第26話 雨が降る

「誰だっけ!?」

 望は、クロムの姿を見つけた。

「クロムだ!? 黒夢クロム!? 忘れるなー!? クラスメイトだろうが!?」

「そうだっけ。あはははっ。」

 たまにしか出ないと存在は忘れられる。

「まさか!? あの火事もおまえの仕業か!?」

「その通り! 一人ぼっちやのけ者にされた恨みは何をやっても許されるのだ! ワッハッハー!」

 火を放ったのはクロムだった。

「おまえが夢で火を消そうとするなら、おまえの夢を俺の悪夢が打ち消してくれるわ!」

「クソッ!? これでは炎を消すことができない!?」

 望がクロムに邪魔されている間にも、ビルの炎は広がって行く。

「レイン。」

 その時、何者かが上空で英語の言葉を発した。

「あ、雨?」

「なんだと!?」

 その時だった。空から雨が降り出した。

「やったー! これで炎が消えるぞ!」

「バカな!? こんな晴天の日に、なぜ雨が降るんだ!?」

 確かに空は晴れていた。

「人がいる!? 上空に誰か浮いているぞ!?」

「こっちに来る!? あれは!? 魔法使いだ!?」

 上空から2人の人間が舞い降りてくる。見た目は、魔法のローブ、ほうき、杖を装備しているので魔法使いだと分かる。

「何者だ!? おまえたちは!?」

「私は、水の魔法使い、水花ミナモ。クラスメイトですわ。」

「同じく水の魔法使い、水乃ウスイ。クラスメイトを忘れるとは失礼な奴らだ。」

 現れたのは、水の魔法使いの二人だった。 

「あんな奴らクラスにいたか!?」

「知るか!? 存在を忘れられている私よりも存在感は無かったぞ!?」

 望とクロムは、水の魔法使いの二人を知らなかった。

「ミナモちゃん! ウスイくん!」

 そこに希と美杉とイバラが仲良く登校してきた。

「おはよう、希ちゃん。」

「おはよう、夢花。」

 希は、水の魔法使いの二人を知っていた。

「希!? おまえはこいつらを知っているのか!?」

「何を言っているの? 同じクラスのミナモちゃんとウスイくんじゃない? どうしたのよ? 望?」

 ミナモとウスイは、どうやら本当にクラスメイトのようだった。

「クソッ!? これで勝ったと思うなよ! 私の悪夢は、まだまだ続くのだ!」

 クロムは、まだまだ、無視や、いじめられた復讐を続けるつもりである。人の心の闇は深い。これは魔法使いであっても同じである。

「変わった転校生ね。」

「本当ね。」

 ミナモと希は、しみじみと共感しあう。

「困った転校生ね。」

「本当ねって、おまえが言うな!」

 望とイバラは、分かり合うことはできなかった。

「大丈夫。私なら無視やいじめなんかされたら、相手が死ぬまで黒魔術で呪い殺すから。」

 黒の魔法使いのイバラは笑顔で怖いことを言ってのけるのだった。

 つづく。

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