第2話 雷雨
玄関のドアを開ける。
「せんせい……」
そこには柔道をやっている子には珍しく細くて色白、髪が長くて今時の女子高生という感じの子が夏の制服姿で佇んでいた。
目を潤ませて私を見る。
「私で良いのだね」
最後の確認をする。
しっかりと頷く中町さん。
じゃあしょうがない。
「中に入って。そこの部屋がベッドのある部屋だから」
家の中に招き入れ、これからおこなわれる事をする為の部屋に案内する。
「……失礼します」
小さい声でそう言って私の目の前を横切る中町さん。
可愛らしいシャンプーの香りが微かにした。
やれやれ。
結構気を遣うし、体力も意外と使うからやりたくないんだけどねぇ。
少し緊張交じりのため息をつく私。
雨音が少し強くなったような気がした。
ベッドの前に佇む中町さん。
「じゃあそこに寝て」
私もセーターを脱ぐ。
何だか決心がつかないのか動かない中町さん。
「別に怖かったら良いんだよ。俺じゃなくても」
優しく言う私。
そりゃそうだ。
初めては怖いに決まっている。
男の私だって初めての時は怖かったさ。
そんな大昔の事を思い出す。
女の子だったらなおさらだろう。
「やっぱり……痛いものなのですかね」
独り言の様に言う中町さん。
「まぁ痛いと思うよ。でもすぐに痛くなくなってくるけどね。まぁ初めての時は慣れている人にやってもらえばそんなに痛くないと思うけど」
「だから先生にやってもらおうと思ったの」
私の言から間髪入れず答える中町さん。
潤んだ双眼で私を捉える。
顔もほのかに赤い。
そうか。
覚悟はしてきているのか。
中町さんはゆっくりとベッドに腰掛ける。
「じゃあお願いします」
そう言うとシャツのボタンをすべて開けた。
躊躇の無いその動作に私は視線を外に向ける。
ついこの間まで子供だったのになぁ。
彼女が小学生の頃、受け身を取り損ねて大泣きする彼女を抱っこしてあやし続けた事を思い出す。
そして視線の先にあった窓から外を見た。
雨は更に強く地面を叩いている。
「先生……」
上気した顔で私を見つめる中町さん。
「大丈夫。そんなに緊張しないで」
務めて優しく言う私。
そういう私も少し緊張していた。
それを悟られない様、明るい声を出す。
笑顔の彼女。
それは可憐な白花の様で、それが私の少しだけしていた緊張を解す。
「ゆっくり、仰向けに寝て」
素直に私の言葉に従う中町さん。
ベッドの上に仰向けになり、
「お願いします」
そう言うと目を閉じた。
さて。
じゃあ。
やりますか。
私もベッドの上に乗った。
少しだけ、遠くの方で雷の音が聞こえた。
雨は降り続け、風も出てきた様で木々の揺れる音が乱雑に心をかき乱す様に聞こえてくる。
外の喧騒とまるで異世界な私の寝室。
夏の夜。
西洋の家具屋で買ったダブルのベッド。
その上には女子高生の中町さんが仰向けになって寝ていて、私の事を待っている。
目を閉じた小さな顔。
形の良い唇が微かに震えている。
「何も怖くないよ」
彼女の額を優しく撫でる。
唇の震えが消えた。
そして表情が和らぐ。
「じゃあシャツを脱いで」
再度緊張させない様、自分で脱がせようと思った。
しかし、
「先生が……脱がせて」
甘えた様な声で言う中町さん。
緊張が消え切ったのを確認する私。
ほぼ開ききっているシャツのボタンを全て外し、
ゆっくり、
やさしく、
時間をかけて制服のシャツを脱がせた。
白い肌が露出する。
スポーツブラの下はしっかりと2つの連山を形成している。
ああ。
女性になったのだなぁ。
何だか少し感慨深い物を感じた。
そしてその子の初めての行為を私が任された、という大任を改めて思い出し、気を引き締める。
シャツを綺麗に畳もうとした時、
「先生、そんなのいいから早く!」
中町さんの大きな声が私の背中を刺す。
それもそうか、と思いシャツをイスに向かって投げる。
物凄く高かった西洋家具のその椅子に、人によってはそれ以上の価値を見出すであろう制服のシャツが緩やかな速度で背もたれにかかる。
それを見届けて改めて中町さんに向き直る。
随分昔にも家に遊びに来た事があった。
その時は今の半分位の身長だったであろうか。
まさかその時は数年後、この様な事になろうとは思いもよらなかった。
いや。
そういった予感みたいなものは少し感じていたかもしれない。
とにかく彼女は私に懐いてくれていた。
そんな大きくなった彼女の肩を撫でる。
ピクッと小さく反応する中町さん。
大丈夫、という風に笑う私。
中町さんも笑ってくれた。
首、
肩、
胸の近く、
の順に彼女の肌に触れていく。
「じゃあいくよ」
中町さんが小さく頷いた。
一気に入れる私。
「痛い!!」
十分に気を付けたつもりだったのだが、少し準備が足りなかった様で痛がらせてしまった。
私もまだまだである。
しかし、
「あっ、もう痛くなくなった」
喜んでくれている中町さん。
ああ。
良かった。
「じゃあ、動かすよ」
「はい」
外の雨音が更に強まった様な気がした。
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