第6話 出かける前日の夜は

ソナスと暮らし始めて早半年。

始めはソラスは俺のことをマキナ様と呼んでいた。けれど、俺が呼び捨てなのに俺だけ様付けは対等でないように思えて、呼び捨てで呼ぶよう頼むと暫くは呼び捨てと様付けが混在していたのが、今では自然に呼び捨てで呼び合うようになっていた。

仲は良くなったのかな?

そんな、少しずつ俺とソナスの距離が縮まりだした頃、俺は喜寿屋女史のプロジャクトに借り出されることになった。

何でもプロジェクト内で入院することになった人物の代わりになってほしいとのことだ。

期限は一ヶ月。あまり余裕のある状態ではないらしく缶詰も覚悟して欲しいと言われた。

俺の扱いは備品ですから。必要とあればどこへでも行きますよ。

二つ返事で俺はプロジェクト参加に合意した。


プロジェクトに出向く日の朝。


『じゃ、ソナス、一月ほど喜寿屋女史のプロジェクトに参加してくるんで留守にするわ。留守番よろしくな』


「いってらっしゃいませ」


軽く手を振り、部屋を後にする俺を見送るソナスの口角は心なしか少し下がっていたように見えたのは気のせいだろう。



一ヵ月後、プロジェクトも終わり部屋に戻ってきた俺を待ち構えていたのは眉間に皺をよせ、明らかに不機嫌なのが見て取れるソナスの姿だった。


「お帰りなさいませ」


『…ただいま。……なあ、ソナス、なんか機嫌悪くないか?』


「別に私は機嫌が悪いなどという事はありませんよ。ただ、マキナという観察対象がいない日々は非情に退屈だったというだけです」


俺がいない間退屈だった?退屈で拗ねてた?それって


『寂しかったのか?』


俺の言葉にソナスは一瞬ぽかんとした後、


「そう…なのかもしれません。これが寂しいというものなのですね」


と呟くソナスを俺は腕を掴み引き寄せそのサラサラの髪の頭を撫でた。


『寂しくさせて悪かった。クリスマスも近いし、明日は外に出てプレゼントでも見に行こう』


俺の提案にソナスは僅かばかり口角を上げ、その瞳を好奇心に輝かせる。


「それはとても興味深い提案ですね。明日が楽しみです。早く明日が来るように私はスリープモードに入ります」


言うが早いか、ソナスはベットに潜り込むと早々にスリープモードに移行していた。僅かばかりのモーターの駆動音が静かな部屋に響く。

明日が楽しみだから直ぐ寝るって幼稚園児かよ。

思わず苦笑が漏れる。

腰にマウントした手の平サイズのバッテリーに充電コードを繋ぎ、俺もソナスの隣のベットに横になり意識をシャットダウンした。

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