第50話 現代の塔

「女狐! 悪霊! 望は渡さないわよ! 地獄にも、冥界にも連れていかせるものですか!」

「残念。隣人女では、同居女の私には叶わないな。」

「オッホッホー! 望の夢の中に住んでいる私は望と一心同体よ! 引き離せるものなら、引き離してみなさいよ!」

 希とイバラとリリスの三つ巴の戦いになった。まさに女三国志。

「すまんな。私の所の悪霊が迷惑をかけているみたいで。」

「クロムよ、リリスを引き取ってくれないか。希とイバラの挟み撃ちだけでも苦しいのに、三方向から攻められたら、俺、死んじゃうよ。」

 望は、心身ともに疲れ切っていた。

「リリス、おまえを呼び出した主だぞ。さあ、お家に帰っておいで。」

「嫌よ! あなたの所に至って登場する機会がないんだもの!」

「ガーン!」

 クロムは膝をついてショックを受けて落ち込む。

「望お兄ちゃん、今の間に逃げましょう。」

「おお。そうしよう。こんな学級崩壊に付き合っていられるか。」

 美杉はお兄ちゃんが大好きな良く出来た妹である。

「皆さん! 静かにしなさい!」

「ギョ!?」

 その時、暴れる生徒たちを教師の苺の怒鳴り声が制する。生徒たちは自分の席に着き静かに座る。

「はい。席について、静粛に。これより新しい、学校行事を行います。タイトルは「緊急避難訓練! 魔法渋谷スクランブルスクエアを突破せよ!」よ。今、流行りの異世界ファンタジーの「塔を攻略せよ!」の現代版ね。」

 ちなみに魔法渋谷スクランブルスクエアは47階建て、230メートル。屋上庭園の名前は魔法渋谷スカイ。おまけに魔法渋谷スクランブルスクエア高校は、異次元の48階にあるとしておこう。いや本家を見習って、24階と2分の1階に学校はあるとしておこう。

「魔法のほうきで飛んで逃げればいいんじゃないか?」

「魔法のほうきでの逃亡は禁止です。」

 あくまでも生徒たちは1階1階、非常用階段を降りなければいけないのだ。

「敵は、夢と希望を無くしたスマホ病の現代人のなれの果て、さまよえる渋谷人レベル1が大量にいるので、気をつけてくださいね。ちなみに屋上庭園の観光客も大量に降りてくるので、急いで下りないとパニックに巻き込まれますから、がんばってね。」

 教師からすると生徒は赤の他人。他人事のように生徒に試練を与える。

「もちろん今回も灰色の魔法使いさんと協賛です。」

 階によっては、あの灰色の魔法使いが待ち構えているのだった。

 つづく。

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