クエスト 4:『事情』
――とある酒場。
デュエルというもめ合いから一時間ほどが経過し、二人は先の酒場――《ハウント》へと来ていた。
この酒場は、オンラインである他のプレイヤーとの情報交流の場として設けられたオブジェクト。
木製のテーブルやイス、カウンターのマスターや酒樽は、西部劇の酒場そのもののリアリティを醸し出している。
席に座れば、システムから会話のモード設定のウィンドウが表示されるようになっており、そこでは、SNSのような選択をするようになっている。
オンラインを利用して、他のプレイヤーと交流を深めるもよし、パーティーメンバーやギルドメンバーなどのフレンドとの待ち合わせや会話の場として使うもよし。サイレント機能もあるため、情報のやり取りの場としてはもってこいの場所。
――なので、
「レベル25!?」
目の前にいる兜無の鎧を纏った茶髪の青年――《マサ》がいきなり情報を大声で漏らしていることにも目を瞑ることができていた。
「え、ちょま、えーっ!?」
落ち着きのなく騒ぎ立てる姿は一興ものと言えるのだが、彼の視線の先にあるものを見れば、誰もが驚愕するだろう。
マサが見ているのは、このゲーム内での個人情報と言えるアバターのステータスウィンドウ。
ステータスウィンドウは、本人からの許可なくしては見れないものとなっており、たとえそれが、パーティーメンバーやギルドメンバーなどのフレンドであろうと安々と見ることはできない代物となっている。
何故かと言うと、このゲームには《オーバーロード》という変則デュエル大会があり、それを潜り抜けなければ、クリアにたどり着けない。つまり、このゲーム内に置いて周りは敵でしかない。
そのため、誰もがそう安々とステータスウィンドウを他人には見せないという暗黙のルールがこのゲームでは存在していた。
――が、
それでもなお、彼にステータスウィンドウを――《イフ》が見せているのは、別に、行為の意味がわかっていないだとか己の自慢をするためではなく、ただ単純に、彼とイフがこっちとは別の、
「お前、これマジで一人でやったのか?」
ウィンドウを眺めながら半信半疑の状態で問うマサ。
理解が追い付いていないようなのだが、それも仕方ない。
この世界は一人では攻略不可能なゲームなのだから。
周りと協力しなければクリア困難なクエスト。肝の《オーバーロード》は対人戦。
攻略のために手を組んでも、いつかは必ず敵同士になるこの交流関係にイフは微笑してしまう。
この世界では結局、信じられるのは己の力のみだと、誰かが訴えているようだった。
そして、マサの問いに対して、そこから自然と導き出される答えが一つ。
少しの沈黙があり、考えがまとまると、イフは注文した酒場では似合わないコーヒーカップを置いて、口を開く。
「俺が、誰かと交流を持てる逸材に見えるか?」
「あ~。えっと、その…………なんか、ごめん」
――この野郎……。
納得がいって、気まずくなったのか謝罪をするマサ。
なのだが、イフにとってはその優しさが何故だか不思議と痛かった。
ほんと、周りに聞かれなくて良かったと、つくづく思う今日この頃だった。
「それにしても……」
再びイフのステータスウィンドウに目を落とすマサ。そこに、考え深いものが並んでいた。
《Imaginary・Online》、世界の
通常のゲーム通りにプレイする《スタンダードモード》と、己の
イフのはまさに、後者の《ユニークモード》で設定されており、それはマサも同じで、《ICG》の醍醐味のため頷けるのだが、問題は後半にあった。
ステータスの順番として、最初にアバターネームとレベル、種族や性別、武器・装備の名前があり、その下にアビリティ、それより下に、ランキングやimv、金貨(ギル)やキャラパラメーターなどが表示されている。
