第16話 島では色々起きるもの(改稿)
翌朝、朝ご飯を食べた私たちは、家を綺麗に掃除して、帰る準備をした。
「うん、これでいいかな」
「はい、師匠。問題ないです」
巨大なゴミ袋を抱えたビスコッティが、笑みを浮かべた。
「それ、早く車に積んじゃえば。邪魔でしょ?」
「はい、そうします」
ゴミ袋を抱えたビスコッティとクランペットが家から出ていき、魔法薬について議論を重ねるパトラとキキの姿をみて笑みを浮かべた。
「おう、やってるね。あたしは魔法薬は苦手だからなぁ」
煙草を吸いながら、リズが笑った。
「うん、私も得意じゃないよ。初歩的なものは作れるけど、軽い痛み止めとか眠剤とかそんなのばかりで、あまり役に立たないんだよね」
私は苦笑した。
「まあ、あたしは魔法薬といえばパトラだしね。いざって時には、頼りにしてるんだよ。エルフの魔法薬の知識があるから、とんでもない魔法薬を作れるんだよね」
リズが携帯灰皿に灰を落とし、小さく笑った。
「そっか。ビスコッティも詳しいけど、精製があまり得意じゃないんだよね。あれ、大規模になると大変だからね」
「その大規模なのが、あたしの研究室にあるんだよ。パトラから『ラストチャンス』もらったでしょ。日々改良してるんだよね。物騒だからやめろっていってるんだけど」
リズが笑った。
「もらったけど、あれ物騒なものなの。なんだか分からないけど、大事に持ってるよ」
「そっか。まあ、アイツなりの信用の証だから、滅多に使わないでね。本当にこれしかないって追い込まれたときにだけ使うように。どんなものかはいわないけどね」
リズが笑った。
「そっか、使った時あるの?」
私が聞くと、リズが苦笑した。
「まだ、カリーナの学生時代に一度だけね。ショックが強いから、絶対使うなっていいたいけど、スコーンは狙われやすい立場だからね。そうならないないように、周りでガードしてるけど、取りこぼしはあるから、自衛の訓練だけはしておいてね」
リズが吸い殻を携帯灰皿に落とした。
「さて、あたしは先に飛行機に乗ってるよ。この滑走路の長さなら余裕で小型ジェットも降りられるのに、わざわざYSなんて通だねぇ」
リズが笑って、玄関から外に出ていった。
「さて、私は戸締まりを確認するか。二人とも、そろそろ時間だよ」
私は笑ってパトラとキキに声を掛け、全ての窓の鍵をを確認し、エアコンのスイッチを切った。
パトラとキキが名残惜しそうに議論を終えたパトラとキキが、玄関の扉を開けて外に出ていくと、私は笑みを浮かべた。
「仲良しコンビになりそうだね。ハーフ・エルフと人間だから、喧嘩しちゃうと思ったけど、これなら大丈夫だね」
私は笑って、家を出た。
玄関の鍵を掛けると、すでに車でゴミを飛行機に積み込んだらしく、ビスコッティが笑みを浮かべて立っていた。
「師匠、クランペットが飛行機の準備をしています。急ぎましょう」
「分かった」
マルシルが拘った石畳のポーチを歩き、私たちは飛行場の駐機場に入った。
お馴染みYSからは微かな機械音が響き、私たちを向かい入れる準備をしていた。
小さなステップを上って機内に入ると、ビスコッティは操縦室に入っていき、私は客席の狭い通路を歩いた。
「よしよし、きた。ここ!!」
途中で通路際に座った犬姉に声を掛けられ、私は隣の窓際の席に座った。
「ここからだと、翼の動きがよく分かっていいんだよね。ビスコッティのヤツ、ヘマしたら蹴飛ばしてやる!!」
犬姉が笑った。
「景色は見えないけど、これはこれでいいね。さて、長旅だぞ!!」
私は笑った。
しばらくして、飛行機がプッシュバックされ、轟音と共にエンジンが始動した。
「この音がいいんだよ。気合い入れるぞって感じで!!」
私は笑った。
「まあ、古い機体だけどよく出来てるからね。さて、私は寝るか!!」
犬姉がベルトを締めて笑った。
飛行は誘導路から滑走路に入り、エンジン音も高らかに離陸した。
しばらく高度を上げ続け、水平飛行に入ると、ベルト着用サインが消えた。
こうして、私たちはカリーナに向けて、長距離飛行に入った。
昼ご飯は、いつの間にか用意していたらしい、マルシルが作ったビーフシチューだった。
かなりボリュームがあったので、私は食後の満腹感で眠気に襲われていた。
「はぁ、食った食った。あれ、お子様はもう眠いの?」
犬姉が笑った。
「うん、どうも眠いね……」
私は軽く目を閉じ、機体の揺れに身を任せた。
「そっか、私も食べ過ぎたって感じだよ。まあ、いいことだ!!」
犬姉が笑みを浮かべた。
「そういや、犬姉って魔法を使えないんだよね。見たところ魔力も標準値だし、これじゃ使えないね。不便に思わない?」
「このファン王国が異常なんだよ。魔力が高い連中ばかりで、バカスカ魔法を使うなんて。だから、他国からは脅威って見なされてる。その中でもカリーナは事実上ファン王国を支える魔法の中核だからね。抜きん出た存在は、即座にマークされるよ。リズ公も凄かったから、そこら中からマークされてね。今でも狙われ続けてる。スコーンだってそうだよ。いってなかったけど、そこら中の組織や機関から暗殺令がでているんだよ。ところが、あの島に各国が仲良く訓練する場所が出来ちゃった。これ、やりにくいよ。うっかり動いたら、他の国から睨まれるから。そういう意味でも、あの島ももう重要拠点だね!!」
犬姉が笑った。
「やっぱ狙われていたか。研究所にいたときもちょっかい出されたけど、カリーナにきたら余計狙われている気がするよ」
「それは当たり前だよ。あの要塞学校なんかに入られたら、生半可な根性じゃ狙えないから、向こうだってマジになって突っ込んでくるもん。まして、スコーンの専門は攻撃魔法でしょ。そりゃ、ヤバいって思うよ!!」
犬姉が笑みを浮かべた。
「究極の攻撃魔法は使わない事なんだけどな。分からない相手ばかりだから、私も必要があれば使うよ。まあ。それでもなるべく避けるように、拳銃とか剣を先に使うんだけど」
私は笑みを浮かべた。
「なるほど、それが専門家の見解か。使わない事、なるほどね!!」
犬姉が笑った。
「さて、まだ時間があるね。はぁ、こんな事なら素直に中央魔法学校じゃなくて、カリーナに入学すればよかったよ。遠かったし、なんか違うって思ってやめたんだけど」
「そりゃ損したね。ちょっと調べれば、カリーナがお得だって分かったのに。カリーナの研究所が事実上のトップだし、こうしてきちゃったからなおさらだよ。いらないっていえばいらないけど、『偉大なる』の称号をもらえるのは、カリーナ卒業生だけだよ。その辺りで察しなよ!!」
犬姉が笑った。
「そういえばそうだったね。その称号があると、王宮魔法使いにもスカウトされるって聞いてるよ。興味ないからどうでもいいけど!!」
私は笑った。
飛行機は順調に飛行を続け、気流の関係で遅くなるというビスコッティのアナウンス通り、やがて窓の外は夕闇が迫っていった。
それでも飛行自体は順調で、ノントラブルで飛行機はカリーナの滑走路を踏んだのだっ
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