2-4 ハミ出し王子、アレを指さす

「この時間、旦那仕事だから。」


 銃を構えたまま固まっているハミーを丁寧に無視して、上西は靴を脱ぐと、きちんと揃えて家に上がる。


「お邪魔しますよっと。」


 俺も靴を脱いで、丁寧に玄関に揃える。


 ハミーはこっそりと玄関に戻ると、そっと靴を脱いで揃えた。

 控えめに揺れるは、環境問題よりだ。


 逃げ出す事を考えて荷物を整理しているのだろうか、ガランとしたリビングに一つだけ残る写真立てからは、幸せだった頃の二人が微笑みかけている。

 かつてあった愛情の破片が、俺とハミーの胸を苦しくさせた。


 そうでなくても、ハミーの胸はいつも苦しそうだ。

 奔放な二つの巨大な塊は、今日もTシャツに押さえつけられている。

 あそこからハミ出させれば楽になれるというのに…。


 上西は、俺の視線に気づいたのか、そっと写真立てを倒すと、テーブルの上に離婚届を広げた。


 二重の悲しみから逃れる様に俺は視線を泳がせる。

 部屋の隅のチェストの上には、旦那のものだろうか、爪切りや鼻毛バサミなどのグルーミングセットが乱雑に置かれていた。


「私たち、どこで間違っちゃったんだろう…。」

「大丈夫ですよ、すぐにられますよ。」


 写真立てを見て過去の思い出が蘇ったのか、泣きじゃくり始めた上西を、ハミーの豊満な胸が包み込んだ。


(クソ上西!そのはお前の為のモノじゃない!!)


 俺は怒鳴りつけたい気持ちを抑えながら、努めて冷静に、そして慈母観音の様に優しい声で二人に呼びかけた。


「いいや、お嬢さんたち、るのはまだ早いぜ!」


「は? 何言ってるんですか?」

「なんだよ、クソ!」


「お嬢さんたち、を見るんだぜ!」


 俺は攣りそうな位ピンと伸ばした人差し指で、それを指さした。

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