第3話 情緒がおかしい美少女先輩生徒会長


「はぁ、はぁ、今日は朝から体力使うなー」


双子の美少女と別れた後、時間を気にしながら生徒会室のドアをノックする。


「入りなさい」


「し、失礼しまーす」


「遅かったのね。あと少しで私の機嫌を損ねるところだったわよ? 」


青く長い髪をくねくねしながら美少女は不満をブツブツいいだした。


「大体、何時に来いとは言っていなかったのは悪いと思っているけど、早めに来るようにとは言っておいたはずよ! 」


「すみません。下駄箱で友達と話していて、遅くなってしまいました……」



「言い訳はそれだけかしら? 」


(なんでこんな今日機嫌悪いんだ? 遅くなったのだけが原因じゃないっぽいが)


「あの、言い返す訳じゃないですけど、先輩、俺が遅れてきたのが原因で怒ってる訳じゃないですよね? 」


「! ? 」


(あ! 思わず口に出してしまった! !)


「な! なにを根拠に言っているのかしら? 」



なにやら言い返されて焦っているように見える。


「だって先輩、俺が遅れてきたの珍しくないですよね? まあ、その度に遅れた理由は話してますけど」


「そう、そこまで気づいているならいいわ。なら話してあげましょう。私が何故怒っているのかを! 」


「あ、はい……」


「それはね……。あなたが、時夜君が、私を放っておいてなにか違うことをしているんじゃないかと思って、もう居ても立ってもいられなくて、無性にイライラしていた。という訳なの……」


(……。ん! ? なんだそれ! 今のだけ聞いてたら俺が来ないかと思って一人が寂しかったって聞こえるのは俺だけ? )


「つまり、俺が遅くて怒ったのもあるけど、俺がここに来るか不安で怒ってたって訳ですね? 」


「そうね。まあそんなところよ」


……? まじで? それが理由で怒るって結構な寂しがりやなんだな。


「あの、聞きづらいんですが、俺がもしここに来なかった場合はどうなってたんですか? 仮にですが……」


「そんなの決まってるわ。時夜君が何故来ないのか家まで様子を見に行くわ! 」


(! ? 何気に今凄いこと言ったぞこの人! !)


「あの、それ完全にストーカーなんじゃ? 」


先輩はその言葉を聞くなり、ふふと微妙な笑みを浮かべ口を開いた。


「ストーカー? それの何がいけないの? 後輩が心配で様子を見に行くのは先輩として普通のことよ! 」


よく恥ずかしげもなくそんな事言えるもんだ。


「あの……それで、今日俺をここに呼んだのはなんの用件ですか? 」


「用件? そんなのないわ」


は? ちょっとまて、俺は用件もなしにこんなに早く学校に来たってこと? ?


まあ、そんなこと口が避けても言えないが。


「じゃあ、用件がないのに何故俺をここへ? 」


「それは……、話したかったから! よ! 」


「へ? 」


いや、乙女か! 話したい為だけに俺と二人っきりでいる口実を作ったって事か!


「だめかしら? それだけが理由じゃ。だから今日は副会長も書記もいないのよ? 」


(いや、そうだよね! ? どうりで何かおかしいと思ったよ! )


「それで、そこまでして俺と話したかった内容はなんですか? 」


「内容……」


まさかそれもなし! ?


最初は怒ってるかと思ったら今度は甘えるような口調で、この人の情緒はどうなってるんだ! !


そこで朝礼の予鈴が鳴った。


「あ! 予鈴鳴ったんで俺は失礼しますね」


「そうね。予鈴が鳴ったんじゃ朝礼に遅れる訳にもいかないものね。じゃあまた後日呼ぶわ! 」


また呼ばれるのか! !


「あ、はい。できれば今度はちゃんとした理由を考えてきてくださいね! 」


「それじゃあ失礼します」


「ええ。またね! 」


(はぁ……。なんとか切り抜けたけど、まさかの先輩が理由もなく俺を呼び出すなんて……。なんか少し変な期待しちゃったよ)

























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