第19話仕組み

 突如、イルガが現れる。

 こんな時に、どこで、何をやっていたんだ。

 でも、今この場にいるだけでもひと安心か。


「よくやったゼルフォード……後は先生に任せろ」


「……お願いします」


「大惨事が起こった原因は白騎士の故障ですか?」


「技術者が入念にメンテし昨日運ばれてきたばかり、それは考えられないだろうな」


「じゃ……どうしてなんですか?」


 誰か故意に白騎士に何らかの細工をした可能性がある。そして、思い当たる人物はいる。


「今日は実技終了だ。その後の授業は中止と皆に伝えろ」


 そして、フレスは治療師の先生に連れられて、魔術闘技場から出て行った。


「先生……」


「もう大丈夫だ。後は先生達に任せろ」


      *

そして、俺とガロロは治療室にいた。

 既に治療室の女の先生の治癒魔術のお陰でフレスの背中は大事には至らなかった。

 白衣を着用し、胸元が開いた、魅力的な先生、名はナターシャ先生。年齢は30代。

 艶のある黒髪を掻き分けて、空の画面に情報を入力した後。


「フレスさんは目立った傷はないし大丈夫よ。みんなもう帰っていいわよ……」


「良かった」


「無事か……」


 頭に包帯を巻いたガロロは、腕を組み一緒になって頷く。


「ガロロ。お前今まで何をしていたんだ……」 


「まあ、いいじゃねぇか。俺の奔走があったおかげで、事件が終わっんだからよぉ!」


 ガロロは白騎士が暴走し始めた時に先生を見つけようと観客席に颯爽と跳んだの良かったが、跳んだと同時に運悪く柱に激突して、気絶し、起きた時には闘技場はもぬけの殻で、急いで追いかけてここに今至る。

 ポンコツにも程がある。

 すると、後ろの白のカーテンが開かれ、フレスが現れる。

 フレスは思った以上に、明るく、笑顔で、肩や腕、足は動かせる、だが、その制服姿の華奢な身体は更に小さく見え、今にも消え入りそう。


「ごめんねっ……心配かけちゃって」


「フレス……」


「私は大丈夫だから」


        *


 学校の裏側では平凡な黒髪の男子生徒と、黒髪エルフ女の生徒が怪しく話をしていた。


「よくやったわ……お金はこのくらいでいいわよね……」


「いや、お金なんて……僕は細工するだけでしたから……次は何やります? 僕はクロテア様のためなら、何だってします。それに、クロテア様のことが好きなんです……へへへ」


「ねぇ……気味が悪いからやめてくれない? 勘違いしてるようだけど薄汚いあんたみたいな奴、私が好きになる訳無いでしょ! お金の関係で充分よ……だから、とっとお金だけ拾って帰ってくれる?」


「あっ……へへへ……そ、そうですよね。 僕みたいな奴をクロテア様が好きになる訳無いですよね」


「当たり前でしょ。つうか……じろじろみんなっ!」


「すいません」


 だが、次の瞬間、クロテアの後頭部に黒銃がそっと当てられ、見下した表情が強張った表情へ変わる。


「とうとう……俺を怒らせたな……クロテア」


「……はっ」


「だ、誰だきさまぁぁぁぁぁぁ! クロテアさまに……うっ」


【重力制御】レベルEX100


「無駄だ……お前らは俺の手の中にいる」


 茶髪の男子生徒はクロテアを守ろうと、立ち上がり、剣で襲いかかるが、 左の壁に吹き飛ばされた。


「うわぁぁぁ!!」


 クロテアはその男子生徒の末路を見て、顔を強張っていたが、相変わらず挑戦的な口は残している。


「あ……あら……ゼルフォード君……どうしたの?」


「クロテアまだ、抵抗する気か? 体内で魔力を構築してるのが見える……」


「あなた……どうして……」


【魔力無効化】レベルEX100


「さあ、これで、お前の抵抗は途絶えた。全て白状してもらう。さっきの白騎士の暴走……何か知ってるな?」


「し……しらないわ。まさか、落ちこぼれ君が犯人探し? 笑っちゃうわ」


「いい加減にしろよお前……本気で、撃ち抜くぞ……」


「……わわかったから、殺さないで……私がこの男の子に白騎士をちょっと弄ったら、どうなるか見てみたいなこと言ったのよ……そしたら、馬鹿だから真に受けたのね。私は悪くはないわ」 


「それはお前が細工しろと命じたのと同じだ」


 すると、後方と前方からシャリンと武器を抜く音、魔力の気配を感じた。

 合わせて、10人程度か。


「ふふふ……ゼルフォード君……ねぇ? 見逃してくれない? なんなら、私を好きにしていいのよ」


 すると、クロテアはくるりと俺の方を向き、肩に手を回し、魅惑的な紫眼と柔らかい胸をムニュと押し付け、太ももを絡ませてくる。


「ねぇ? 私ってそんなに魅力ないかしら。何でもしてあげるわよ」


 この女……全く自分が犯した罪が全く理解できていない。

 クロテアが股間に手を伸ばそうとした瞬間

 、俺は眉間に改めて、銃口を向けた。


「いい加減にしろよお前。たとえ、フレスが許すことがあったとしても、俺がお前を許す気はない。それに、お前みたいな女……大っ嫌いだ」


「……言うことはそれだけ? みんな? 聞いたでしょ? この男をこの学校に来れなくしてやって!」


 しかし、襲いかかろうとした十人の生徒はいつの間にかその場で押し潰されていた。



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