第25話 飯が不味い

「いただきます。」

 望はイバラのおかげで寝坊もなくなり、普通の人間らしく朝食を食べる。

「望! パンを食え! ほれほれ!」

 トースターで焼いた焼きたてのパンを望の口に突き刺そうとする希。

「朝はやっぱりご飯よね。」

 炊飯器の炊き立てのご飯の入ったお釜ごと望の口に入れようとするイバラ。

「何よ!? 居候の分際で!?」

「あなたこそ隣人の分際で人の家に勝手に入ってこないで。」

 毎朝、望の家はハチャメチャでうるさかった。

「若いもんが多いと賑やかで楽しいのう、ばあさん。」

「本当ですね。長生きはするものですね。」

 望の祖父と祖母は、朝から女子高生のコントを見ているようで楽しんでいた。

「で、望お兄ちゃんは、パンとご飯とどっちを食べるの?」

 妹の美杉が心配して望に尋ねる。

「ピクン!?」

 希とイバラが戦いを止めて、望の回答に注目する。

「どちらもいらない。こう毎日、ドタバタと争われると飯が不味くて仕方がない。カップラーメンでも食べた方が、よっぽど美味しいわ。」

 望は、自分の意見を正直に言った。

「死ね! 浮気者!」

「優柔不断!」

「ゲフッー!?」

 望の回答に怒った希とイバラは、望の口にパンとご飯を詰め込めるだけ詰め込んだ。 

「ゲフゲフー!?」

 望は口にパンとご飯が刺さり、その場に倒れこんだ。

「これが本当の口は災いの元です。」

 得意げに諺を言う美杉だが、美杉が望に質問しなければ、望は窒息することはなかっただろう。


「学校に行こう。学校の方が安全だ。」

 望は、朝食の戦場から逃亡し、学校を目指すことにした。

「ピーポー! ピーポー!」

 救急車や消防車のサイレンの音が聞こえてきた。

「あれ? どこか火事でも起こったのかな?」

 望は他人事を装う。

「んん? なに!?」

 なんと! 燃えているのは高校の入っている高層ビルだった。

「な、なんで!? 学校が燃えているんだ!?」

 望は、また学校が被害にあっている。なんて災いが好きな学校なんだと内心で思った。

「仕方がない。魔法使いになって、俺の夢の魔法力で火を消して元通りにしてやるか。」

 望は、魔法のスマホを取り出す。

「変身! ウィザード!」

 望は、魔法のローブ、魔法のほうき、魔法の杖(初登場)を身に着けて、魔法使いになる。

「炎よ消えろ! 夢魔法! ドリーム・カム・トゥルー!」

 エイ! っと望は魔法の杖を学校のビルの方に伸ばして、魔法を放つ。

「バッド・ドリーム!」

 望の夢を悪夢がかき消してしまう。

「ああ!? 俺の夢が!?」

「悪夢は、まだまだ終わらない!」

 そこに悪夢クロムが現れるのだった。

 つづく。

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