27
「あんたさぁ、女子高生だったでしょ?」
突然、話が変わった。
現世での記憶が蘇る……。あの時、制服を着ていたから?
「あっ、はい。清蘭高校三年の橋本世奈っていいます」
「清蘭? ちょーレベル高いじゃん! 将来の道は開けてるっていうのに、なんでまた飛び込み……、あー、心の声、気にしないで!」
なんだか可笑しい。私の傷に触れないよう気遣ってくれてるのだとすぐに分かった。
「ねぇ、世奈! この状況って一体なんなんだろう? 世奈は死んだのかもしれないけど、私はホームに立ってただけなんだよ」
いきなりの親近感が、なぜか嬉しい。世奈と呼んでもらえるのは久しぶりだ。
だけど、ホームに立ってただけなのに、なんで私と同じ世界に居るのだろう? ここが天国ではないとしたなら、死ぬ間際に前世の記憶でも辿っているのだろうか? おそらくは、私が第3夫人を巻き込んでしまったことに間違いはない。
これ以上、迷惑を掛けてはいけないと思った。第3夫人の役に立ちたいと思った。
私なりの見解を、全て話さなければ!
「正直、私は元の世界から消えたいと思ってた人間なので、ここがどこでもいいって思ってました。最初は天国かなと思ったけれど、なんとなく昔の中国とか韓国とか……、どこかアジア系の国かなって思ってます」
「やっぱり⁉︎ 私も韓国時代劇の世界に似てる気がしてた!」
「不思議と会話は通じるみたいなんですけど、書物は漢字のみで読み方も違うみたいです。お祈りを唱える時も口パクでやってました」
第3夫人が手を叩きながら、嬉しそうに笑っている。私の話に、興味を持ってくれたようだ。
「そうそう! 私も、サインしろみたいなこと言われたから余菜って書いてみたの、ヨナって呼ばれるから。そしたらチヌが医者呼んだりしてもう大変だった」
余菜って……、適当過ぎる!
思わず笑ってしまった。
誰かと一緒に悩み、考えることが、こんなに楽しいことだとは思わなかった。私は、究極の状況を共に過ごしている第3夫人に、何か特別なものを感じていた。
「あの、第3夫人は学生さんだったんですか?」
「その第3夫人っていうのやめてくれる? だいたい3番目とか、バカにし過ぎだから」
確かに! と思いながら、また笑ってしまった。ストレートに感情をあらわにする第3夫人が、なぜだか可愛らしく見えてくる。
「私は成瀬美咲。銀座の宝石店に勤めてて、あの朝も出勤しようとしてたの」
なるせみさきさん。
私のせいで、出勤できなかったんだ……。きっと他にも、学校や会社、大切な約束に間に合わなかった人がたくさん居るんだ。
「そうでしたかぁ……。あの、美咲さん、本当にご迷惑お掛けしてすみませんでした」
「いやっ、ここで謝られても……。なんか変でしょ!」
確かに、謝って済む問題ではない。私は、どう償えばよいのだろう……。
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