第7話女子の喧嘩


「そうよ! やりましょう! ねぇ? 証拠を見せるには、必要なことじゃん」


「さすが、王族のフレス様の言うことは素晴らしいわ」


 取り巻きは嫌がるフレスを羽交い締めにし、クロテアがニヤリとした笑みで、膨らんだ胸元を破こうとする。


「ふんっ。これなら、疑いが晴れるかもね」


 見るに耐えないな……。

 知らぬ振りをして立ち去ろうと思ったが……。


【重力制御】レベルMAX

 ランクSSS

 威力 魔力操作+1000 空間把握+1000 時間把握+1000

効能 対象物にGを掛けたり、 重力方向を自由自在に変更したりできる。


 次の瞬間、取り巻きの女達は床に崩れ、俺は【隠蔽】【超加速】で駆け抜ける。


「うぉぉぉ……なんだ今の風」


 そして、震えた、細い右手首を掴んだ。

 クロテアは震わした怒りの表情をした。


「な……何……あんた」


「もう、いいだろ」


「離しなさいよ……」


「彼女に何の怨みがあるんだ?」


「なんで、あんたみたいなどこの馬の骨かも分からない奴に言わなきゃいけないの!」


 すると、タイミング良く、教授の怒鳴り声が聞こえ、野次馬達が去っていく。

 そして、女三人組は教授が来たことに動揺し、舌打ちをし、

 

「あんた達……私に刃向かったこと後悔するわよ」


「大丈夫か?」


「ありがとうっ……」

      *

  当の俺は校長室に呼ばれていた。

 毛むくじゃらで、体格の大きな、サンタクロースみたいな校長が窓際の森林を眺めながら、こう言った。


「お主はAクラスの補欠合格とする」


 突然、なぜだ?


「確か、クラス決めは事前の入学試験で決定されるはずですよね? 俺の評価はFクラスに値すべきものです。突然、クラス変更とは何か重大な理由があるんですよね? 理由をお答え頂けますか?」


「その回答はできん。異論があるなら、この学校から出ていきなさい」


 今退学は駄目だ……仕方ない……。


「は……い」


 突如として、校内放送が鳴り響いた。


「え……今すぐAクラスは授業のため、校庭に来なさい」


「さあ、行きなさい」


         ・

 そこは、黄金の砂地が広がった演習場。

 周囲は山と繋がっているのか、林が後方に茂っている。

 昔は古びた演出場だったのか、茶色の百葉箱のような箱には木剣が散乱している。

 すると、一人のリーダーの男が言い付け通りに、皆に呼びかける。


「とにかく準備運動しとくようにと」 


「まさか、魔術の実践練習とか言うのか!」


「その通りだ! 先生がそう言ったんだ!」


「待ってくれよ! こっちは今朝、数日掛けて到着したばっかりなんだぞ! 魔力なんて切れ切れだ!」


「僕に言っても、仕方ないだろう」


 生徒達は不満を口にしながら、渋々準備運動をする。

 すると、右隣で聞き覚えのある陽気な声がする。


「ゼルフォード君っ……」


 金髪のアイドル級の美少女フレス。

 胸元が強調された制服姿、丸み帯びた身体を魅せつけてくる。 


「フレスか……って、なんで俺の名前知ってる?」


「調べた……ってお互い様じゃない? ゼルフォード君も何故か分からないけど、私達の名前知ってるでしょ」


 まあ、【鑑定眼】スキルがあるからな。


「そういえば、さっき、助けてくれてありがとう」


「いや、別に俺は何も。それより、あいつら何なんだ?」


「王族には恨みあるみたいだね……仕方ないと思うしかないね」


 すると、またあの三人組の少女達が絡んできた。

 黒髪の超絶美少女ハーフエルフのクロテアという少女、取り巻きのラナとサリナ。


「あら……正義気取りで落ちこぼれのゼルフォードと盗っ人の王女様じゃない?」


「そういえば、このゼルフォードって奴、Fクラスの紋章なのに、何でここにいるんですかね?」


「入学試験最下位って噂じゃなかった?」


「お邪魔虫が二人もいても、困っちゃうわ! ふふふふ」


「あなた達っ!」


「フレス……もういい。俺のことなら、言わせおけて」


「駄目だよっ、そんなの」


 すると、クロテアが取り巻きをどけて、俺の目の前に、露わになった胸元と妖艶な唇を魅せつけ、軽蔑の表情をする。


「ねぇ? ゼルフォード君? 入学試験で、全校生徒の最下位……Fクラスのあなたがなぜ、このAクラスにいるのか教えてくれる? 私、落ちこぼれ嫌いなの? 落ちこぼれた男がいるだけで、見るだけ吐き気がするの? 目障りだから私の前で床に頭を押し付けて跪ついでくれる?」

  

 ……。

 とんでもない女だ。


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