第16話実技練習3

  ここにきてガロロの敏捷性が衰える。

 防戦一方だ。逃げられない。

 高速槍の突き刺し。

 一辺倒な攻撃ではない。

 僅かにタイミングと位置ずらして攻撃している。

MIは基本に忠実に動くのではない。

 日々、応用を繰り返し、進化している。

 やがて、人間をも超える知能を持つ。

 すると、ガロロは人間の意地故から無理矢理の反撃に出ようとする。

 真っ正面から力技で押し切る。

 大剣を振り回して、突き出される槍を弾き返す。

 無闇やたらな攻撃、無駄が多すぎる。

 お前らしいが、それでは戦闘知能の高い白騎士には勝てないし、絶好の餌食だ。

 適度に間合いを取り、相手が接近し隙を狙い攻撃するべきだ。


「はぁはぁはぁはぁ」


 案の定、ガロロの体力と魔力が大幅に減っている。

 まだ開始2分ぐらいしか経ってない。

 どうする気だ。

 ガロロは大剣から炎を灯す。


火炎射インフェルス!!!!」


レベル 5

ランク C

威力 炎属性魔力+100

効能 鉄を燃やす程の炎の放射。



 即座に発射する。

 火炎の魔力。まさに闘牛の暴れる炎。

 あちらこちらとメラメラと飛び出す。

 そして、勢い良く飛び出し、一つの炎の柱となる。

 銃口から放たれた炎の波動は白騎士に一直線となる。

 轟々と焼き尽くす炎。ずらっーと長い炎の一文字。

 右から左まで続く炎の道。

 だが、白騎士は糸も簡単に盾で炎を防ぐ。

 真っ赤な炎は行き場を失い、彷徨い、あっという間に炎はあらぬ方向へ行く。

 次の瞬間、残った火種が空気に触れて、盾の前で爆発する。霧状の黒煙が舞う。

 すると黒煙が消えたと同時に白騎士がいなかった。

 消えた。

 ガロロは白騎士を探すがいない。

 見上げると白の巨塔はいた。

 誰かが必死の形相で叫ぶ。


白夜叉シロヤシャだ!!!!」


 ガロロは即座に銃口を上へ向けるが、既に遅かった。

 白騎士は槍を突き出し、高速回転で落下し、槍から円形の青き光芒が放たれる。

 その回転はあまり凄まじき回転で黒煙を生じる。捻まがるかのような空。

 ガロロは銃口から炎を噴射し、衝突させる。

 炎と激突する白騎士。

 盾で銃口の炎を防ぎ、さらに押し込み、炎はあらぬ方向へ、ぐにゃと柔らかい物のように潰される銃、ガロロの全身は地面に追いやられる。

 即座に支える無理な態勢からガロロの左拳が炸裂する。


闘牛拳ローザ!!」

 

 レベル 5

 ランクC

 威力 攻撃力+100

 効能 通常の拳攻撃より数段階攻撃が跳ね上がる。



 その左拳は白騎士の顔面に直撃し、勢い良く飛ばした。

 だが、空中で白騎士はその攻撃を吸収し、再度槍を突き出し向かってくる。

 速い。華麗なる脚から青い光芒を放ちながら、硬化し迫ってくる。

 さすがに闘牛拳を耐え切れるとは予期していなかったガロロ。

 ガロロが停止する。

 どうすれば良い。

 刹那の瞬間、白騎士の槍は艶やかかな紅のガロロの胸に槍を突き刺す。

 そこから、アーマーに亀裂が生じる。

 一撃だけではなかった。二、三、四撃と高速で繰り出す槍。

 無数の槍を連続で突き刺す。


 【無双槍ムソウヤリ

 レベル 5

 ランク A

威力  攻撃力+100

 効能 鋭い槍の攻撃。


  突き刺す突き刺すで、ボコボコにやられるカバーニ。

 反撃はおろか防御すら、反応すら出来なかった。

 最後の一撃を顔面に突き出される。完敗だった。

 無惨に吹き飛ばされる上空へ、そして、地面に叩きつけられ、砂埃が乱舞する。


「Defead《ハイボク》と言えば白騎士は攻撃を止めるよっ!」


 確かにそれも選択肢だ。

 何も白騎士に勝てとは言ってない、授業を受けろ、つまり戦闘さえすればいいのだ。

 この段階で目的は達成されている。

 授業評価に関しては点数は減点されるだろうが、退学はないだろう。

 そして、疲れ果てた表情で、ボロボロの魔甲で、立ち上がるガロロ。


 右足で地面を踏み、「くそっ」と吐き捨てる。

 ガロロは力のない声で、


「Defead《ハイボク》」


 俺の横を通り過ぎ、


「あああ!」


 声を漏らし、後方の壁に背中をだらんとさせた。


「easyモードいえど白騎士は強いな」


「そうだね」


 すると、そこへ取り巻きを連れてクロテアがやってきた。

 不敵な笑みを俺ではなく、フレスに向ける。


「ねぇフレスさん? 私と勝負しない? どちらが白騎士を倒せるか?」


「フレスがそんな勝負受ける必要はない。この女は身勝手な思いでお前を苛めてるだけだ」


「ねぇフレスさん……どっちが、この学校にいることが相応しいか決めない? 負けたならこの学校から立ち去るってはのどう?」


 そんな理不尽な勝負受ける必要はない。

 フレスは意を決したエメラルドの両眼をした。


「もういいよっ……ゼルフォード君……私この勝負受けるよ」


「フレス、やらなくていい」


 俺達は止めるが、ガロロだけは違った。


「勝負したいって言うんだから止めるなよ」


「ガロロ……」


「これはクロテアとフレスの喧嘩だ。外野が黙ってろ」


「あいつ……」


「やる……」


「決まりね」


 


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る