第18話謎の者

「なんだこの気配!」


その気配に気が付いた瞬間に、隊長は、後ろを振り返った。


しかし、そこには、なにもいなかった。


「隊長!今の気配がやばいことはわかりますが、この数はやばいですよ。

手伝ってください。」


メンバーの一人がそう言ってきた。


いくら弱くても、敵の数は今、目の前から大量にやってきている。


数の暴力というのは怖く、圧倒的な力の差がない限り、どのような敵にも、数の暴力は通じてしまうのだ。


(しかし、どういうことだ?

あの気配の正体はおそらくこのダンジョン側の者。

ならば、俺たちが戦っている今を見逃してくれているのは、なぜなんだ?)


そんなことを考えながら、戦っていると、だんだんと相手の数が減ってきた。


しかし、倒している数に対して、ドロップ品が少なすぎる。


(なんでだ?ダンジョンのモンスターは、いくらレア度が低くても、何かしらのドロップ品を出す。

ギルドの方では、そのドロップ品をもとに、倒してきたモンスターを測定するのに。)


ギルド側には、ドロップ品の鑑定装置があり、それを使うと、どのモンスターからのドロップ品なのかがわかるのだ。


そして、ドロップに関しては、いくら弱くても、発生する。


言ってしまえば、一番弱いといわれているスライムでも、レア度は低いが、何かしらはドロップするのだ。


そして、今、ドロップ品が少ない理由は、ダンジョン側が回収しているからだ。


そもそも、基本的にダンジョン内で、このような数の敵が発生することは少ない。


実際には、上位のダンジョンの中には、数の暴力を主軸としているダンジョンもあるので、ないとは言えないが、それでも少ない。


彼らは、そんなダンジョンに挑んだことがなかったので、わからなかったのだろう。


ダンジョンには、数の暴力で戦うと、相手との戦力が近い場合、メリットがあるのだ。


それは…


「まさか、ドロップ品を時間経過で、ダンジョンが吸収して、その後また、そのドロップ品をもとに、モンスターが作られているなんて、魔王側に立たないと、わからないことだもんな。」


と、戦っている集団を見ながら、ゼアークはそういった。


そう、ダンジョンというのは、もともと、ダンジョン内で死んだ者の装備などを、回収するシステムがある。


これに関しては、ギルドの方でも、知られており、有名な冒険者が死んでしまった場合、その装備がダンジョン内の、死んだ場所とは違った場所に宝箱に入れられてあったので、その情報に関しては、ギルドでも知っていた。


ダンジョンが死んだ人間も吸収してしまうことも分かっていたので、葬儀なんかができないなんかの問題もあったが、それは、当時の教会が、うまくやったらしい。


さすがに、ダンジョン内の幹部でも、敵である教会の行動については、そこまで詳しくないらしい。


とにかく、ギルド側では、ドロップ品がダンジョンに回収されるというのは、そこまで有力な情報ではなく、基本的に、その手のダンジョンに行ったものしか信じないのだ。


「よし、何とかおわ…!」


団長が、最後のモンスターを倒して、一息つこうとした瞬間、また例の悪寒はやってきた。


「おいおい、ついにお出ましか…」


そして、後ろを振り返ると、姿がはっきりしていなく、幽霊のように、体の端に行くほど揺らいで見える何かがいた。


「さて、この人数で倒せるといいのだが…」


そして、謎の生物との戦闘が始まった。

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