第30話 なんでこうなった。新しい迷宮への行き方(改稿)

 翌日、空港の駐機場は大騒ぎになっていた。

 パステルが手配した業者や学者、王立魔法団まで総動員でマクガイバーが持ってきた地図の分析や掘削の轍順を話し合っていた。

「おいおい、本気で探す気か。ただ魔法をぶっ放す猫の世迷い言かもしれねぇのによ」

 私の肩に乗ったマクガイバーが笑った。

「いえ、手がかりがある以上、探すのが元冒険者のやる事です。場所はカリーナの北五十キロ、深度約二千で決まりでしょう。

 折りたたみ椅子に座ったパステルが、地図をみながら赤く×印を付けた。

「では、その場所を中心に五十キロ四方を掘ってみよう。深度は二千位だったな」

「はい、お願いします」

 カリーナに詰めている王宮魔法使い建設部の事実上のリーダーである、リートが小さく敬礼して、二十人あまりいる部下と共に秘奥の魔法で一丸となって飛んでいった。

「よし、行くよ!!」

 犬姉が笑い、すでに発進準備が出来ていたブラックホークに、私とビスコッティ、キキにマルシルが飛び乗り犬姉は右側の操縦席に座った。

「そういえば、リズに確認しないと……」

 犬姉は無線のチャネルと切り替えた。

「犬姉。リズ、機材は届いてる?」

『届いてるけど寒い、早くしろ!!』

 犬姉が笑みを浮かべた。

「よし、パトラ。テイクオフ」

「あいよ」

 助手席のパトラがディスプレイのボタンいくつかタッチして、エンジン音が高まった。

「行くよ!!」

 犬姉の操縦でヘリは前傾姿勢で滑るように離陸した。

 低空をバタバタと飛んでいくいくうちに、目標地点に到着したようで王宮魔法使い建設部の皆さんが魔法陣を囲んで、集団合成魔法という最高難度の魔法にチャレンジしていた。

 二人でやる合成魔法といえば合成魔法だが、誰一人呪文のタイミングを外してはならず、日頃から十分なトレーニングが必要だった。

『リズより犬姉。この深度だとなにが起きるか分からない。巻き込まれないようにだって』

「誰にいってるんだって返してやれ!!」

 犬姉が笑った。

『始まるよ、三分で終わるって。出なかったら、その時はその時で!!』

 リズが無線で笑った。

「その時はその時でしょ。そういうもんだ!!」

 犬姉が笑った。

 地面に書かれた巨大な魔法陣が光り輝き、強烈な魔力の物理干渉でヘリまで大きく揺れた。

「おっと、今のはちょっと凄かったな。行動を少し上げてホバリング」

「分かった」

 ヘリが高度を上げてる間に、魔法は完成し派手に光が散った。

 地面……というより、ほぼクレーターのようになった穴の底に、明らかに人工物と分かる物が顔を覗かせた。

『こっからじゃ見えないけど、なんか出た?』

 リズの無線の声が聞こえた。

「出たよ、お手柄だね。後はパステル隊長待ちだけど、離陸した?」

『二号機でもう向かってる。いわれそうだから聞いておいた。先に人が入れそうな穴を空けていいかって聞いたら、ボロボロかもしれないので無茶はしないで下さい。可能ならお願いしますだって。こっちはもう土木工事現場だよ。地下水の浸入を抑える壁は作ったけど、排水ポンプの調子がイマイチなんだよね。この!!』

