様子も話して、犯人の逮捕を願った。ソロモンのことを聞かれても、悪いことはなにも言わなかった。

 殴られた頬の痛みなんて、もう全く気にならなかった。


 翌日、朝に帰宅した俺は、紺色の背広を着て急いで葬儀に向かう準備をする。この国では、葬儀の時必ずしも黒い服を着なければならないわけではない。黒一色は基本的に遺族と葬儀屋で、参列者は大体何でもいいようだ。

 溜息でも吐きたくなるほどの重い気持ちの中、俺は一人教会が併設されてる斎場に向かう。俺と同年代くらいの参列者が多くいて、ソロモンの交友関係を改めて知った。他にも記者らしい人がちらほらいて、どこにでもいるのだなと思わず顔が歪む。できるだけそっとしておいてほしいというのが家族の本音だろうが、あまりあちらには関係ないのだろうか。とてもとても、嫌になる。

 そんな気持ちを抱えながらも受付を済ませ、花で飾られた祭壇の前にある棺の中を覗きこんだ。

 そこにいた彼は、あれ以降初めて会ったソロモンは、本当に眠っているようだった。苦しげな表情は全くしていない。安らかで、本当に、名前を呼んだら目を覚ますんじゃないかって思ってしまうほどには。

 クロッカスみたいな色の綺麗な髪は、何も変わっていない。金の瞳は閉じられているが、きっと美しいままそこにあるのだろう。それなのに、触れたら、とてもとても冷たくて、彼の死を改めて受け入れるしかないんだと実感し、涙が零れそうになった。

 体の中に、大きな穴が空いている気がした。


 その後はソロモンの家族や久々に会った同級生と話し、ひとりぼうっと会場の端にいた時、俺に体当たりのごとく挨拶に来たのはウォルターくんだった。背中のあたりに突撃され苦言を呈す俺に、後を追ってやってきた長兄のボールドウィンさんが慌ててウォルターくんを引きはがし謝罪する。


「こら、そんなことしたらダメだろ! すみません、この子、なかなかじっとしてられなくて……」

「はなしてよー!」


 じたばたと暴れ、むくれるウォルターくんは、どうやらかなり不機嫌らしい。いつも遊ぶときの楽しそうな様子とは大違いだ。

 そんなウォルターくんに、ボールドウィンさんは困ったように続ける。もちろん、きちんとウォルト君の目線に合わせ屈んでから。


「離してもいいけど、さっきのお部屋に戻るまで兄ちゃんと一緒にいるって約束できる?」

「やだ!」

「じゃあ駄目だ。離しません」

「やだーー!!」


 凄まじい絶叫が館内に響き渡り、その大声に周囲の参列者が何事かと振り向いた。呆れたように溜息をついたボールドウィンさんに事情を聞くと、彼は困ったように言う。


「一緒に遊んでくれる人がいないんで、不機嫌なんです」

「あぁ……。あれ、でも年近いお姉さんもいましたよね?」

「あの二人は、控室で絵描いたり本読んだりして、そっちに集中してるので……」

「……なるほど」


 それは確かに退屈だろうと普段のウォルターくんの様子から考える。知らない人が沢山いるところに来たと思ったら、親や祖父、兄姉は実に忙しそうで、年が近い姉は遊んでくれない。ならば一人で遊ぼうとすれば捕まえられる。大変、苦痛だろう。彼がまだ6歳の男の子であることを考慮すれば、一人にできないのは当然なのだが。

 目の前でも、ウォルターくんは未だに暴れている。その様子を見て、俺はふとボールドウィンさんにこう言った。


「あの、暫く俺がウォルターくんと一緒にいましょうか?」

「……いいんですか?」


 俺の言葉に、ボールドウィンさんが妙に驚いて言葉を返す。自分は今までウォルターくんと何度も遊んでいるし、それにここまで何も手伝いができていなかったことも気がかりだ。俺がウォルターくんの面倒を見ることでご家族の助けになるなら此方も有り難いものだ。


