第3話唯一無二のスキル
「いや……僕は。私と二人っきりで秘密の特訓しましょう」
無表情なのに、なんかエロスを感じる。
このヒエルダは見た目は見下したりしないような感じだが、俺を少し舐めてる節があった。
俺が一番小さくて、後継者から外れていて、現皇帝にも嫌われてるからだろう。
まあ……別にいいけど。
ミルカはぴくっとし、声を荒げる。
「ヒエルダ! あなたゼルを独り占めにするつもりでしょう!」
「そういう訳ではありません。魔術の指導をするのです」
女同士のバチバチとした視線を感じた。
「なら、私はヒエルダの指導を受けるわ。ここのままゼルスが大変なことになってからでは遅いわ」
「嫌なら……結構ですよ」
「うるさいわね! 受けるって言ってるでしょ」
すると、ヒエルダによる魔術の指導が始まった。
「では、魔術を発動する時の基本動作からしましょう。まず、腕を上げてください」
「はい」
「ゼルス様、腕が曲がっています」
「はい」
「違います、こうです」
「あっ、はい」
「脚を揺らさないでください」
「はい」
俺だけスパルタ……。
すると、空をずっと見ていたエンリケが、無表情は変わらずに、闘志剥き出し片眼を向けた。
やりずらい……。
「では、手の中に火を発生させてみます」
ミルカと俺は所定の位置に立ち、手を差し出した、意外にもというよりやはり遅れて追随するエンリケ。
「さあ、頭の中で、火が燃え盛るイメージをして、身体で魔力を構築し、一気に体内に流し、外へ出します」
魔力構築 300↑
魔力放出 500↑
うぅぅぅ……はぁぁぁ!
すると、ミルカの右手からぐるぐると回る大きな炎が湧き出した。
【
ランク C
威力 炎属性魔力+100
効能 大きな火を出せる。
ミルカはやや誇らしげな顔をする。
「私だって、これぐらい出来るのよ」
「さすがですね、名門学校に通うミルカお嬢様」
「全然、心が籠もってないわね」
一方、エンリケの魔術は他を凌駕し、ミルカの魔術はおままごとのように思えてきた。
【炎犬大精霊(イノケンティウス)】
レベルMAX
ランク S
威力 炎属性魔力+1000
炎属性魔耐性+1000
風属性魔耐性+1000
効能 最上級の炎の大化身が敵を燃やし尽くす。
術者の命令によって単体でも戦える。
右手に発動させた。
炎の犬の怪物が睨み、周囲に醜悪な炎を撒き散らし、腕を振り上げた瞬間、消失した。
「エンリケ殿下様……あの基礎魔術……というより、その若さで大精霊と契約できるのですか……末恐ろしい」
あのロボットのようなヒエルダですら驚愕している。
何食わぬ顔のエンリケだったが、俺の魔術を見た瞬間、驚愕に変わった。
彼が初めて、目を見開き、口をあんぐり開けた瞬間だった。
俺の右手に浮かんだのは、翼を持った銀色の龍だった。
銀龍は途轍もない炎を吐き出した。
【銀龍神精霊(シルバディウス)】
レベルEX1
ランク SS
レベル 600
大精霊より一つ上の神精霊。
威力 炎属性魔力+2000
雷属性魔力+2000
炎属性魔耐性+2000
雷属性魔耐性+2000
風属性魔耐性+2000
水属性魔耐性+2000
「凄く綺麗な龍ね……」
「ゼ……ゼルス様……」
「ゼル……お前は異世界神の精霊と契約ができるのか?」
「いや……その……たまたま。前週に【神精霊の加護】(神精霊とスキル契約ができる)をなんかの本で見て、見様見真似でダンジョンに行って、あの銀色の龍の精霊に会って契約したんだ」
「ゼル……加護は習得するものではなく、神から与えられるものだよ」
確かに……そうだった。
だとしたら、【ゲーム学習能力MAX】スキルは学習できる対象はスキルや戦闘レベルだけじゃないのか。
そういえば、これが、俺と兄エンリケの初の会話だった。
*
1ヶ月後、俺はスキルの勉強に拍車がかかっていた。
鶏の草原の上に、シーツを敷いてスキル本を読みながら、一日中スキル勉強に明け暮れていた。
というより、ひたすら読んで、少し発動するだけだ。
【 ゲーム学習能力MAXスキル】
ランク 不明
効能 スキル本にあるスキルを学習するだけで、スキルを獲得できる。
対象はスキル、戦闘能力値。
一回目にスキルの効能と放出方法、魔力数式を脳や身体に読み込むとスキルが獲得できる。
ニ回目以降に技の発動を繰り返すとレベルは上がっていく。
10回繰り返せば、スキルレベルMAXになる。
慣れてくると、スキルを見ただけでスキルを取得できるようになる。
戦闘能力の場合、獲得した経験値毎に10000倍の経験値が貰える。
ミノタウロスを倒せば、軽くレベル100ぐらいは上がるだろう。
このスキルのおかげで、スキルに関する情報を理解できなくても、読み込みさえしてれば必ず取得できる。
便利過ぎる。
戦闘レベルに関しては子供なので、ダンジョンになんて滅多に行かせてもらえないので、上がる余地はない。
だから、今は【身体強化】【加速】などのパッシブスキルをできるだけ覚えるようにしてる。
「【 ゲーム学習能力MAXスキル】は便利なのは便利だが、大きな疑問があった」
一般にスキル(魔術)というのは、自らの身体にあるスキルに適合した魔力は取り出して、魔法という現象が起きるのだ。
しかし、俺の場合はスキルに適合した魔力が自分に無くても、詠唱だけでスキルは発動し、魔法という現象が起きる。
俺が出せる属性魔力は五大属性、闇、光、ほぼ全ての属性を出せると云っていい。
しかし、俺の身体には一つ以外を除いてはどの属性魔力も無いのだ。
これは適正魔力診断を受けた結果だから真実だ。
でも、これは、おかしい。
無から有は生み出せないはずだ。
ファンタジーと言えばそれまでだが。
例えば、炎と雷属性の龍の神精霊と契約書する場合は、術者は炎と雷属性魔力を精霊と交わらせなければ、契約が出来ない。
もちろん、先程も言ったように俺には炎や雷属性魔力は無い。
でも、俺は契約が出来てしまうという矛盾した状況が起きてしまう。
そして、徹底的に俺は書庫を読み漁り、このスキルの謎を調べた。
【全(ゼム)】
一般に死の魔力として定義される。
透明な魔力。
あらゆる属性に変化でき、使用できる。
持っている者は数千年前に一人だけいた。
どうやら、俺にはこの属性魔力があると思う。
適正魔力診断結果でも、俺には一つだけ不明の魔力が見つかったので、おそらくこの【全(ゼム)】のことだと思う。
でも、この後、【全】の属性魔力を徹底的に調べたが、有力な情報はなかった。
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