「戦場だと解釈したよ。忙しいところ悪いけど、総員待避。穴開けやるよ」

『もう待避してるよ。好きなだけミサイルぶち込め!!』

 リズが無線で叫ぶと、ヘリは空中停止の状態からいきなり全身して急上昇した。

「パトラ、いくよ。全ヘルファイアアクティブ。ディセイブルから、エネイブルへ」

「了解。ヘルファイアオールクリア。十二発イケるよ」

 パトラが笑った。

「よし、そうこなきゃね。照準はあそこだ、ちょうど地面に顔を出した辺り!!」

 ヘリコプターの正面にクレーターが迫り、ほとんど真上から急降下で犬姉がミサイルを一気に発射し、そのまま急上昇してちょっとだけ背面飛行して速度を殺した。

『すげ……。ヒビが入っただけだよ。せっかくあたしがヘリポート作ったんだから、ちゃんと下りなよ。積雪量が半端ないよ』

「あれだけぶち込んでヒビだけって、どれだけ固いんだ。まあ、いいや。こっちの役目は終わったから着陸するよ」

『真ん中に『1』って書いてある場所ね』

 ヘリは急激に速度を下げ、リズの指定通りの場所に下りた。


 ヘリが着陸すると、私たちはサイド扉を開けて機外に飛び出た・

「こ、これはしゅごい……」

 凄まじい深さまで削られた地面を王宮魔法使い建設部の皆さんが魔法でバリバリ整備していた。

「こんな冒険始めてです。地下二千メートルの迷宮なんて……」

 マルシルの目が輝いていた。

「これ、いつ探索可能ですか。歩きで下まで行くのは、現実的ではないでしょう」

 キキが半ば呆然と呟いた。

「計画では、鉱山でよく使われているエレベータを設置するみたいだよ。リズが事前に簡易滑走路も作ったはずなんだけど……」

 私がリズをみると、親指を上げて合図された。

「お得意なんだけど、除雪の魔法でバリバリ雪を飛ばして、整地の魔法で出来るだけ平らにした。距離は二千三百メートルが限界だったけど、C-17なら大丈夫だし第一陣はもう離陸したみたいだから、すぐに飛んでくるよ!!」

 リズがいった途端轟音が聞こえ、大型輸送機がこちらに向かって降下してくるのが見えた。

「なにせ、すぐそこのカリーナから飛んでくるだけだから、金が掛かってどうにもならんけど、この雪じゃ陸路が全く使えないからね。街道をいくのも、気合い入ったど根性商人だけだし、なに気象実験なんかやりやがったって感じだよ」

 リズが笑ったとき、輸送機は除雪しただけのような草地に着陸した。

 輸送機は逆噴射の音も高らかに進み、滑走路端の展開上でくるりと向きを変え、荷物の積み下ろしを始めた。

「……な、なんか、予想以上に大事に」

「だって、歴史的発見だもん。カリーナだって本気だよ」

 リズが笑った。

「よし、諸々が完成しないと始まらないね。あのテント村が当面の宿舎になるから、少し休もうか」

 私たちは、テントが無数に並ぶエリアに移動した。

「テントの割り振りはどうなっていますか?」

 キキが笑みを浮かべた。

「早い者勝ち。決めたら名前が書いてある黄色い旗を立てて、いっておく。作戦の全指揮権はスコーンにあるからね。チーム・スコーンのメンバーが見つけたんだもん。辿っていけば、スコーンにあたるでしょ。失敗したら大変だぞ!!」

