47話
レッドウルフを倒した三人は、その死体をどうするかを話し合っていた。まさかBランクモンスターが出るとは思っていなかったので、討伐証明の部位も知らないのだ。下手に手をつけてキズモノにしたくはない。収入源は大切に、だ。
幸いにも夏ではないのですぐに腐ることはないだろう。夏だったらもう一時間もすれば腐り始めていたかもしれない。
「どうする? このまま担いで持って帰るか?」
「え、重くない? このサイズだとどうしても皆で担がなきゃいけなくなるよ」
「戦える人いなくなっちゃうのは危ないわよね。担ぐのはやめましょうよ」
「人間が持つんじゃなければどうやって持って帰るんだ。俺の魔法で浮かすか?」
「連続ではないとはいえ、一回使っちゃったしそれも危ないと思う。僕が精霊に頼んでみるよ。今は僕の味方だし」
「ロベルトは体力回復に努めてよ。私が辺りの警戒するからさ」
ルヴォルスは軽く笑うと、集中し始めた。本日二度目の精霊干渉である。精神力を大幅に削る代わりに精霊が使役できる、ルヴォルスだけの技だ。
「風の精霊、レッドウルフを運ぶ役を請け負ってもらいたい。もちろんそれなりの対価は払う。いいかな?」
何もない場所に向かって小声でぶつぶつと呟く様は他人から見れば不審者だと思われるだろう。本人はいたって真面目なのだが。
精霊の声は精霊が見える者にしか聞こえない。つまり、この場で精霊の声が聞こえるのもルヴォルスだけだ。ロベルトにもリリンにも、残念だが仲間が独り言を言っているようにしか聞こえない。
《対価? 対価? なぁに? なぁに?》
「僕と踊ろう。ダンスには自信がある」
《ダンス? ダンス? やったぁ、やったぁ! いいよ、いいよ。運ぼう、運ぼう!》
全ての言葉を二回ずつ繰り返す精霊独特の喋り方は鬱陶しくも愛らしいものがある、とルヴォルスは常々感じている。
高位の精霊になると二度繰り返さなくても話せるらしいが、まだそんな精霊には出会ったことがなかった。
風の精霊が両手を上げて喜びながらくるくると回る。精霊はダンスが大好きであるというのは文献にも記載されているくらい有名な事実だ。
「ありがとう。精霊が持ってくれるから、帰ろうか」
こうして三人はレッドウルフを頭上に、精霊を従えて街に戻るべく歩き出した。
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