第8話貴族階級

 

「疑問があるんだが、なぜ俺が入学試験最下位だと知っている? 確か試験結果は公表されていないはずだが……」


「は? 本当あなたって馬鹿ね! 私はオルガネスト子爵家よ。それなりの情報の伝があるのよ。それに、Aクラスのほとんどは有力な貴族の出身で、それぐらいの情報が掴んでるのが当然なの」


「へぇ……そうか」 


「聞くまでもないけど、あなたは貴族なの?」


 この女は随分、家柄や順位で人の成りを決めるのか、好ましくない。


「平民だが?」


「ふふふ……やっぱりね。底辺の男って訳ね。ところで、さっきのことだけど、あなたが私の手首を掴んだせいで、怪我したんだけど? どうしてくれるの?」


 クロテアは包帯が巻かれた細い手首を魅せつけ、更に憎たらしい顔を近づける。

 強く掴んだ訳ではないのだが。


「先生に言ってもいいのよ? あなたにそういうことされたってね。そうしたら、あなた退学どころじゃ済まないわ」


「だったら、すれば良いんじゃないか?」


「ねぇ……ゼルフォード君、結構かっこい顔してるのね。まあ、私も鬼じゃないのよ、一応女なの。許してあげてもいいわ。そんな盗っ人なんか見限って、私の方に来ない? 良い思いをたっぷりさせてあげるわ」


 クロテアは胸元を大きく開け、ピンク色のブラジャーと柔らかそうな胸を魅せつける。

 誘惑か……。

 思わず、土下座してでも、甘い誘惑の香りを堪能したいんだが、フレスに背中をつねられていてそれは出来ない。


「なぜそこまでしてフレスを陥れたいんだ? 金が欲しいのか? やるぞ……いくらだ?」


「は?……何よその言い方……私を物乞いみたいに扱わないでくれる? そう……あなたはあんな子供っぽい女が好きなのね? モテないあんたにはお似合いそうね。今に見てなさい、二人とも潰してやるから」


 この女はいったい何がしたいんだ。


「ところで、一つ気になっていたんだが、お前、ハーフエルフか?」


 クロテアは目を見開いてはっとし動揺し、顔を真っ赤にし、声を荒げる。


「私がエルフの訳ないじゃない!」


「そうよ! いい加減にしろよ! ゼルフォード」


 禁句だったか。

 この世界にはエルフを嫌いな者が少なからずいる。エルフの忌避思想あるくらいだ。

 エルフは魔族に近い存在というのが理由らしい。

 まあ、世間体や家柄を考えたら、隠すのは当然か。

 

「エルフでもいいと思うが……俺は可愛いと思うが」

 

 クロテアはポッと赤くし、放心したが、一瞬で睨んだ表情を向ける。


「か……かわいい? ……私が? 馬鹿にすんな………」


 突如、30代ぐらいの兄ちゃんが空中から現れた。


「え?」


 金髪、よれよれのワイシャツとズボンを着込み、なぜだか下駄を履いてる。

 ダメなサラリーマンっぽい印象だ。

 不敵な目つきで、砂煙を舞い上がらせながらの登場。


「よぉ? みんな騒いでお楽しみの時間悪いな。あっ、そうだ、挨拶しないとな? Aクラスの諸君おはよう。担任のシルバラード=イルガ先生だ!」


 がやがやと会話していた生徒達が静まり返る。

 なんだこの担任。

 イルガは両手を叩き、笑みを浮かべる。


「では早速だが、みんなおたのしみの入学式初日の恒例行事、魔術小テスト始めるぞ!」

 


 

 

 

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る