「すみません、じゃあ、お願いします。できるだけ、記者の人に近づかないようにしてね」

「はい、充分、気をつけます」

「ビルにいといっしょにいたらいいの?」

「そうだよ。いい子にしてるんだぞ」

「はあーい」


 ボールドウィンさんからウォルターくんを託され、ひとまず彼の小さな手を取ったその時、ウォルターくんは短く大きな声を上げたかと思うと、何かに興味を惹かれて斎場の外へ走り出していき、俺はいきなり彼を全力で追いかけなくてはいけなくなったのだ。



「……やっと、捕まえた……」

「ビルにいすごい! はやい! もっかい!!」

「あとでな。もうすぐお葬式始まるから」

「えーっ」


 少しばかり冷たい風が吹いている斎場の外で、俺は漸く逃げ回っていたウォルターくんの腕を掴んだ。退屈しまくっていたウォルターくんは、それはそれは元気で、あちこち走り回るし奇声はあげるし、いつも以上にパワフルだ。もう既に俺は疲れ始めているほどには。子供の体力って本当にすごい。今だって俺と手を繋がれているが振りほどこうと必死だ。

――こちらの気も知らないで、いっそ羨ましい。

 内心、あまり良くないであろう悪態をつきながら、ふと俺は今日の彼の様子を口にする。


「それにしても、今日はいつもより元気だね」


 今まで何度か彼と遊んではいるが、それを優に越すのではと錯覚する元気さに、なんとなく口にすれば、彼は素直に答えたのだ。


「だって、きょうつまんないもん。だあれもぼくと、あそんでくれない」


 そうか、と返す前に彼は続ける。


「おとうさんはこわいかおしてるし、おかあさんはいない。おじいちゃんもなかなかぼくとおはなししてくれないし、おにいちゃんたちも、おねえちゃんたちも、みんなそう。いろんなひといるのに、つまんない!」

「……そうか」

「それに、ソールにいはずっとねてるんだよ。あそんでほしいからおこそうとしたら、だめっていわれるし、へんなのー」

「……そっか」


 道理で、彼にとってはつまらないはずだと理解した。

 この子は、実の兄が死んでしまったことをまったく理解していないのだ。ただ、変な箱の中で眠っているといだけの認識。だからたくさんの人がいる理由も、家族があまり話してくれない理由も分からないのだろう。

 ウォルターくんは、俺の手を振りほどこうとすることをやめ、唐突にジャンプを始める。ぴょんぴょんと何度も。俺はそれなりに見た頃がある彼の癖のようなものだが、知らない人が見たら驚くだろうなと思う。

 何度も飛び跳ねるウォルターくんの瞳は空を見つめている。灰色の天を見つめてぴょんぴょんと跳ねて、何かを思いついたように声を上げる。それはもう本当にいいことを思いついたと明らかに分かる純真な笑顔で。


「あ、ねえねえビルにい! ビルにいなら、ソールにいのことおこせるんじゃない?」

「……え」

「ビルにいがよんだら、きっとおきるよ!」


 ウォルターくんの言葉に俺は動揺した。まさか、そんなことを言われるとは思っていなかったのだ。俺の心境とは裏腹にウォルターくんは俺の腕を引いて連れていこうとする。確かにそろそろ始まりの時間だろうから向かうのは構わないが、彼の考えは訂正した方がいいのだろうかと、暫し悩む。

 ウォルターくんはソロモンが眠っているという判断をしている。もしかしたら誰かにそう言われたのかもしれない。確かにその言い方は死が理解できないであろう子供によく使う言い回しだが、これでは素直な彼は本当に眠っているのだと信じ込んでしまう。

 しかし幼いからといって、そのような誤魔化しはしない方がいいのではないか。優しい言葉で伝えれば、理解してくれるのではないか。勝手なことを思いながら、俺はウォルターくんに言葉をかけようとしたその時、遠くからボールドウィンさんが俺たちを呼ぶ声が聞こえた。


「ビルキースくん、ウォルト! そろそろ始まるから会場に来てくれ!」

「あっ、はい! じゃあウォルターくん行くよ」

「はーい!」


 お兄さんの声にウォルターくんは大きく返事をして、走り出す。先程言っていたことは掻き消されたのかなんなのか、彼はこちらを問い詰めることもなく素直に斎場へ向かい、俺も気持ちを切り替え、慌ててその後を追った。