その中でも、武器・装備やそのアビリティ、imvなどの《ユニークモード》ならではのものや、ギルにランク、キャラパラメーターやスキルに目が行ってしまう。
それはどれも、異様な空気を醸し出す。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
《ステータス》
An:《イフ》 Lv.25
HP:6250/6250
Sex:《male》
Type:《
Weapon:<大剣>《アクターソード》
<アダマント・クリムゾン・タイタン/クリティカルソード>
↳Ability:《
Armor:《蒼黒紅一式》
↳Ability:《
imv:25000
Rank:《Error》
↳Guild:
Gill:105000G
Skill:
↳Unique:《》《》《》
↳Extra:《大剣無双》
Block:
《Parameter》
STR/Strength:375
DEX/Dexterity:375
DEF/Defense:125
AGI/Agility:375
INT/Intelligence:125
MND/Mind:125
LUK/Lucky:125
CRI/Critical:375
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
「……」
ただひたすらにイフのステータスと睨めっこしているマサ。
何度も見返し、突かれてきたのか視線をイフへと向けてみる。
そこには、呑気にコーヒーを口に含む姿があり、現状を本当に理解できているのだろうかと眉を顰めてしまう。
呆れながらに、これで最後だと、視線をステータス画面へと戻す。
そこから言えることがあるとすれば……まずレベルから。
諄いようだが、このゲームを
不可能だと誰もが確信していた事実なのだから。
だが、やったのがイフなのなら有り得なくはないと、自然と納得してしまうのがおかしな話。
次に、《ユニークモード》により作成したユニークウェポン、〈大剣〉《アクターソード》。正名〈アダマント・クリムゾン・タイタン/クリティカルソード〉。
アビリティは《
内容に関しては次ページを見なければわからないが、明らかなのは、イフの背中にその大剣が装備されていないということ。
おそらく、建物の中のため、という単純な理由ではなく、周りが敵だらけのこの世界で、みすみす武器をばらさないようにという心意気で、装備を解除しているのだろう。
まぁ、マサも同じ考えで今は装備していないのだが。
続いて、
装備は、目の前にいるイフの格好。黒コートに黒のズボンと黒革のブーツという、黒一色でまとめられた服装に、デザインとして名前通りの青や赤のラインが入っている。
アビリティに関しては、大よその見当がついているためスルーする。
――そして、
「imv、25000……」
最初目にした時、「嘘だろ!?」と叫んでしまうほど、信じられない光景が一つ。
――imv:25000
imvとは、想像力を数値化したもののことを言い、このゲーム内に置いて最も重要なものの一つ。
imvによって、《ユニークモード》の設定上限が大きく左右され、武器・装備、アビリティ、ユニークスキル・エクストラスキルなどなど。それらの作成時に大きな枷が働くのだ。
武器で言うならば、装備条件の難易度が、ユニークスキルやエクストラスキルで言うならば、他のプレイヤーと被っている場合に、効果に個人差が生じる。
補足として、通常の人のimvは200~300だと言われている。
だが、目の前にある光景は、それを優に百倍は超えていた。
「……」
あまりのことに驚きを隠せないマサ……なのだが、ぎりぎり呑み込めることができた。
確かに驚きはあった。けれどまた、イフだからという理由からか、許容範囲内として納めれたのだ。
まぁ、理由はそれだけではないのだが。
「Rank、エラー……」
――エラーね。エラー、エラー……エラー?エラー!?
