妖魔学校 百鬼夜学園
ここは百鬼夜学園。なんともおかしな名前の学校だが外見は普通の学校、内装も普通の学校。もちろん、通っているのも普通の生徒である。ただ一つ、四年一組を除いては。
「と。言うわけでぇ。神様は一週間で地球を完成させた訳だねぇ。」
黒板に今まで話したことを板書しながら先生が手に持っている教科書をめくった。
「ここまでで質問あるこはぁ?」
先生が生徒に声をかける。教室にいる生徒は僅か5人。その内先生の話に耳を傾けているのはわずか2人だけである。
「先生!質問!」
その2人の片方が勢い良く手を上げた。
「はい。竜王君」「じゃぁ、その神?って奴はどうやって俺達を作ったの?」
先生は竜王の質問に、ニコニコと笑顔で答えた。
「うーんとねぇ。‥‥どうやってだろうねぇ?人間を作って余った粘土で作ったんじゃない?」
すると竜王の隣の生徒が叫ぶように声を上げた。
「えぇ?じゃぁ、じゃぁ、俺達余った粘土で出来てんのかよ!」
竜王もつられて大声を出した。
「じゃぁ、龍神。雨の中で遊んだら俺達溶けちゃうのかな?」「ヤベェよ!」
ギャァギャァ騒ぐドラゴンブラザー。
「‥なんやうるさいわ。」
その騒ぎを聞き、二人の後ろの席の少年が目を覚ました。
「なんだよ。狐生。寝てたのがいけないんだろ?」
竜王が怒ったように後ろを向いた。
「そうだ。幽飛を見ろよ。全然気にしてないぞ。」
龍神がクルリと後ろを見る。幽飛は龍神が声をかけたのにも気付かずに本を読み続けていた。
「幽飛はまた別やないか。そないな事言ったら‥魚美はどないすんねん。」
狐生はゆっくりとななめ後ろを振り返った。
「やっほー。魚美!」
授業中だと言うのに大きな声で手を振る狐生。魚美は少し迷惑そうに微笑み返した。
「な?」
狐生が笑顔で前を向いた。
「‥‥まぁ、そうだけど。」
龍神が苦笑した。
「‥‥あ。そうだった。今日はね、転校生が来てるんだった。」
黒板に何かを書いていた先生だったが、急に思い出したように扉を開けた。
「ごめんねぇ。すっかり忘れてた。」
あはは。と笑いながら扉の外にいた少女を教室に招き入れた。
「こちら、転校生の‥‥」
先生は先を促すように少女を見た。しかし、何も言わない。
「うーん。じゃぁ、やっぱり先生が説明しちゃおうね。‥地獄一丁目から来た、獄族 阿修ちゃん。」
阿修羅と呼ばれた少女は教室をぐるりと見回すと先生の方をじっと見つめた。
「先生!」
と、勢い良く手を上げたのは竜王。
「んー?何?」「阿修羅ちゃんの席は?」
確かに机は人数分しかない。
「あ。取ってこなきゃね。‥‥じゃぁ。」
先生がそう言って誰かに机運びを手伝って貰おうと考えた時、阿修羅が口を開いた。
「‥良い。一人で出来る。」
言うが早いか手を上空に掲げるとどこからともなく机と椅子が降ってきた。しかも教室の一番端の窓側
「随分とはじっこに座るねぇ。」
あはは。と笑って先生は阿修羅の背を押した。それを合図にしたように阿修羅はゆっくりと自分の席に向かった。
「大丈夫?先生の声聞こえる?」
阿修羅が席に座ったのを確認してから尋ねた。阿修羅はしばらく間を置いてからコクリとうなずいた。
「うん。じゃぁ、授業を続けようか。」
先生はニコリと笑うと教科書をペラペラと広げた。
「じゃね。さっきの続きから‥‥狐生君読んでみてくれるかなぁ。」
狐生は慌てて前を向き教科書をめくった。
「あっ‥と。」
しかし、授業をまったく聞いていなかった為どこを読めば良いかわからない。
「狐生君まさか聞いてなかった。なんてことないよね?」
ニコニコと笑う先生だが、明らかに先ほどまでの笑顔とは何かが違った。
「あの‥いや。」
口ごもる狐生をじっと見つめ先生は告げた。
「‥舌、切っちゃうよ。」
一瞬教室に殺気が満ち満ちた。まずい、切られる。誰もがそう思った次の瞬間。
『キーンコーンカーンコーン・キーンコーンカーンコーン。』
授業終了を知らせる鐘がなった。
「あ。授業終わっちゃったね。・‥残念。」
あは。と。笑い先生は教室を後にした。
「なぁ。阿修羅って地獄一丁目から来たんだろ?」
休み時間。生徒達は転校生の机に群がった。
「どんなところ?」「やっぱ、妖怪ぎょうさんおるんかいな?」「怖い所なんですの?」「趣味はなんですか?」
皆それぞれ思い思いの質問を一斉に阿修羅にぶつけた。しかし、阿修羅は答えない。それどころか、顔は窓の外に向けられている。
「なんや、シカトかいな。」「きっと緊張してんだぜ。何せ転校初日だからな。」
ドラゴンブラザー+αがニコニコと笑いかける。しかし、阿修羅は窓の外を見つめたまま動かない。
「もしかして具合が悪いのではないでしょうか?」
魚美が心配そうに幽飛に尋ねた。
「うーん。どうだろう。言葉が通じてないのかもしれないね。」
全く見当違いである。
「‥‥うるさい」
そんな質問攻めにうんざりしたのか阿修羅がやっと口を開いた。
「なんだよ。俺達お前と仲良くなろうとして言ってんだぜ?」
竜王が大声をあげた。阿修羅が窓から竜王へと顔を動かした。
「‥なんか、寒くないですの?」
魚美が体をブルリと振るわせた。それと同時に阿修羅が竜王をにらみ一言告げた。
「‥‥黙れ。」
次の瞬間教室の中に雪山さながらの猛吹雪が吹き荒れた。
「なんや?なんで急に吹雪?」「さみーよーっ!」「凍るっ!」
そんな叫び声が教室に響いたが‥他のクラスの生徒がそれを知ることは無かった。
「 なんせ、防音効果付きの教室ですから!」
扉の外では先生が怪しくほほえんでいた。
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