1-3/END 犯人はお前だ!
俺のひと言で、公園の空気が一変した。
ブランコの耳障りな高音が、物語をクライマックスへと誘う交響曲のように響き渡り、砂場で遊ぶ子どもの声すら流麗なハーモニーを奏でているようだ。
「この中に居るって…まさか、あなたが犯人!?」
ハミーが俺に疑惑の目を向ける。
「バカモーン!」
俺はハミーを一喝すると、近所のおばちゃん、ペンキ屋のオヤジ、近所のガキの三人を順番に見回す。
「ちょっと、何なの! わ、わ、私じゃないわよ。」
おばちゃんが迷惑そうに否定する。
「オ、オラでもねぇズラ。」
ペンキ屋はもはやどこの出身だか分からない。
「う〇こ~。」
さっさと帰ってしろ。
「犯人はお前だ!」
俺の指し示した人物に一斉に視線が集まる。
「え? オ、オラ、ほんとに違うズラ、今日は仕事でこの鉄棒を塗りに来たズラ、信じてケロ!」
「いいや、こいつはペンキ屋なんかじゃない!」
「ちょっと、あなた、何を証拠にそんな事を言うの?」
「そうよあなた、どうせ出たらめでしょ!」
「う〇こ~。」
「証拠ならあるぜ。」
ビシィッ!
と音が出そうな位に人差指を振り降ろしたその先にはオヤジが塗った鉄棒がある。
「ようっく見てみな。」
怪訝な表情で鉄棒に近寄って見たハミーが驚嘆の声を上げた。
「ハミ出てるっっ!!」
そこには、支柱の色が鉄棒に綺麗に一本ハミ出していた。
「本物のペンキ屋なら、ハミ出さない。」
「許してケロ~、殺すつもりじゃなかったズラ~。」
「言い訳は署で聞きます。」
オヤジは応援に来た警官に引き渡されていった。
「あ、あの、何てお礼を言っていいか…。」
恐縮しているハミーに俺は爽やかな笑顔で言った。
「真面目だけじゃ犯人は捕まえられねえぜ、もっとハミ出してみろよ!」
「はい!」
名コンビ誕生の瞬間だ。
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