「は、早くいって!!」

「パステルも事前にスコーンに承認を通すの忘れたね。それを受理しちゃった事務も事務だけど。あとは、先生の一声で実施だよ。まあ、カリーナあるあるだから!!」

 リズが笑った。

「頼むよ、パステル……。いきなり事が始まって、なにかと思って焦ったよ!!」

 私は苦笑した。

「そりゃ驚くでしょ。パステル隊長にお説教しておいた?」

「ビックリしちゃって、お説教どころじゃなかったよ。パステルもまさかって顔で固まっちゃったし」

「そりゃイカンな。ダメなものはダメって教えておかないと!!」

「そうだね……はぁ、朝からびっくらこいた」

 私は笑った。

「師匠、私からお説教しておきます。苦手ですからね」

 ビスコッティが笑った。

「ま、まあ、程々に。あんまりビシバシしないでね」

「私がビシバシ引っぱたくのは師匠だけです。じゃないと、止まらないので」

 ビスコッティが笑った。

「なんでだよ!! まあ、いいけどね……」

 私は苦笑した。

「ほい、それじゃテント選び開始。適当な間隔でキャンファイアはずっと焚いておくから、迷ったら参考にして!!」

 リズが笑ったとき、もう一一気ブラックホークが低空で通過して、ヘリポートに着陸した。

「おっ、噂のパステル隊長の到着だよ。本人が一番焦ってると思うよ。通ると思わなかった提案が、いきなり通っちゃったりして」

「そりゃそうだ。さて、テント探ししよう」

 私は黄色い旗を持って、一つ目のキャンプファイアから、適当に離れたテントの脇に黄色い旗を立てた。

「責任者なら、ここしかないよ。現場や滑走路にヘリポート。全てが見えるもん。騒音が酷いのは関係ないし。電気はあるの?」

「あるよ。大出力魔道ジェネレータが完成するまでは、ショボいこれだけど」

 リズがテント脇に置いてあった小型ジェネレータを起動した。

「うん、ノートパソコンが使えればいいよ。私はここね」

 みんな遠くまで探しに行くかと思ったら、私の周りのテントを次々選んでいった。

「遠慮しなくていいのに」

「師匠、遠慮だけはありません。誰が護衛するんですか。片腕としても、離れませんよ」

 ビスコッティが笑った。

「そっか、まあ本来は危険地帯だからね。でも、この騒ぎで近づこうとするバカがいるかな……」

「甘いです。こういう場所だからです。師匠の島で訓練だか休暇だかを楽しんでいたファン王国海兵隊の隊員も召集されて、防衛網を築いていますので、簡単には近寄れないと思いますよ」

「えっ、あの陽気な人たちまで来ちゃったの!?」

「はい、大家が大仕事するなら、店子が助けに行かなくてどうすると。もう三日以上前から、空挺降下して潜んでいるそうです」

 ビスコッティが笑った。

「あれま……。空挺降下ってなんだっけ?」

「輸送機からパラシュート一つで降りてきたんです。私はみましたがさすがに上手かったですよ」

 ビスコッティが笑った。

「へぇ、気合いが怖い」

 私が苦笑した時、どこか遠くから発砲音が聞こえてきた。

「さっそく、なにか網にかかりましたね。この通り出来る限りは防御しますが、あくまでも自衛を忘れずに」

「エラい場所にきたなぁ」

 私は苦笑した。

「全くです。待っているのですが、パステル隊長来ませんね。ビビって出てこられなくなりましたか。ちょっと探してきます」

 ビスコッティが私から離れ、パステルを呼びながらどこかに向かっていった。

「やれやれ、私はテントに入るか」

 私は自分のテントに入り、内部を確認した。

 明かり取りに小さな魔力灯が天井にぶら下がっている以外は、特になにもなかった。

「なるほど、シュラフは自分のやつを使えって事か。まあ、共用はしたくないね」

 私は背嚢からシュラフを取りだし。床に広げた。

「テントは寒冷地用か、当たり前だね。さて、日誌でも書くか」

 私はノートパソコンを広げ、エディタを開くと、カタカタ打ち始めた。


 しばらくすると、パステルがテントに入ってきて、珍しく元気なく謝ってきた。

「ビスコッティに、こっぴどくやられたな。全く、自分だって散々やったのに。人の事いえたもんじゃないよ。何度クビにしようと思ったか!!」

 私は笑った。

「そ、そうですか。二度はやりませんのでお許し下さい」

「そのセリフ、ビスコティから死ぬほど聞いた。いいんだよ、死者さえでなければ、私がカバーするから」

 私は笑った。

「はい……まさか、こんな動きが早いとは」

「うん、いきなりで椅子から転げ落ちたよ。ビスコッティが困った顔で『承認待ち』の書類がこんなに……とかいうから、何かと思ったらこれだもん」

 私は笑った。

「ああ、若いうちには遊んでおけ。変な杖を使ったりしてな」

 私の肩に乗っていたマクガイバーが笑った。

「変な杖ね……私は杖なんて滅多に使わないからなぁ」

「あると便利だぜ。慣れちまうと、なしじゃいられなくなる。まあ、病気かなんかと同じだな」

 マクガイバーが笑った。

「病気ね……。まあ、いいや。気にしないでいいよ。費用は学校が出すらしいし、それだけ重要な遺物と認められたんだよ。パステル隊長がいなかったら、得てこない場所だよ。自信持って。それじゃ、隊列の先頭を歩けないでしょ」

