48話

 行きでも感じたことだったが、街までの道のりが長い。特にそれぞれが疲弊している状態なので尚更だ。

 ロベルトは魔力が大幅に減り、ルヴォルスは精神的な負担が酷く、リリンも精霊とに祈ったせいで疲れている。

 しかしレッドウルフという荷物を持たなくて済んだことだけでも幸いだろう。これで倒した獲物を自力で持って帰るとなると、街に着く頃には日が完全に暮れていそうだ。

 精霊達だけが特に疲れた様子もなく、ロベルト達の数歩先にレッドウルフを浮かせている。何も知らない人が見ればきっと驚くだろう。

「宿に帰って早く眠りたい……」

「精霊干渉は自然そのものに干渉するのと同義だからな。そりゃ疲れるか。無理させて悪いな」

「構わないよ。僕が唯一胸張って言えるのがコレだから、役に立てて嬉しいし」

 双方とも疲れた笑みを浮かべながら、ゆっくりと会話を続ける。リリンは、そんな二人より少し離れて歩いていた。

 疲れている二人にこれ以上負担をかけるわけにはいかない、と周囲の警戒を自ら買って出たリリンは、前を歩く二人を見ながら静かに考え込んでいた。

(私は、二人みたいな唯一の特技とかないからなぁ。レジェンドクラスの操天魔法なんて使えないし、精霊干渉なんてのもできない。羨ましいなぁ)

 リリンの特技といえば、運動神経がいいのと目がいいこと、それと水の精霊に特によく好かれていることくらいだ。この全てを持っている人だって、探せば少なくとも二十人はいるだろう。

 ロベルトのように力の大半を奪われても上級複合魔法を連発できる人、ルヴォルスのように精霊干渉で精霊に気に入られている人はこの世界をくまなく探しても五人にも満たないのではないだろうか。

 二人のことは友人として尊敬しているし誇りに思う。けれどどうしても、嫉妬してしまう。皆が同じように訳ありなのに、どうして自分にだけ唯一の特技がないのか、と。少しだけ寂しいと思ってしまうのだ。

 心優しい友人達が、その特技のせいでどれだけ苦しんでいるかはよく知っている。それでも羨まずにはいられない。

 貴族に求婚されているほどの美少女? だから何だというのだろう。そんなの迷惑なだけだ。

 私も役に立ちたい。二人の役に立ちたい。パーティの役に立ちたい……。

「リリン?」

 呼ばれて、顔を上げた。二人とレッドウルフが立ち止まっている。

 いつの間にか待たせてしまっていたらしい。リリンはふっと肩の力を抜くと、二人と精霊達の方に駆け寄っていった。

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