1-2 犯人は誰だ?

「もう戻ってくるんじゃねぇぞ。」

「へい、お世話になりました。」


 俺はたっぷり2時間、警察署で絞られた後、厳重注意の上釈放となった。

 ボイル・ド・エッグ氏の通称<ゆで理論>は完ぺきだったはずだ、では俺がどこかでミスをしたのか?

 出口を求めて彷徨う思考の迷路にはまり込んだ俺は、気が付くと本屋に来ていた。

 目の前にはコミックコーナーがある。

 ふと目に留まった『キン肉マン』第26巻が、無性にイラっとしたので、5cm程出させる。

 これで大いに溜飲を下げた俺は、さっきの公園へと足早に向かった。

 

 公園の規制線は剥ぎ取られ、遺体を囲っていたブルーシートも既にない。

 砂場の近くでは、マイ・スゥイート・ハミーと、近所のおばちゃん、近所のガキ、そしてあのペンキ屋のオヤジが何やら雑談している。

 近づいてみると、ハミーが自分の信条を声高に語っている所だった。


「私は世の中のルールを出す人が大嫌いなんですっ! だから、私は世の中の犯罪者を全員捕まえたいんですっっ!」


「よっ、姉ちゃん、頑張れよ!」

「偉いわねぇ~。」

「う〇こ~。」


 三人はハミーに賞賛の声を送っているが、俺は違う。


「お嬢さん、あんたにゃ無理だ!」


「あなた、何故ここに!?」

 ハミーは顔面蒼白にして怯えた目をこちらに向けている。


「そんな事はどうでもいいんだ、お嬢さん、それよりあんた犯罪者を全員捕まえるとか言ったな?」


「もちろんです、その為に警官になったんです!」


出しが許せないとも?」


「ええ、言いましたともっ!」

 ハミーの顔色は、先ほどとは真逆に真っ赤になって激高している。


「それが甘いんだよっ!」


「は?」


「いいか、世の中の犯罪者ってのは全員が出し者だ! 出し者の気持ちも理解できないで犯罪者心理が理解できる訳ないだろ!」


「じゃあ、あなたなら分かるって言うんですかっ??」


 いい質問だ、俺はその質問をさせるためにここに来たと言ってもいい。


「もちろんだ、犯人はこの中に居るぜ!」


「何ですって!?」

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