 それから葬儀は滞りなく進んだ。神父の話を聞いたり故人を送り出す歌を歌ったりしたあとは墓地に行って埋葬する。棺をお兄さん達が馬車に乗せて運ぶ。そこでもまた神父の話を聞いて黙祷すれば、終わりだ。

 何度見ても棺の中のソロモンは眠っているようだった。ウォルターくんの言うように呼びかけたら起きそうだと思ってしまうほど。だがそんなことを言ってももう二度とソロモンほ起きないのだが――ウォルターくんは、それがよく分からない。

 だから自分の兄姉に何度もなんで起きないの聞いたり蓋を閉めないでとずっと言っていた。その度にソロモンはもう死んでしまったのだと説明を受けていたのだけど、どうやら理解できていないらしい。最終的にウォルターくんは大泣きしてしまっていたのだけど、多分それは兄が死んで悲しいというよりは、誰も自分の訴えを聞いてくれないことの嘆きだろう。

 埋葬も終えて、俺は呆然と墓石の前に立つ。丁寧に彫られたソロモンの名前とたった16年の年数。俺があの時もう少しソロモンのために何かできていたら、と不甲斐ない気持ちになる傍ら、俺は以前ソロモンに頼まれていた話をぼんやりと思い出していた。



『もし、僕に何かあった時は、ウォルトのことをお願いしたいんです』


 ソファに座って話をしたあの日、ソロモンが真剣な眼差しで口にしたのは、そのような事だった。もっとソロモン本人に関わることを頼まれると思っていた俺は、ウォルターくんの名前に少し驚いた。


『……なんで、ウォルターくんなんだ?』


 ぎこちなく訊ねた俺に、ソロモンはゆっくりと説明をする。


『ウォルトがどんな子かは大体分かりますよね。元気で明るい子ですけど、落ち着きがなくじっとしていられなくて。いくら幼いといえど、他のきょうだいの誰よりも手がかかる子です』

『……そうだな、それはまぁ身に染みて分かってるよ』

『そうでしょう。その分、ウォルトと遊んでくれる貴方には感謝してます。……まぁ、つまりそんな性質な子だからか付き人などが必須なんですけど、あの子の面倒を見てくれる人がなかなかいなくて』

『……そういや、ウォルトくんが親族以外の大人といるの見たことねぇな』


 ソロモンの言葉に俺はウォルターくんや他の姉妹の様子を思い出す。まだ幼いステラちゃんやアガサちゃんには、それぞれ褐色肌で長髪の男性と茶髪の男性がついている。

 しかしウォルターくんには付き人らしい人は見たことがない。家にいる時間が長いお祖父さんが彼の面倒を見ているらしいのだが、いくらお祖父さんが元気でも心配だとソロモンは言う。

 学校では介助の先生がついているようだが、学校と家は別である。だからそれの一部を俺に頼めないかということだ。

 もちろん強制ではないし、万が一の場合だから忘れてもらってもいいと、そもそも一方的にこんなことを頼むなんて良くないから等とソロモンは言う。だが、俺はその言葉を聞き流したくなくて、彼に言った。


『いいだろう。ソロモンになんかあった時は、俺がウォルターくんの面倒をみる。約束だ』

『……! はい、ありがとうございます』


 安心したように礼を言った彼との約束を、俺は破る気など毛頭なかったのだ。



 葬儀から数週間後、俺はソロモンの家を訪れていた。広い門を通って、使用人さんに挨拶をして、ヴィクターさんに会いに行った。

 俺の訪問に驚いたヴィクターさんは穏やかに招き入れてくれて、綺麗な部屋に通してくれた。

 丈夫なソファに腰を下ろしなんの用かと切り出したヴィクターさんに、俺は簡潔に言う。


「俺を、ウォルターくんの付き添い人にしてくれませんか」

「……え?」


 予想外だったろう申し出に、ヴィクターさんは目を丸くした。そして、なんで? と当然呈された疑問に、俺は葬儀や今までのやり取りを踏まえて、話す。

 ウォルターくんは一人にしておくにはとても危なっかしい子だと。ステラちゃんやアガサちゃんのように保護者として近くにいる人が絶対に必要だと。


「……ソロモンから聞きました。今も、きょうだいは危険な目に遭うことが多いと」

「……そうだな」

「ステラさんやアガサさんも、まだ幼いですし女の子ということもあるので、付き人がいるのは結構かと思います。でも、ウォルターくんは、もっと、その、普段の生活から誰かが補佐したほうがいいと、思うんですよね」

