第49話 第3の女

「何者だ!? 私の望から離れなさい!」

「この女!? どこから出てきたの!?」

 望に絡みつく女が現れて、希とイバラは激怒する。

「私の名前はリリス。夜の悪霊よ。私は望の夢の中に住んでいるの。」

 現れたのは悪霊のリリスだった。

「望お兄ちゃん。いつから夢に女の子を飼っていたの?」

「知るか!? 家賃はもらっていないぞ!?」

 望の知らない間に、リリスは望の夢に住み着いていたのだった。

「私の望の夢から出ていきなさい!」

「嫌よ! どこに住もうが私の自由よ! 望は私のものよ!」

 希とリリスは言い争いをするが決着はつかない。

「どいて、相手が悪霊なら除霊すればいいだけのこと。滅してあげるわ。望は私のものよ。」

 イバラは呪い溢れる黒魔術だけでなく、逆に除霊もできるのであった。

「待ってください!? 皆さん! ケンカばかりしないで、もう少し話し合いましょう! きっとリリスさんも何か理由があって、望お兄ちゃんの夢に住み着いたはずです!」

 希たちの争いを美杉が止める。

「よくぞ聞いてくれました。聞くも涙。語るも涙の物語があるんです。シクシク。」

 美杉に感動したリリスが悲しい身の上話を語り始める。

「私は人類最初の男アダムに捨てられ、悪霊の君主サマエルとも離婚、幸せを願って3度目の結婚した魔王サタンとも破局! 私は死んでしまおうと思いました。」

「こいつ若くてカワイイ顔をして、✖3の女だったのか!?」

 第3の女リリスは、実は✖3の女であった。

「まあ、✖3くらいは、今の時代、普通よね。」

「そうそう、同情には値しないわ。私の望に近づいた罪は償ってもらうわよ。」

 希とイバラはリリスを許す気にはならなかった。

「ちょっと待った!? 話には続きがあるのよ!? 最後まで聞いてちょうだい!?」

 身の危険を感じたリリスは、続きのエピソードを語る。

「失意のどん底の私を召喚したのが、クロムだったのよ。」

「クロム!?」

 リリスを呼び出したのは悪夢ナイトメアのクロムだった。

「新しいご主人様に喜んだのも束の間。あっさりと出番が無く、私は登場する機会を失った。」

「そりゃあ、不幸だわ。」

「クロムか、クロム・・・・・・リリスが可哀そうだわ。」

 ここで初めて希とイバラはリリスに同情した。

「そこで、クロムが望に攻撃を仕掛けた時に私は望に飛び移ったの。おかげで私は生まれて初めて望と幸せな時間を過ごしているの! ああ~! 生きてて良かった!」

 こうしてリリスは望に悪霊として取りついたのであった。

「悪霊退散!」

「除霊だ! 除霊!」

 果たしてリリスの幸せは続くのだろうか。

 つづく。

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