2-2 爆誕! ハミ出し王子
俺は懸命に記憶の糸を辿った。
いや、辿るまでもない、この女は俺のハミ出し人生に大きな影響を与えた女だ、そうこの女は…。
「おい、ジロジロ見んなっつんだよ、クソハミッ!」
<クソハミ>
この言葉が巻き起こした悲劇を、皆さんは想像できるだろうか?
あれは俺が小学6年の頃だった。
ハミチン事件で一躍学校のスターダムにのし上がった俺は、毎日女子たちの悲鳴のような悲鳴に追われる日々を過ごしていた。
当時、俺が通っていた小学校のトイレには洋式の便器はなく、古びた汚らしい和風便器がその口を広げて児童たちの大を貪っている有様だった。
ここでひとつ皆さんに断っておきたい。
俺はハミ出し者だが、何度も言ってるように、ハミ出しには節度がある。
俺は衛生ハミに関しては、むしろ一般人よりも厳しくハミ出しを自制していると自負している。
それを頭に入れた上で聞いて欲しい。
皆さん、<クソハミ>と聞いて何を思い受かべますか??
<クソがハミ>ですよ??
そう、今、皆さんが思い浮かべたのと同じ事を、我がクラスメイト達は思い浮かべたのです。
この女、上西ゆかりの悪魔のひと言によって、あろうことか俺は無実の罪を着せられたのです。
かくして俺は、<ハミチン>の上に<クソハミ>という二つの重荷を背負って生きる事を運命づけられた。
そう、俺こそが運命の王子なのだ。
余談になるが、王子と言えば俺と同年代に甲子園を騒がせた男がいる。
斎藤佑樹。
涼しい顔で真夏のマウンドに立ちはだかり、時折ポケットに忍ばせたハンカチで汗をぬぐう。
それまでの高校球児と言えば、汗だくで暑苦しく近寄りたくない奴の代名詞であったが、彼の存在はそれを一変させた。
人は彼をこう呼ぶ。
<ハンカチ王子>。
だが、それは彼にとっては呪縛だった。
彼のハンカチは常にポケットからハミ出していたはないか!
本来彼は<ハミ出し王子>と呼ばれるべきだったのだ。
間違った名は、彼の運命をも間違わせる。
もし彼が<ハミ出し王子>と呼ばれていたなら、今頃NYヤンキースのエースとして活躍していたのは彼だった事だろう。
しかし、もう遅い。
ここに本物の<ハミ出し王子>がいるからだ。
「そう、俺こそが<ハミ出し王子>だ!」
「は? 何言ってんだよ、クソハミ。」
おっと、つい声に出てしまっていたようだ。
「そんな事より、上西さん、ほんとですか? 酷くないですか?」
「本当なのよ、あの男許せないわ!」
「私も許せませんっ! その男は女の敵ですっ!!」
おや?
俺が過去の思い出に浸っている間に、いつの間にか誰かと話している。
一体、誰だろう?
「上西さん、安心してくださいっ、私がそのハミ出し者を懲らしめてやりますっ!」
力強く拳を振り上げると同時に揺れる二つの巨大なワガママオッパイ。
間違いない!!
「マイ・ハミー、何故ここに!?」
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