「……それを、君がしてくれるのか」

「はい。俺は、ウォルターくんがどんな子か一応知ってますから」


 慎重に選んで伝えた言葉に、ヴィクターさんは頭を悩ませる。そりゃ即決出来なくて当然だ。面倒を見ると言ったって、俺は教師でもなんでもなく、体は鍛えているが護衛として適しているかも分からない。ただウォルターくんと交流があり、ソロモンの恋人であっただけだ。断られても致し方ない。

 ヴィクターさんは、俺の仕事との兼ね合いなんかも気にしてくれたが、それはあまり考慮しなくていい。既に親方には話してある。もちろんすんなり辞職なり兼業なりを許可される訳もなかったが、ヴィクターさん側に受け入れてもらたなら、そこはなんとか説得してみようと思う。

 そういう話をすれば、ヴィクターさんも流石に俺が本気だと分かったのか、考えさせてほしいと、苦い表情で言った。


「家族や、ウォルター本人とも相談したい」

「はい、分かりました」


 結局、その日はその言葉と共に帰宅することにしたが、それから数日後。家に来たヴィクターさんに言われたのは、暫くの間お試しで付き添い人をしてくれないかというものだった。


「ウォルターはビルキースくんといることに喜んでるが、時々遊ぶのとほぼ毎日面倒見るのとでは違う。だからとりあえず1、2週間くらいみてから判断したい。もちろん、その期間で終わったとしても謝礼はするよ」

「ありがとうございます、よろしくお願いします」


 こうして、俺の生活は慌ただしく変化する。

 ウォルターくんは相変わらず元気な方で、ふと目を離した隙に何をしでかすか本当に分からない。部屋は散らかっているしじっとしていられない。勉強にも支障が出ているほどで、今までこの子はどうしていたのかと不安になるほどだった。

 聞けば、今まで何度か付き人はいたのだが、ウォルターくんの性質に皆手を焼き、辞めていったのだそう。だから俺の申し出は非常に有難かったのだとか。

 質素ながら綺麗な部屋を貸りながら過ごすことおよそ2週間。色々と大変であったものの、俺はそれを達成した。


「2週間大変だったろ、おつかれ様。君さえ良ければ、今後もウォルターの面倒を見てほしいんだ、どうかな。ウォルターも、今までの人よりいいなんて言ってるんだ」


 不安げに口にしたヴィクターさんの言葉を、俺は迷いなく受け入れた。確かに大変だったけど、ウォルターくんといること自体は嫌ではなかった。それに、ウォルターくんが俺のことを気に入ってくれているのはとても有難い。だから迷いはなかった。


「こちらこそ、よろしくお願い致します」


 その日から俺は、ウォルターさん……いや、ウォルター様の傍にいるようになったのだ。



 あれから七年。以前の仕事も辞めて公私共に環境が変わり、今ではこの家の使用人としての勤めも果たす。当初は大事な子息を預かる責任感だけでなく、慣れない仕事四苦八苦したのものだ。それも今は昔の話。忙しい御家族の代わりにウォルター様の勉強も見るようになり、大体のことはできるようになったと思う。まぁ、ウォルター様は13歳になった今も落ち着きがなくやけに幼くて、大変なところもあるのだけど、なんとか上手くやれているように思う。ただ、俺や御家族だけではどうにも出来ないことも多々あり、専門の施設や職員に頼ることも増えてきた。ウォルター様としては嫌だろうが、健全な成長のためには仕方ないことだ。


 また、あの事件の犯人は未だに捕まっておらず、いつまで経っても犯人への恨みは消えない。

 今でもソロモンの部屋はそのまま残っている。俺はたまにそこに行って、彼との思い出に浸る。女々しいことではあるが、俺は今でもソロモンを愛しているし、ソロモンを忘れるつもりは無い。

 だからこそ、彼に頼まれたことも、俺は絶対に裏切らない。

――安心してくれよ、ソロモン。

 俺は、何があっても君との約束を果たすから。

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