念押しのように単語を繰り返すマサ。
それもそのはず、だって有り得ないことが連続で起き続けているのだから。これはその第二幕。
イフのランキング。
普通なら何位であろうと、ステータスには表示されるようになっている。
それが上位であればあるほど、町中の電子掲示板やオンラインに表示されるようになっている。
――のだが、
イフのは、システムによりそれらが一切遮断されており、閲覧不可かランキング制度から完全に除外された位置にあった。
わかったのは、イフはギルドには入っていないということ。
「そんで、ギルが10万越えって……お前、なんか使うことないのか?」
驚きの疲れか、それとも単なる皮肉で嫌味なのか、マサの口調は少し呆れ気味だった。
「ん?ああ……俺はただ、ほんの少しの幸せを噛み締めて生きていけるだけで、十分だからなぁ。特に欲しいものとかはねぇな」
「物欲がないねぇ」
「そうでもないさ。というか、俺ほど強欲な人間もそうはいないと思うけどな」
「そうか?お前が欲を漏らしたとこ、見たことねぇけど。あ、あと愚痴も」
「俺は大抵のことは全部、諦めと受け入れでどうにかするからな。だから愚痴とかは溢さないし、思いもしない。それが当然のことだと、思い込んで、受け入れるからな。欲に関しても同じく……だけど、本当に欲しいものにだけは、どんな手を使ってでも手に入れようとする。そんな俺の諦めの悪さは、誰にも負けないという自信がある」
「へぇ~……」
内心、マサは感心するも、後半部分は本気でやりかねないと、少し引き気味になってしまう。
イフの無欲さと人柄について、改めて再確認したところで、ステータスの方へと目を移し、最終確認をするマサ。
最後に記載されているのは、スキル覧とパラメーター表示。
スキルに関しては、ほとんど空欄で、唯一、エクストラスキルだけが《ユニークモード》により埋まっていた。
パラメーターはソロのためか、筋力、命中力、敏捷性、クリティカル重視に割り振られており、それ以外も均等に割り振られていた。
「ふむ……」
一通り見終わり、まとめると、このステータス覧には違和感しかないということだった。
レベルが25だというのに、スキル覧がほとんど埋まっていない。ランクはエラーで金はある。
そして、何よりも目を惹くのが、ユニークウェポンのアビリティと装備の間。
そこに二行ほどの空欄があった。
そこに何かがあることは確かなのだが、ステータスを見せてもらっているだけでも貴重なのに、これ以上の詮索をするのはよくないと、思考を停止させる。
「なぁ?」
「ん?」
「次のページも見ていいのか?」
「ああ、問題ねぇよ?」
「わかった……」
ステータスウィンドウの次ページへと移動させるマサ。
だがその前に、
「……?」
イフの視界に一つのウィンドウが表示される。
どうやらそれは、ステータスウィンドウのようで、差出人は目の前にいるマサだった。
「俺だけ見てるのもあれだろ?」
「そだな」
「……」
相変わらず呑気そうにやり過ごすイフ。
呆れが絶えないそんな中で、視線を次ページへ移動させたイフのステータスウィンドウに変更する。
「……っ!」
そこにあったのはやはり、異様な光景でしかなかった。
ステータスウィンドウの次ページ。
普通なら、スキル内容についてと、武器・装備のアビリティなどのテキストが表示されている。
けれど、目の前にあったのは、その中でも一味も二味も違う、誰とも被りようがない、もしかしたら最強と呼べるほど、オリジナリティに満ち溢れたものだった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
《ステータス2》
Skill:
↳Unique:《》
《》
《》
↳Extra:《大剣無双》
無条件で大剣装備可能とする。
(ユニークウェポンも含む)
Weapon:〈大剣〉《アクターソード》
〈アダマント・クリムゾン・タイタン/クリティカルソード〉
装備条件:プレイヤー《イフ》のみ装備可能。または《イフ》を含め
たパーティー・ギルド。
特徴:紅(あか)や黒で彩られた大剣。刃の表面が竜の鱗で覆われており、
所々に魔石が組み込まれている。切れ味抜群、
耐久度に自信あり。
↳Ability:《
・装備時:HP25%上昇
・HP1減少ごとにステータス3倍
+攻撃時追加ダメージ3000(1回のみ)
※この効果発動中の攻撃は全て、
クリティカルヒットにする。
↳Attribute:火・闇・無
↳Rank:A
Armor:《蒼黒紅一式》
装備条件:プレイヤー《イフ》のみ装備可能。または《イフ》を含め
たパーティー・ギルド。
特徴:黒のコート、黒のズボン、黒革のブーツでまとめられた服装。
デザインとして青や紅のラインが入っている。
↳Ability:《
