3-2 telomere -テロメアって何?-

 動揺のあまりエラ呼吸を始める俺に、ハミーは事も無げに言い放った。


「ナースステーションで話してましたよ!」

(先生!秘密ちゃうんかい!)


「テロメアが遺伝子のらせんから出してるんですって!」

(なんやと!?それもう人間ちゃうやん!)


「実はなんですよっ!ウケるっ!!」

(ハミー、我も人間ちゃうんかい!)


 この短いスリー・センテンスに驚愕の事実を詰め込んだハミーは、をワガママに揺らしながら窓の外の景色に目を落とした。

 その儚げな横顔は憂いを帯びて美しい。


 にも似た衝撃の宣告を受け止めた俺の脳裏に、これまでの出し人生が走馬灯のように蘇る。


 俺はようやく理解した。


 俺のこれまでの出しは、神が作った生命の設計図・遺伝子の導きだったのだ。


 つまり、俺こそが


 そして、目の前にもう一人、がいる。

 

「ハミさんっ!」

「ハミー♡♡」

「お願いがあるんです!!」

 俺の愛の呼びかけに被せるように、食い気味にハミーが懇願してきたせいで、求愛は無かった事になっている。


「は、はい?何ですか?」

 落胆を悟られないように事務的に答える俺に、ハミーはいかにも重大な事のように話し始めた。


「実は私、この病院のある疑惑を調べてるんです…。」


「ある疑惑!?」


「この病院が、原発の作業員を受け入れているの、知ってますよね?」


 それは俺も知っていた。

 関関電力のお抱えであるこの病院は、被爆して亡くなった作業員も、ただの心筋梗塞などと偽って診断書を出すという噂もある。


(しかし、ハミー、そんななテーマはこの小説には合わないよ、なのはだけで充分さ…。)


 血走った目でハミーのオッパイを凝視する俺の耳が、甲高い金属音のようなモノを捉えた。

 焦って振り向くと、入り口から転がって来た金属製の玉が2つに割れ、湧き出て来た煙が部屋を包み込む。


「こ、これは催眠ガス!?」



危うし、俺とハミー!

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