第159話エリック ホッファー

 この人、アメリカ人で日雇い労働者をやりながら哲学書を書いていた人である。

私はこの人の書いたことを、折に触れて思い出す。そこには「人間」そのものに触れるような肌触りのある思索がつづられている。

 日常のありきたりな事柄から導き出される人の営みへの深い洞察に感銘しつつも、私は果たしてここまで思慮をめぐらしたことがあるのかと自問する。

 考えるきっかけとは至る所に転がっている。要はその機会をとらえて自問し、内省するかどうかである。

 この人は孤独だったのだと思う。そして考えることが唯一の救いだったのだ。思索を深めるということは不幸に対する救済かもしれない。だとすれば、思想を深める必要条件として不幸であるということが前提なのだろうか。

 現在の私はと言えば、ふわふわと浮かぶように生きている。思想とまではいかないが、考えることが趣味である。このような状態で深い思索ができるとは思わないが、考えることで新たに発見することがあり、そのことにより喜びをみいだす。

 エリックホッファーから学ぶことは、人間何をやっていても、どこにいても思索を続けることで、生きるということに多少なりとも深みが増すということだ。

 立ち止まって考える。そのことの大切さをこの人は教えてくれた。

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