・自動回復率 5秒:15%、10秒:25%、20秒:50%、
50秒100%
・ステータス上昇値:追加2%
↳Attribute:無
↳Rank:A
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
「なぁ?」
「……」
ステータス覧を見終わり、イフへと声を掛けるマサ。
だがそこには、無言でステータスを未だに眺めている姿があった。
「おーい」
「……ん?ああ、悪い」
イフの考え込んでいる姿に、マサは『そんなに大していいものでも載っていたのだろうか』と思ってしまう。
「どうかしたか?」
「いや……そりゃこんなもん見せられたらな」
少し驚き気味のイフ。
見終わったのか、こちらへとステータスウィンドウを指し出す。
そのままウィンドウを見てみると、合点が行った。
「あ~……まぁそれはお互い様だろ」
「そう、なのか?」
「そうだよ」
首を傾けるイフに、マサもステータス覧を指し出す。
そして互いに、自分のステータスを眺めて比較する。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
《ステータス》
An:《マサ》 Lv.37
HP:7250/7250
Sex:《male》
Type:《
Weapon:<双剣>《ブレイズエッジ》
↳Ability:《火神龍星》
Armor:《黄金紅》
↳Ability:《疾風迅雷》
imv:5000
Rank:2
↳救世屋(メサイヤ):8
Gill:126000G
Skill:
↳Unique:《》《》《》
↳Extra:《》
Block:
《Parameter》
STR/Strength:481
DEX/Dexterity:481
DEF/Defense:481
AGI/Agility:481
INT/Intelligence:185
MND/Mind:185
LUK/Lucky:185
CRI/Critical:481
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
《ステータス2》
Skill:
↳Unique:《》
《》
《》
↳Extra:《》
Weapon:〈双剣〉《ブレイズエッジ》
装備条件:プレイヤー《マサ》のみ装備可能。または《マサ》を含め
たパーティー・ギルド。
特徴:金色の刃先に竜のような紅のラインが入った双剣。剣先が波形
のように伸びており火龍神の魂が宿っていると言われている。
↳Ability:《火神龍星》
・相手を永続で火傷状態にする。
(攻撃を与える度に効果と与えるダメージが増していく)
↳Attribute:火・無
↳Rank:B
Armor:《黄金紅》
装備条件:プレイヤー《マサ》のみ装備可能。または《マサ》を含め
たパーティー・ギルド。
特徴:紅のラインの入った金色の兜無の鎧。肩から背中にかけて伸び
る白いマントは高貴さを際立たせる。
↳Ability:《疾風迅雷》
・攻撃をするたびにリーチが短くなる。
+一定値を超えると体に風の壁と雷を纏って触れたもの
を状態異常にする。
・相手の状態異常と同じ属性の攻撃の威力を上げる。
↳Attribute:風・雷・無
↳Rank:B
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
「まさか、お前が
コーヒーカップを手に取り、口を開くイフ。それはマサのステータスについての事。
マサのステータスからわかること。それはいろいろあるが、一番はランキングトップを走っている事実――《
「そういえば、言ってなかったけな」
ものともしないその言い分に、イフは少しため息気味になってしまう。
この『凄い』という言葉だけではかたずけられない事実を、お前の方が本当に理解しているのだろうかと。
「しかも、ギルド共々……」
そしてその事実は、個人だけではなく、マサを含めたギルド共々だった。
「すげぇだろ?」
自慢げに笑顔をつくるマサ。
ただイフは、その事実が何気に気にくわないので平然とからかうことにした。
「この程度かって笑いそうになった」
「酷!?」
「冗談だ」
――半分な。
そう、半分。
この確固たる事実に目を向けて、当然だと言わんばかりのことなのに、わからなくもないのに、思ってしまったこと。
「逆に、お前は異常者にもほどがあるだろ」
「……」
言い返すように吐かれる言葉は、漠然とした事実だった。
「ユニークのほとんどがオリジナルに満ちている。こんなの被りようがねぇじゃねぇか。最強だよチートだよクソくらえよ~……っ!」
「へへっ」
「男らしく答えれば何でも許されると思うなよ!?」
羨まし気な半泣き状態からツッコミという切り替えの早いマサ。
