第11話 神は勇者と魔人を傍観する
少し時間は遡って、勇者と魔人の激突をテムルエストク以外で目撃している者たちがいた。
――――創造世界を管理する神たちである。
「あの、この戦い。大丈夫なんですか……?」
「あんな曲芸じみたこともできるのか、あの魔人」
「……眠い」
さっそく左肩を氷漬けにされた銀髪の少女への反応は三者三様だった。後輩神はモニターに心配そうな顔を覗かせ、先輩神は魔人の力量に感心し、人形神は眠気と戦っている。
「なんでお二人とも呑気なんですか!? 勇者が負けるかもしれないんですよ」
「今回は臨時で召喚した勇者だ。そこまでの戦果は期待してないから問題ない」
「ねえ、帰っちゃダメかなー? ボクの仕事はもう終わりだよねー?」
「勇者がやられたら、確実に街一つと賢者が一人消えることになるんですけど!?」
そのとき勇者の胴に魔人の氷塊が着弾する。当然、後輩神は絶叫した。
「マズいですって! 本当に大ピンチじゃないですか!?」
「予想以上に戦い馴れしているようだな、あの魔人は。いや、勇者が未熟なだけか?」
「体と魂を創ったボクが言うのもなんだけど、あの子は脳筋っぽいからねー。でも、いいんじゃない? きっといい教訓になると思うよ、多分」
「お二人ともなんでそんなに冷静なんですか……」
まるで勇者の戦いを実況と解説しているかのような二神の雰囲気に、疑問を感じずにはいられず後輩神も騒ぐのを止める。
「まあ、昔からこいつが創る勇者は皆、曲者揃いで、ただでやられることは無かったからな」
「本当にすごいんですか?」
「なんか微妙に失礼だなー。これでも先輩だよー、ボク」
ちぐはぐな肌の手足をゆっくりと動かす人形の姿の神。一応、ばたつかせているらしいが動きが無気力で、それが抗議かどうかも分からない。
「まず、スペックは勇者のほうが断然上だと思うよー。特に火力」
「ああ、勇者の強制破壊能力は地味に空間まで影響を与える能力のようだからな。空振りですら空間に亀裂を与えている」
「つまり後輩ちゃんの能力で、どんどん世界が崩壊するってことだー」
「……え、私が悪いみたいなことになってるんですか!? 勇者のピンチをどうするかって話はどうなるんですか!?」
「あれくらいはピンチのうちに入らないよー? あの勇者の場合は」
「え?」「ほう」
「そんな柔い勇者じゃないからね。手足を失っても、首を落とさても、全身が砕けてもまぁ、なんとかなる。一応、期待してくれていいと思うよー」
「……それはもはや魔物の類なんじゃ」
「ん、今更だね。ボクもあの勇者も立派な人外だよー?」
眠そうな異形の神は小さく悪い笑みを浮かべた。
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