「はい、分かりました。それでは、壁の硬さがかなりのものと聞いています。入れなければ始まらないですね……」

 パステルがなにか考える表情を浮かべた。

「うん、ヘリからバカスカミサイルを一斉発射したけど、ヒビしか入らなかったよ」

「いえ、ヒビが入ればまだ手はあります。隙間に爆薬を仕掛けて爆発させるとか、壁さえ壊れれば、中には入れますので……」

 パステルがポケットからC-四-4を取り出した。

「いつものプラ爆ね。開くかな……」

 はい、かなり強力な爆薬なので、ヘルファイアで多少なりとも効果があれば、あるいは上手くいく可能性があります」

 パステルは頷いた。

「よし、やってみるか」

 私は胸のポケットに常に入れてある、無線機のインカムのトークボタンを教えた。

「ビスコッティ、これから迷宮の壁のヒビに発破を掛けるけど、作業可能?」

『ずっと見ていますが、下でなにかやっている事くらいしか分かりません。穴が深すぎます。建設部の皆さんも、この地圧だと危険だと方針を変えたようなので、しばらく待って下さい』

「分かった、よろしく」

 私はインカムを外した。

「今のままだと地圧が掛かりすぎて危ないから、なにか策を考えるっていってるよ。待った方がいいね」

「はい、分かりました」

 パステルが頷いた。

「ところで、アホなこと聞くけど『浮遊』の魔法は使える。宙に浮くヤツ」

「はい、冒険者をやっていた時に、落とし穴の罠回避によく使っていましたよ」

 パステルが笑みを浮かべた。

「あれって……気合い入れて使えば、十人もいればカリーナの校舎くらい宙に浮くってした?」

「はい、その程度は……。

「多分、やるよ。他に手がないもん。迷宮の建物ごと地表に上げるとか」

 私は笑った。

「そ、そんなバカな!?」

「これだけ巨大な穴を空けたんだから、迷宮だけ取り出して埋め直す事くらい、王宮魔法使い建設部のパワーでやっちゃうよ。一撃で穴を開けた時に確信したよ」

 私は笑い、都合のいいところで、無線のやり取りが激しくなり始めた事が、インジケーターの動きで分かった。

 私はインカムをつけ、ビスコッティが呼んでいる声を拾った。

「なに、どうしたの?」

『はい、師匠。どうもこのままではこの辺り一帯の地盤も危ないので、迷宮だけ取り出すという離れ技をやるようです。みんな、最終承認を待っています』

「承認した。それしか手がないでしょ。貴重な迷宮をぶっ壊さないように」

『はい、分かりました。皆さん、承認されました。作業に掛かって下さい。くれぐれも慎重に』

 これを期に無線のやり取りが猛烈に早くなった。

「ビスコッティ、具体的にはどうやるの?」

『はい、まずは邪魔な土砂を全部退け、迷宮だけを浮かばせて地表に置く。空けた穴は即座に塞ぐそうです』

「分かった。リズ、用意した機材のうち、特殊チョークあったでしょ。あれで……」

『分かってる。あれで迷宮を置くポイントを描けっていうんでしょ。もう、パトラが超速で書き上げてるよ。これで、あたしが魔法で状態固定すれば壊れないってね。首尾は分かってるよ!!』

