第66話 選択

「俺は何がしたいんだろう?」

 思春期の子供の様に望は窓から遠くの空を見つめている。

「魔法JR山手線一周ゲーム。」

「魔法東京23区戦略ゲーム。」

「魔法日本47都道府県制圧ゲーム。」

「魔法世界征服ゲーム。」

「魔法宇宙侵攻ゲーム。」

 次から次へと展開を述べる希たち女性陣。

「人間はなんて争いが好きなんだ。こんな人間ばかりでは、この世から戦争が無くなる訳がない。」

 望は、どんどん人間が嫌いになった。

「やはり人間は滅しなければいけない。人間がいるから戦争が起こるんだ。それならば人間を滅ぼして戦争を無くせばいいんだ。」

 せっかく神様に魔法使いにしてもらったのに、強い力を持てば持つほど、この世界の本質が見えてくる。

「弱い人間は生きるのに精一杯。助け合い喜びを分かち合うが努力もしないで泣いてばかりだ。しかし豊かな人間は違う。傲慢になり自己中心的なことばかりを言い、弱者から何もかもを奪い取る。なんと身勝手な。」

 望は結果にたどり着いた。

「やっぱり人間を滅ぼそう。」

 純粋が故にたどり着いてしまった望の答えである。

「人間なのに人間を滅ぼすの?」

「そうだ。せっかく魔法使いになったんだから、人間も神も全て滅ぼして、この世界から争いを無くそう。俺はそのために英語を勉強して、禁術や極大魔法を習得して、何もかも滅ぼして、俺は燃え尽きるんだ。」

 望の答えは、悪役のラスボスがたどり着くような結論だった。

「それが俺の選択だ!」

 そして望の結論を受けて、女性陣はヒソヒソ話を始める。

「ど、どうしよう!? 望が闇に落ちちゃった!? 私も奇跡の魔法使いとして闇に落ちるべき!? それでいいの!?」

「私とベストカップルね。だって私は黒の魔法使いだもの。」

「抜け駆けはダメよ! 私も小悪魔だから望とベストカップルよ!」

「私は望お兄ちゃんが闇落ちするなら、妹として・・・・・・一緒に闇に飲み込まれます!」

 登場人物が多いので、各自の立ち位置で視点が違うので、少し面白くなってきた。

「私も堕奇跡の魔法使いとして、望と共に行動するべき!? それとも不良のヤンキーに落ちぶれた彼氏を助けるために戦うべき!?」

 希一人だけは良心の呵責に苛まれて、どっちつかずだった。

「俺は夢を叶える魔法使いだ。ワッハッハー!」

 ただし、悪い夢である。

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