第160話遊び

 この歳になって遊ぶということがあまりない。というか、私生活そのものが遊びの延長のような生活をしているので、ことさら遊ぶ必要がないのも事実である。

 楽しく読書をすることを遊びというのかは疑問だが、それを遊びではなく、学びだとすると気が楽になる。読書は高尚な趣味である。という偏見を自分の中で育むことで自尊心が保たれるところがある。本を読むことが、漫画を読むことと同じだとすると、後ろめたさを感じることとなり、自尊心が危機に陥りそうになる。

 読書には価値があると思い込むことでどれだけ救われることか。価値観とは偏見によって彩られている。自分が安心できるのであれば多少の偏見も許されることだろう。

 読書を遊びの範疇に入れ、そして純粋にそれを楽しむ。そこに後ろめたさがなければ、それは自分にとって真の趣味といえるだろう。私は楽しい本であればあるほど、そこに後ろめたさを感じてしまう。それは学びとは多少の苦を伴うものであるという偏見があるからだろう。

 楽しさと多少の苦痛を伴う読書。それが私にとっての高尚な趣味である。

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