「さすが、ありがとう」

 私は笑みを浮かべた。

「あの、迷宮といっても、規模も分からず移動ですか?」

 パステルが目を見開いた。

「それは分かったんじゃない。じゃなかったら、移動させようなんて考えないから。後は任せよう」

 そのうち、外が騒がしくなったので、私はパステルを連れてテントから出た。

 みると、虚空に巨大な建物のような何かが浮かび、同時作業で穴を埋める作業が始まっていた。

 上空で不安定になったままの迷宮は、事前にパトラが描いた魔法陣の上にゆっくり下ろされて安定した。

 二千メートルの巨大クレータは、即座に埋め戻す作業が行われ、そこだけ雪がない不思議な雪原に戻った。

「……これ、C-17だったら運べるんじゃない?」

 うっかりトークボタンを押したまま呟いてしまい、無線の向こうが沸き立った。

「こら、スコーン。ファン王国海兵隊の皆さんが勝手に作業を始めちゃったぞ。分解すれば入るって。どこに持っていくの!?」

「……カリーナ」

『馬鹿たれ、さすがに温厚な先生もブチ切れるぞ。ここで作業。輸送機か迷宮のどっちかがぶっ壊れるわ!!』

 リズが怒鳴り、結局作業はここでやる事になった。

 状態固定の魔法で、動きが固定されている迷宮だったが、いつまでもそうしているわけにもいかず。地下階層部分の穴を掘る作業が行われ、迷宮は古びていたがまるでそこにあったかのような、立派な建物が建った。

「……凄いです。地下深くの迷宮を、地上に移設なんて」

「やっぱやったね。これで、落ち着いて探索出来るよ」

 私は笑った。

 ふと気が付くと空は夕闇が迫り、そういえば朝からなにも食べていない事に気が付いた。

「はぁ、お腹空いた……でも、今日はこれで終わりだね。もう直ぐ夜になっちゃう」

「あの、なにか食事を持ってきましょうか?」

 パステルが笑みを浮かべた。

「そうだね、よろしく!!」

 私が笑みを浮かべると、パステルが急ぎ足で食事を作っているコーナーに向かっていった。

「やれやれ……ビスコッティはどこにいったんだろう」

 私はインカムのトークボタンを押した。

「ビスコッティ……いや、チーム・スコーンのメンバー。無事?」

『はい、無事ですよ。手出し出来なかったので、やる事がなかったです。今、みんなキャンプファイアの場所にいます』

「分かった。今からパステルを連れていく!!」

 私は笑った。


 キャンプファイアを囲んで、みんなで晩ご飯を食べているところに、私とパステルが顔を出すと、折りたたみ式の椅子とテーブルを確保してくれていたようで、黄色いヘルメットを被ったビスコッティが渡したちを呼んだ。

「気が利いたことに、フィールドキッチンも運んでくれました。大体何でも作れて美味しいです」

「うん、このラザニア美味い……」

 私の頭にビスコッティパンチがめり込んだ。

「歩きながら食べてはいけません。ごめんなさいは?

「……ごめんなさい」

 ビスコッティが笑みを浮かべた。

「まあ、いいや。食べよう」

 私たちは食事を始めた。

「全く、急に緊急依頼なんてくるから、何事かと思ったら。先生もこうしろって紙をくれるだけでよく分からないから。とにかく、雪をどかしまくっていたよ」

 リズが笑った。

「ごめんなさい。私が勝手に……」

 パステルが頭を下げた。

「まあ、いいけどね。しっかし、地下迷宮が地上に建つ古ぼけた建物になっちゃったじゃん。雨風大丈夫かな。結界は張ったけど」

 私は周辺探査の魔法を使い、目の前の虚空に出現した窓に映った反応をみた。

「魔力変動が凄いよ。あの建物自体がオーブみたいなもんだから、探査系の魔法は使えないね」

「それ、あたしも最初に試した。こりゃ、警備の皆さんに頼るしかないね。カリーナ近くで野営なんて思わなかったよ!!」

 リズが笑い、煙草に火をつけた。

「おいおい、俺にもメシを食わせてくれよ。残ったのでいい」

 私の方からマクガイバーが飛び下りて、ご飯を食べはじめた。

「いけね、誰か言ってよ!!」

 私は笑った。

「まあ、よくある事さ。迷宮にはいつ入るんだ?」

「そうだね、まだ外の作業をやってるから、明日まで掛かるんじゃない」

 リズが笑った。

「しっかし、驚いたぜ。地底にあった迷宮を地上に運ぶなんてよ。俺も初めてだぜ」

 マクガイバーが笑った。

「恐らく、こんな例はないでしょうね。あっても困ります」

 パステルが笑った。

「よし、今日は早めに寝よう」

 私は笑って、ビールが注がれたジョッキを傾けたのだった。

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