そのことに面白味を感じながら、イフはフォローに回ることにする。
「まぁお前だって、ユニーク内容凝ってるじゃないか」
「俺じゃあれが限界だったけどな」
「プ~クスクスクスクスクス」
「お前―っ!」
――上げて落とす。これが俺のスタイル。
「さて……」
たわいもない会話が終わり、イフは本題へと移行する。
「で、俺に話ってなんだ?」
本題。それはこの会話の場を設けたマサについての事。
このゲームで再開し、話しかけたのはイフだったが、誘ってきたのはマサだった。
そしてその本題に入るには、ステータスを見せてからということで、この流れがあったのだ。
空気が変わるのを感じながら、覚悟が決まったのか、マサは意を決して答えた。
「率直に言う、俺の仲間になれよ」
「やだ」
「即答!?」
「当たり前だ。俺はソロだぞ。というか、お前がギルドの頭張ってたのか……」
「頼むよ~……」
『藁にもすがりたい』というマサの弱音がひしひしと伝わる。
それは切羽詰まったお願いだった。
「何か事情でもあるのか?」
仕方なく用件は聞こうとするイフ。
テーブルに突っ伏し、イフの言葉に気分が和らいだのか、マサは口を開く。
「ちょっと今、ギルドメンバーがバラバラで……」
「ギルドメンバーって、全員?」
「うん……」
「何人?」
「十人」
「へぇー、10人もよく集めたな」
「まぁ、オンラインだし、ネットでなら誰とでも、いろんな人と繋がりを持てるからな」
「なんだ(ソロでやっている俺への)嫌味か」
「ちげぇよ」
「結局、俺に何の用なんだ?」
ギルドメンバーがバラバラ。
だから俺に何をしろと言うのか。それが全くの不明だった。
そのため、聞いてみるのだが、そこには真顔でこちらを窺うマサがいた。
「俺を鍛えてほしい」
「……」
どうして俺なのか。
そう問おうと思ったが、それが何となくわかっていた。
たった一人でこのゲームを進めてきた。
その実績から、何か得るものがあるのではないか、加えて制作者ということもあるのだから、声を掛けない手はなかったのだろう。
――なので、
「何故に?」
どうして戦う破目になったのかを聞いてみる。
言いづらそうに固まると、マサは変な汗を流しながら答えた。
「……ナンバーワンギルドのリーダーと2nd
――2nd
それは
――なのだが、
「Oh……どうしてそんなことに」
本当にどうしてそんなことになったのかが皆無だった。
再び様子を窺えば、マサは考え深そうに答えた。
「引き抜きだ」
――引き抜き。
それはギルドからメンバーを引き抜くという文字通りの意味。
現状からするに、マサはランク2。
そのマサがいるギルドがギルドランキングでも8位というのだから狙われても不思議じゃない。
マサの状態を見るに、現状は深刻なようだった。
そこに納得がいくが、まだその発展については何も触れていない。
するとようやく、マサはそのことについて口を開いた。
「この間、あっちから
マサの回答は案の定のものだった。
先の会話で、メンバーがバラバラ。それでいて2nd
なので、やっとこの状況に合点が行った。
「あー、なる(ほど)」
「下ネタ返事はやめようね」
「いや、そう捉えるお前もだろ」
本当にそんなつもりはないイフだった。
「そんで?ギルドメンバーと何が賭かってるんだ?それ相応の対価もなけりゃあ、そんな無謀なことはしねぇだろ」
こちらがギルドメンバーを賭けているのはわかっている。
だが、相手が何を賭けているかについては、全く見当がつかなかった。
「ユニークスキル……」
それは意外且ありえなくはいものだった。
この世界において、ユニークスキルにはそれ相応の価値がある。ものによっては、裏でリアルマネーの取引があるくらいに。
ただそれでも、そのほとんどが悪質なため、そうそうに受けないのがセオリーだった。
「マジかよ……なんでそんな勝負受けたんだよ」
「相手がしつこくて」
「どして?」
「わからん……けどなんか、ハンデをつけてきてさ」
「ハンデ?」
「自分は武器・装備のアビリティを使わない、一発でも食らわせることができたら俺の勝ちでいい」
「おいそれ絶対なんかあるぞ」
「……」
「穴としては、そいつのユニークスキルか、レベルによるステータスの差か……とりえあえず、お前に勝てる見込みはないな」
――もう現に負けちゃってるけども……。
「諦めろ、とは言わないんだな」
「お前の仲間の運命がかかってるからな。無責任なことは言えん」
「お優しいこって」
「手伝うとは言ってないけどね」
「リアルでなんかおごるから」
「よし受けよう!」
「現金だなお前……」
そうやって、二人の修業が始まった。
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