あの日は雨だった

今村駿一

第1話 小雨

 この頃よく鳴る私の携帯電話。

 プルルルル

 本日もよく鳴る。

 相手を確認すると友人だった。

 またか。

 しょうがないので出る。

「おいお前の家に先週の月曜日、かわいい女子高生が来たらしいな」

 少し興奮気味にまくしたてる友人。

 この話を何人も聞きたがる。

 ここ一週間、何回同じ話をした事かわからない。

「しかも夜に来たらしいじゃないか」

 そうだな。

 ため息交じりで答える私。

「俺にも詳しく教えろよ」

 教えても良いけどさぁ。

「何だよ」

 まぁいいけど。

 そんなにいい話でもないけどね。

 そんなに、

 ね。

 

 


 雨がうだる様な暑さを更に引き立たせる夏の夜。

 ピンポーン

 滅多に鳴らないインターホンが鳴った。

 また公共放送の集金人か?

 うちはテレビ無いのに。

 しつこいなぁ。

 オートロックなので画像を確認する。

「先生、先生……」

 か細い女の声だった。

「えっ? 中町さん?」

 画面に映ったのは以前、私が教えに行っていた柔道教室の生徒、細くてかわいい今時の女子高生、中町亜里沙さんだった。

「お願い、先生、開けて」

 泣きそうな声で訴える。

 準備をしてきたつもりなのか、服のボタンを多めに開けていた。

 そうか。

 ついにこの日が来たのか。

(ほとんどの子はやっているのに私だけまだなの。初めては先生がいいな。ダメ?)

 そんな事を言っていたのを思い出す。

「覚悟は良いの?」

 一応聞いてみる。

「……初めては先生がいいと思っているから」

 そうか。

 そこまで言って頂けるのならしょうがない。

「じゃあ入って」

 オートロックの開錠ボタンを押した。

 そしてベッドのシーツを変えようと寝室に向かう。

 雨がより一層強く降ってきた様で外の音が煩く感じた。



 ピンポーン

 ドアの前に来たのだろう。

 ベッドのシーツを変え終わった私は玄関に急いだ。

 


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