第24話 夢と希望は何よりも大切

「でも、街が、美杉が!? 俺は何も守れなかった!? 何一つ守れなかったんだ!? 俺は無力だ!?」

 望の心は絶望に覆い包まれていた。

「大丈夫! 街も直して、美杉ちゃんも生き返らせよう!」

 希は、希望の心を持って、望に励ますように明るく言う。

「おお! 壊れた街も、殺された美杉も、俺の夢の魔法で元通りにしてみせる!」

 望は、希の前向きな言葉に、絶望に覆われた心に希望の光が差し込んだ。

「夢と希望は何よりも大切だ!」

 望と希の呼吸はピッタリである。

「俺の夢は、灰色の魔法使いが現れる前の平穏な生活を取り戻すことだ! 夢魔法! ドリーム・カム・トゥルー!」

「私の希望は、美杉ちゃんや町の人々が普通に笑っている世界でありますように! 奇跡魔法! ミラクル・ハプン!」

 望と希は、夢と希望の2つの魔法を発動させ、1つに合成した。

「希望魔法! ウイッシュ!」

 すると、どうでしょう。地面に散らばっている倒壊したビルの破片が上昇し、ビルの本来の元の姿に戻って行く。

「やったー! ビルが元に戻って行くぞ!」

「見て! 火と煙が消えていくわ!」

 望と希の魔法のおかげで、壊される前の街並みが復元されていく。

「あれれ? 私は何をしているんでしょう。」

「美杉ちゃん!?」

 粉々に吹き飛ばされた美杉の体が1つに集まり、何事もなかったかのように美杉が生き返った。

「良かった! 美杉ちゃん! 本当に良かった!」

 希は、泣きながら美杉を強く抱きしめる。  

「い、痛いです!? 希さん!? 骨が砕ける!? ギャアー!?」

 美杉は新たな負傷ができた。

「よし! これで全て元通りだ。」

 誰も死んでいない。何も壊れていない。全て元通りだ。

「なんだか眠たくなっちゃった。zzz。」

「ふわ~あ! 私も疲れちゃったのね。zzz。」

 望と希は、道端で真昼間から眠りについてしまった。

「ええー!? ちょっと!? こんな所で寝ないでくださいよ!?」

 慌てふためく美杉。

「魔法力が尽きたのよ。」

「イバラちゃん!?」

 そこに全回復しているイバラが現れた。

「そっちを持って。夕飯の支度があるから引きずって帰るわよ。」

「はい。重い。」

 イバラは望を、美杉は希を引きずって家に帰るのだった。


「おい!? 私の出番はどうした!?」

 あれだけ大きな事件が起こったのに、クロムの出番はなかった。

「拗ねてやる! 恨んでやる! 覚えていろよ! 私をのけ者にした奴らめ、覚悟しろ! 復讐は一つの正義だ!」

 一人ぼっち、のけ者などの悲しい気持ちになり、人は心を闇に沈めていくのである。

「私の悪夢の力で、災難という災難を呼び集めてやるのだー! ワッハッハー!」

 望たちに悪夢の日々が始まる。

 つづく。

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