5―1

いくつもの季節が過ぎて、 ミツコは数え年十八になった。

それでも相変わらず、書斎に閉じ込められた生活は変わらない。



「お姉様は学校に行ってるのに、どうして私だけ……」


無論答えは出ているのだが 、どうしても納得がいかない。

だが、どうすることも出来ないのも事実だ。


「うつぎも、今頃学校なのかしら?」


窓辺で頬杖をついて、空をぼんやり眺める。


数え年二十二になったうつぎは、今日も変わらず医学の勉強に励んでいる。

成績はなかなか優秀なようだ。



「今日は確か、上弦の月が出る日。うつぎと会う日ね。寝過ごさないよう……ゲホッゴホッ!」


突然咳が止まらなくなり、 その場でうずくまるミツコ。


最近ずっとこんな調子で、体調が優れず咳き込む日が多い。

食欲もなくなり、急速に体力が落ちていくのが自分でも分かる。


「もう……長くないのかな 、私」


絨毯に寝転がり、ひっくり返った本棚を見つめる。


ミツコは元々、体が丈夫ではなかった。

それが先天性白皮症―アルビノに起因するものなのかは分からない。


抱えている持病がいくつもあることから、長生きしな いだろうと言われ続けてき た。

もちろんミツコ自身も、長生きしないつもりでいた。



だが――


「今はまだ……生きたい」


うつぎの顔を思い浮かべる 。

かけがえのない、たった一人の友人。



「まだ、もう少しだけ」


口の端から、血が滲む。

ミツコはいつの間にか、気を失っていた。

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