2-3 ハミ出し王子、上西の家に行く

 震える声が動揺を隠せない俺をよそに、ハミーは怒りに身を震わせている。

 よく見ると、その震えはに伝わり、共振現象を起こして更に震えを増大させている。

 その姿は環境問題よりもだ。


「ほんと許せませんよね! 今から一緒に懲らしめに行きましょう!」


(一緒に!? と一緒に!?)


 邪な妄想に囚われた俺は、いつの間にかハミーの愛車ハスラーの狭い後部座席に押し込められていた。恐るべし。


「あ、そこ右です。」


 上西は助手席で偉そうにナビの代わりを務めている。


「普段は優しい人なのよ…。」


 恐らく旦那の事だろう。


「でもねぇ、人が変わった様に乱暴になる日があるの…。」


 そりゃそうだ、いくらハミ出し者とは言え、普段から常にハミ出している訳ではない、乱暴を働いた後に優しく接する、それはDVの典型的な手口だ。

 だが、俺は言いようのない違和感を覚えていた。


「あ、そこです!」


 ハミーは、路上に車を停め玄関にダッシュすると、拳銃を取り出して構えた。

 打ち合わせもしていないハンドサインで、俺と上西をドアの両側に張り付かせる。

 アゴで指図して上西に鍵を開けさせると、俺に目で合図をした。

 俺が意を決したようにドアを開けると、ハミーは拳銃を構えたまま、脱兎のごとく飛び込んで行った。


 悪の魔郷・上西家に待つ者は一体!?

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